ここに死体を捨てないでください!

烏賊川市内のアパートに1人で住んで司法試験の勉強をしている有坂春佳は、ある朝寝ぼけ眼でキッチンに行きコーヒーを淹れようとしていた。すると、玄関先で物音がした。ひょっとして泥棒、と思う間もなく一人の女が春佳めがけて襲ってきた。春佳は思わず近くにあった果物ナイフを手に取り、女に向かっていった。
その日の午後、有坂春佳の姉で仏具メーカに勤める香織のもとに春佳から電話があった。電話は仙台からで、春佳は自室で突然女に襲われナイフで抵抗したところ、誤って女を殺してしまったこと、その後闇雲に動きまわって、気がつけば東北新幹線で仙台に来ていたことを泣きながら話した。
香織は妹を宥め、仙台にホテルを取ってしばらく滞在すること、死体の件は何とかすることを伝え、電話を切るとすぐさま春佳のアパートに駆け付けた。そこには確かに春佳の言うとおり女の刺殺死体が転がっていた。
とにかく死体をどこかに運んで捨てようと考えた香織は、ちょうどアパートの前の路上で昼寝をしていた廃品回収の軽トラックに目をつける。運転手兼廃品回収業社長の馬場鉄男を丸め込んで、廃品として荷台に乗っていたコントラバスケースに死体を詰めて遺棄しに行くことにした。
死体遺棄と聞いて驚き尻込みする鉄男だったが、諸般の事情から香織とともに死体をケースに詰め、死体から出てきたミニクーパーのキーから女が乗って来た車を突きとめて、2人で烏賊川市の背後に聳える盆蔵山を目指した。キーとともに出てきた免許証から女の名は山田優子とわかったが、後で春佳に聞いても、そんな名には心当たりが全くなかった。
ところが日が暮れてしまい、おまけに道にも迷ってしまった2人は、仕方なくの底なし伝説のある赤松川の上流にある三日月池に車ごと死体を沈めた。そのあと帰りの交通手段のないことに気付いたドジな2人は山中をさまよい歩き、クレセント荘という温泉宿にたどり着いた。
一方、同じ日の午後4時過ぎ、烏賊川市にある鵜飼探偵事務所の所長鵜飼杜夫は、いつまでたっても現れない依頼人山田優子にいら立っていた。依頼人に何かあったのではないかと危惧した鵜飼は助手の戸村流平や二宮朱美とともに、優子の手掛かりを求めて出身地に近い盆蔵山のクレセント荘に向かったのだった。
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