七人の中にいる

ある年のクリスマスイブの夜、葛西家の邸に3人組が盗みに入った。3人は中学の同級生で、一緒に上京し就職していた幼馴染だった。肇、洋一、晶子の3人で洋一と晶子は同棲し、晶子のお腹には2人の子供がいた。
洋一と晶子は子供を産みたかったが、若い2人にはお金がない。そこで肇に相談すると、肇が出入りしている葛西家の邸がクリスマスイブには無人になるので、そこを狙って盗みに入ることにしたのだ。
確かに葛西家では毎年クリスマスイブには高級レストランで一家揃って食事をすることにしていたし、その年も食事の予定だった。だが5歳の一行が風邪をひき、お手伝いの登喜子とともに居残ることになったのだ。
無人のはずの邸に入った肇たち3人は、登喜子と遭遇した。登喜子は肇を見知っており、やむなく肇は包丁で刺し殺してしまった。さらに悪いことに葛西の一家が一行のことを気にするあまり、食事をキャンセルして戻ってきてしまった。
肇は逆上し、葛西家の一家を皆殺しにしてしまった。一行の姉の8歳になる緑、2人の両親と祖父母の5人で、登喜子と合わせると6人の死者が出た。ただし一行だけは自室で寝ていたために気づかれず、結果的に命拾いした。
それから20年以上たった12月、もうすぐクリスマスという頃、軽井沢にあるペンション春風のオーナー村上晶子のもとに一通の手紙が来た。
中身は脅迫状だった。そして複数の写真。写真に写っていたのは肇で、どこかの倉庫で傷つけられ、最期は首を斬られて死体となっていた。どう見ても本物の死体の写真だし、肇が1年前に殺されたのも事実だった。
脅迫状の主は葛西家での事件を絶対に許さない、今年のクリスマスはお前とお前の家族の番だと書いていた。晶子、洋一、肇の3人は葛西家での事件の後、逃げおおせていた。
洋一と晶子は結婚し、2人の子供も無事に生まれていた。2人は軽井沢でペンション春風を経営したが、村上は経営が軌道に乗ってしばらくして癌で死んでいた。
それ以来、晶子は一人でペンションを切り盛りしたが、ここのところ客足に陰りがみられていた。ペンション春風は村上の料理の腕に惚れた客が多かったのだが、村上が死んでから何人かのコックが入ったが、村上にの味には遠く及ばず、それが客足を遠退けていた。
そんな春風に救世主が現れた。中条郁夫というパリで修業したコックで、春風に客としてやってきたのがきっかけでコックとなった。その腕は一流で、春風もまた客足を回復し始めていた。
その郁夫と晶子は男女の仲となり、晶子のお腹には子供が宿った。そして2人は結婚することになった。今年のクリスマスイブは2人の結婚式となり、常連客が集まることになった。晶子に脅迫状が来たのはそんな時だったのだ。
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