「死霊」殺人事件

不動産会社を経営する奥沢峻介の自宅で、峻介とその妻の千里、それに峻介の共同経営者上山幹夫の3人が死体で発見された。
大阪出張から帰った峻介がタクシーで自宅に戻ったがタクシー代がなく、運転手を待たせて家に入ったままなかなか出てこない。そのうちに家の中から大きな音が聞こえた。
しかしその後は音もなく静まって、業を煮やした運転手がクラクションを何度か鳴らした後に家の中に入っていき、死体を見つけたのだった。
家の中は泥だらけで、和室の畳が上げられて、その下の土が掘り返され、リビングには土を掘り返したスコップが置いてあった。リビングでは上山と峻介が死体となっていた。
上山は妙な格好で死んでいて、凶器は土を掘り返したスコップで滅多打ちにされ、首の骨が折れていた。峻介の方は電話を握っていて、死因は心臓麻痺であったが、後頭部に強打された跡があった。
一方、二階には千里の死体があった。千里は胸を包丁で刺されて泥だらけになって死んでいた。どうも千里は殺されてから和室の床下に一時埋められていたらしい。そして千里の左手の薬指が切り取られ、その指は行方がわからなかった。

3人は同時に殺されたわけではなく、最初に殺されたのは千里でこの日の午後2時から3時の間、次が上山で午後6時前後、最後が峻介で、これはタクシーが家に着いた午後11時過ぎ。
しかもタクシーの運転手は峻介が家に入ってからずっと門前で待機していたし、家で死体を発見してから警察に連絡し、その後は再び門前のタクシーに戻っていた。
もし犯人が家から逃げ出すとすれば運転手が家に入って死体を見つけていた間しかないが、その間は向いの家の人間が好奇心からずっと峻介の家を見ていて、誰も出てこなかったと証言。
峻介の家は密室で、少なくとも峻介を殴打した犯人はどこかに消えてしまったのだった。さらに不思議なことに、この日の午前中に峻介は大阪に出張に行き、千里は函館へ友人の結婚式に出席するために飛行機で旅立った。
千里は函館でもホテルにチェックインしたり観光したりと足跡を残していた。なんとも不可解な事件に、警視庁の貴島刑事も首を捻った…
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