最後から二番めの真実

推理作家志望のジャズピアニスト氷川透は、お嬢様大学として有名な聖習院女子大学の文学部哲学科専任講師住吉昌喜に呼び出された。住吉は氷川の大学時代の先輩であった。
住吉の研究室は文学部第二研究棟の7階にあり、そこで推理小説におけるゲーデル問題について議論をする羽目になった。ちょうどそこに大倉早苗、小杉奈保子、祐天寺美帆の3人の女子大生が住吉を訪ねて来た。
英米文学科の学生である小杉が、哲学科の大倉に、ぜひ住吉を紹介してくれと頼んできたのである。祐天寺は大倉の後輩で、たまたまその場にいて好奇心からついて来たのだった。
小杉が住吉と会いたい理由は明かされなかった。3人から話を聞いた住吉は、氷川との議論を一時中断して小杉を誘って同じフロアにある第一セミナー室に向かった。
すると第一セミナー室の前で英米文学科の専任講師高島員子に呼びとめられた。至急話したいことがあるという。そこで住吉は小杉に第一セミナー室に入って待つよう指示し、高島とともに第一セミナー室の扉の前で立ち話を始めた。これが18時16分のことであった。
それから15分後に警備員が第一セミナー室にやって来た。保安上の問題だという。警備員は第一セミナー室に入った。その直後、住吉と高島は近くの第3セミナー室に場所を移った。

18時57分、第一セミナー室から悲鳴が聞こえた。7階にいた人々が駆けつける。第一セミナー室には胸をナイフで刺された警備員の死体があったが、そこにいるはずの小杉の姿はなかった。
一同が唖然としていると、数分後にパトカーのけたたましいサイレンが聞こえた。一同はまだ警察にも連絡していないのに、もうパトカーが来たのかと再び驚きの顔を見合わせたが、パトカーが来たのは警備員刺殺事件とは関係がなかった。
文学部第二研究棟の屋上から女の死体が吊り下げられているのが発見されたのだ。女の死体の発見者はタクシー運転手。運転中にふと学内を見ると、壁に死体がブラブラしていたので警察に連絡したのだ。
屋上から吊り下げられた女の死体は、小杉のものだった。小杉は絞殺されたのちに、足首を縛られて逆さに吊るされたのだった。
すると小杉が第一セミナー室に入ったあとの警備員が入り、その後に小杉が死体となってかどうかはともかく屋上に移されて吊り下げられ、その間第一会議室では警備員が殺されるか自殺したということになる。
なんとも不思議な状況だ。しかも警察が来て新たな事実が判明した。建物の出入りは全てヴィデオ録画され、さらに各部屋のドアの開閉状況も自動的に記録されていた。
それによると第一セミナー室は18時16分、18時31分、18時55分、18時57分の4回しか開閉記録がなかった。18時16分は小杉の入室、18時31分は警備員の入室で、どちらもドアの前には住吉と高島がいた。
最後の18時57分というのは死体発見の時の開閉である。すると小杉が第一セミナー室を出たのは18時55分ということになるが、すでにその時刻には死体となって吊り下げられていたのである。
ヴィデオの記録から18時16分から57分まで建物内にいたのは被害者2人を除けば11人、そのなかには当然氷川透も含まれていた。
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