繭の密室

ワンルームの独身者用賃貸マンションの7階から叫び声とともに男が落下した。男は7階に住む学生で前島博和といい、部屋のベランダから落ちたらしい。
ただ不思議なことに死体の頭には鈍器で殴られたような跡があり、足にはスニーカーを穿いていた。部屋は中から施錠された上に、ドアチェーンまで掛けられた密室。
部屋の中には前島の頭を殴ったらしい血のついた金属バットがあり、検死の結果、首にロープのようなもので絞めた跡がついていた。
さらに鈍器で頭を殴られ、首を絞められたのはほぼ同じ時刻だが、死んだのは数時間後で、死因は墜落して首の骨を折ったことだった。
部屋から墜落したか落とされたかはともかく、前島は何者かに襲われたことは確かで、自殺や事故と考えるより何者かに殺されたと考える方が自然であった。
原因として考えられたのはサラ金からの多額の借金であったが、これは昨年に実家の親が全額返済して方が着いていた。ただ、それまではサラ金の厳しい取立てを受けていたようだった。
それとこの日の前島が飛び降りる直前に前島の部屋のドアを外から叩き、喚いている若い男がいたことが目撃されている。警察はこの男を捜したが見つけることは出来なかった。

前島の部屋のアドレス帳から親しかった友人坂田勝彦と工藤順弥が浮んだ。2人とも前島とは中学の同級生で、高校は違ったが親しく付き合っているようだった。
警視庁の貴島刑事と所轄署の倉田刑事は、まず坂田を訪ねるが坂田は妙にオドオドして何かを隠している様子だった。次に訪ねた江藤の態度も何となく不自然であった。
2人刑事は坂田と江藤が何かを知っていると直感で感じた。そして3人の中学時代のことを調べ始め、吉本という少年の自殺事件にきついた。
吉本は前島たちの同級生であったが成績が悪くて高校進学も危ぶまれていた。前島たちがこの吉本をいじめていたと言う噂があったのだ。
吉本の自殺の原因は前島たち3人のいじめにあるか、あるいは吉本の死は自殺ではなく前島たちが殺したのかもしれなかった。貴島と倉田はこの事件を坂田と工藤にぶつけようと考えた。
だが、その矢先に今度は坂田が部屋の中で殺されているのが見つかった。坂田の死体も鍵の掛かったアパートの自室にあった。
さらに同時期に前島たちの中学時代の担任教師で、今は教師を退職してサラリーマンになっている日比野功一の妹が誘拐されていることも判明し、事件は複雑な様相を見せ始め謎は深まっていく…
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