六つの手掛り

和製チャップリンのような風貌の林茶父氏を探偵とする短篇集。
六つの玉
事故のために迂回した挙句、道に迷った北見の車と追随したタクシーの2台は、広場のようなところで積雪でスリップして衝突した。北見の車には北見とヒッチハイクした黒岩という青年が乗っており、タクシーには運転手の稲垣と客の林サブの2人が乗っていた。幸い怪我はなかったものの、夜道であり車を動かすのは無理だった。
衝突事故の場所は、ダムの予定地で整地されており、その中に1件だけ民家が残っていた。そこに住む真壁という男は、口は悪いが親切で、部屋もあるので泊まって行けと申し出てくれた。急ぐ用事もない4人は、真壁の言葉に甘えることにした。
真壁の家はダム建設反対派の拠点だったところで、皆が集会をしたり寝泊りするために、狭いが5室の寝室があった。夕食もごちそうになり、4人はひとりづつ個室に入り寝についた。翌朝、いつまでも起きてこない黒岩の様子を見に行った皆は、部屋の中で殴り殺されている黒岩を見つけた。林は事故ではなく殺人だといい、さっそく推理を展開した。

五つのプレゼント
学校帰りのバスの中から林仁美は、サブ叔父さんの姿を見かけた。叔父さんは大きな花を持ってとぼとぼと歩いていた。バスを降りた仁美が叔父さんを待って話しかけると、学生時代に爆弾で死んだ松本という友人の墓参りだという。
仁美も叔父さんの墓参りに付き合い、そのあと叔父さんから爆弾事件の経緯を聞かされた。死んだのは松本と同じ研究室にいた江川ユミコという2人で、それぞれ自宅に届けられた箱を開けて爆死したという。
研究室には他に青田、別所、千葉、土井という4人の学生がおり、江川以外はすべて男性。松本を含む5人の男全員が江川に惚れていたという。そこで江川は5人全員に誕生日のプレゼントを要求し、その内容で相手を選ぶと宣言した。
江川の誕生日には5つのプレゼントが集まり、そのうちのひとつに爆弾が仕掛けられていたのだ。一方、同じ日に松本のところにも荷物が届き、それを開けた松本も仕掛けられていた爆弾で死んだのだった。警察は種々の事情から松本の犯行という線で捜査をしていたが…

四枚のカード
富嶽大学理化学部化学科の実験棟4階で事件は起きた。その日は小山田教授により補講が行われており、出席者は6名。4年生が2名、2年生が4名であった。まさに補講が始まろうとしたときに、小山田教授に来客があった。カナダの大学教授ジャン・ピエール・トルソーと林サブである。
トルソー教授は昨夜約束したあるデータを見せてもらいに来たのだった。林はトルソー教授の趣味であるマジックの仲間で、通訳を兼ねて一緒に来たのだった。トルソー教授は邪魔したことをわび、お礼にと学生相手に超能力を披露した。
ESPカードを使った超能力は見事成功し、学生たちは感心するやら驚嘆するやら。その後トルソー教授は小山田教授の部屋でデータを見、林は他の用事で2時間ほど外出し、6人の学生は個別の自習室に入り、小山田教授は学生を会議室に順番に呼んで試問を行った。
それから1時間半後、小山田教授の部屋で電話が鳴り、それに気付いて教授室に行った小山田教授によってトルソー教授の他殺死体が発見されたのである。

三通の手紙
飯沼市の市役所に打ち合わせに行った林サブ氏は、ひょうんなことから市内の日野氏の自宅に泊まることになった。日野氏のところに行ってみると、友人の徳永氏から留守電が入っていた。
その留守電によれば、日野氏と徳永氏のところに届いた田中さんという女性からの手紙の中身が、入れ違っているという内容だった。田中さんからの手紙も日野氏のところに届いていた。
田中さんというのは、日野氏と徳永氏、それに沖田氏の友人3人で沖縄旅行に行ったときに知り合った女性で、現地で撮った写真を送ってくれたのだった。手紙を開けてみると、徳永氏の電話のとおり、入っていたのは徳永氏あての手紙であった。その時はそれで済んだが、翌朝徳永氏の他殺死体が部屋で発見されるに及んで、俄然電話と手紙が重要になった

二枚舌の掛軸
市内きっての名家である松平家の当主道隆氏は、いたずら好きでも有名であった。地元では有名な企業グループの総帥を引退して、悠々自適な生活に入っても、いたずら心は変わらなかった。そのいたずらは、罪のない軽いものから、相手を激怒させるようなものまで様々だった。
その道隆氏が隔月に開く晩餐会があり、そのときに事件が起きた。その日の招待客は市長や市立病院の院長、道隆氏の趣味であるマジックの師匠、県立大学国文科の教授など全部で7名。その席で道隆氏は、北斎の対の掛け軸の話をし、食後に公開すると言い出した。
だが、いたずら好きの道隆氏のこと、話は全員に受け入れられたわけではなく、公開の席に出席したのは4名だけだった。そして公開が終わった後、ひとりになった道隆氏が同じ部屋にあった日本刀で斬り殺されたというのである。

一巻の終わり
小説家加藤清治が住む田舎のログハウス風自宅に集まった6人の人間。そのうちの影山という毒舌評論家が、そこの一部屋で休んでいるうちに殺された。影山が部屋に入って死体が発見されるまで、人々の行動を追うと、誰でもが殺害のチャンスがあったように思えるのだが…


島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -