そして誰もいなくなる

名門女子校天川学園演劇部は、百周年記念七夕祭でアガサ・クリスティ原作の「そして誰もいなくなった」を上演することになった。
名門女子校の、しかもおめでたい席で殺人劇などとんでもない、との意見が職員室で多くを占めたが、演劇部顧問の英語教師向坂典子の頑張りで上演にこぎつけた。
脚本は向坂が書いたが、制約がありすぎて原作のように孤島での陰惨な劇というわけにはいかず、孤島の応接室に場面を限定して劇は行われることになっていた。
上演当日、午前中は評論家松木憲一郎の講演があり、午後からいよいよ「そして誰もいなくなった」が上演された。が、幕が上がって早々に本当の殺人が起きてしまった。
原作どおりアンソニー・マーストン役の西田エリカが、ウィスキーに見立てた紅茶を飲んで苦しみだし、病院に運ばれたが息を引き取ったのだ。
そのウィスキーは当日の朝、演劇部部長の江島小雪が家から持ってきたものだったが、その中に何者かが青酸を混入したのだ。劇は当然中止され、警察の捜査が始まったが、誰が紅茶に青酸を入れたかはわからなかった。
その翌日、演劇部員で松木憲一郎の娘の松木晴美の死体が自宅近くの公園のベンチで発見された。死因は睡眠薬の飲みすぎであったが、警察の捜査で死体となった後に動かされた形跡があった。
自殺や事故の可能性がまったく否定されたわけだはないが、殺人の可能性が高まった。しかも松木晴美は「そして誰もいなくなった」ではロジャース夫人を演じていた。ロジャース夫人は原作では二番目に死ぬことになっていた。それも薬によって…
さらにマカーサー将軍を演じた佐久間みさが、後頭部を鈍器で殴られて自宅の側の雑木林で見つかった。原作に忠実に書かれた脚本どおりに、次々に演劇部員が殺されていったのだ。
平和な名門校を襲う突然の惨劇、しかも見立て殺人という異常な嗜好、いったい犯人の狙いは何なのだろうか…
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