殺意は必ず三度ある

鯉ヶ窪学園野球部は、とにかく弱いことで有名で、毎年の甲子園夏の大会でも、予選の1回戦で敗退。あまりの弱さに、取りあえず当たれば勝てるから、相手の学校からは感謝される存在だった。
ある朝のこと、その鯉ヶ窪学園野球部キャプテン土山博之が、その朝も一番乗りでグラウンドに出てみると、ものすごい違和感が襲った。その違和感の正体が、わからないままボンヤリしていると、後ろから監督の野口啓次郎にどやされた。
土山がポカンとしていると、お前の目は節穴かと野口監督。それでも土山は、違和感の正体がわからない。野口監督は呆れて教えてくれた、ベースがないのだと。土山がハッとして見ると、確かに監督の言うとおりすべてのベースがなくなっていた。
この不思議な盗難事件は、土山を通じて鯉ヶ窪学園探偵部に相談された。探偵部の多摩川部長と八橋、赤坂の3人は、検討を開始するが、まったくわからない。いったい誰が野球のベースなんか盗むんだろうか。
暫くしてベース盗難事件も解決しないうち、鯉ヶ窪学園と飛龍館高校の練習試合が、出来たばかりの飛龍館高校球場で行われることになった。ところが野口監督が姿を見せない。仕方なく土山が監督の代理を務めることになった。
ほぼ互角の両校の試合は中盤以降乱打戦となり、9回裏の鯉ヶ窪学園の攻撃になった。一打逆転サヨナラのチャンスに、打順は土山。その土山は、全員の期待を見事に裏切って逆転サヨナラホームランをバックスクリーンに放り込んだ。
ところが飛龍館のセンターの動きがおかしい。センターの選手がフェンスを登り大ホームランをキャッチしそこねたまではいいが、その後フェンスの向こうに降り、そして再びフェンスを登ってグラウンドに戻り、必死の形相で走ってきたのだ。
そして叫んだ、バックスクリーンで人が死んでいると。死人はなんと野口監督だった。背中をナイフで刺されていた。しかも何かのメッセージのように、死体のそばには盗まれた鯉ヶ窪学園のホームベースとボールをキャッチした状態のキャッチャーミットがあった。
警察の捜査で野口監督の死亡推定時刻は、前夜の9時前後だった。ところがその時間、球場の2つの出入口である1塁側と3塁側の扉付近には人がいたのだ。1塁側には散歩に来た飛龍館高校の理事長夫妻。3塁側には飛龍館高校理事長秘書と鯉ヶ窪学園の女教師。
その人たちによれば、その時間変ったことはなく、しかもグラウンドの中にまで入っているというのだ。そもそもなぜ鯉ヶ窪学園の野球部監督が飛龍館高校のグラウンドで殺されなければならないのだろうか。
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