アイルランドの薔薇

アイルランド共和国スライゴーに近いギル湖の畔にある、アイルランド風ペンション(B&B)「レイクサイド・ハウス」。ある夜の宿泊客は釣をしにきた商店主3人、自転車旅行の会計士、アメリカ人の女子大生2人、オーストラリアから来たビジネスマン、アイルランドと日本の合弁企業に勤めるアイルランド人科学者ジェリーと日本人化学者フジ。
ところが商店主の3人というのは仮の姿で、本当は北アイルランド武装勢力NCFのメンバーだった。「レイクサイド・ハウス」の女主人メアリ・クラークもそのことは知っていた。
というのはメアリの夫もNCFのメンバーであったが、ある事件で自殺したのだった。ある事件とは3年前にNCFが民間人3人の乗った車を爆破した事件で、この実行犯がメアリの夫だった。
もっともメアリの夫はNCF副議長のダグに騙されて爆破を実行したのであり、事件自体に直接の責任は無かった。だが民間人を巻き添えにした事件にいたたまれずに、自殺してしまったのだ。
ダグがメアリの夫を騙してまで民間人の車を爆破したのは、和平協定が結ばれることに反対するダグが、テロを起こして和平を妨害するためであった。
そのことはNCFの幹部やメンバーも薄々わかってはいたが、証拠が無いためにダグに対して制裁を加えることは出来なかった。

その事件から3年後、ダグの起こしたテロの傷も癒え、再び和平協定が結ばれることになった。NCFではダグの妨害を恐れ、殺し屋プッシュミルズにダグの暗殺を頼んだ。
プッシュミルズは世界中の何人もの要人の暗殺にかかわり、その方法は事故か病死を装って殺すという巧妙なものだった。NCFでは今回のダグの暗殺は事故または病死を望んだ。殺人とわかっては反対派を活気付かせることになってしまうからだった。
そして「レイクサイド・ハウス」に宿泊したNCFのメンバーは1人はダグ本人で、他の2人はダグの監視役だった。監視役は使命を知っているが、ダグは自分が監視されているとは思ってもいない。
そしてNCFのメンバー以外に、誰かに化けたプッシュミルズもいた。ところがプッシュミルズが殺す前にダグが庭で死体となって見つかった。
前夜遅くまで飲んで、食堂で寝てしまったダグが、朝食堂の外の庭に横たわって死んでいたのだ。死因は火掻き棒で頭を強打されたことで、凶器の火掻き棒はダグの死体の脇に転がっていた。
これを見たNCFの残りのメンバー2人は銃を抜いて宿泊客に突きつけ正体を明かした。実力で犯人を見つけ出すというのだ。ところがフジが進み出てNCFメンバーと交渉し、協同で犯人を炙り出そうと奇妙な提案を持ちかけた…
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