館島

その建物は目にも眩しい銀色をした4階建ての塔のような形をしていた。その外観もまた、正六角形という奇抜さで、屋上には一回り小さいドーム状の形の展望室が作られていた。
2階から4階の各階には、ホテルのようにテレビやバス、トイレがついた台形の部屋が6つ並んでいた。部屋のドアは円形の廊下に面しており、さら廊下の内側には巨大な螺旋階段が1階から屋上のドームまで続いていた。つまり円筒形の螺旋階段の周囲をドーナツ状の廊下が巡り、その廊下の外側に部屋が並んでいるのであった。
この奇妙な建物は岡山県では有名な建築家である十文字和臣が設計し、別荘として自身の建設会社が建てたもので、瀬戸内海に浮かぶ小さな島、横島の西の端にあった。
ところが和臣はこの奇妙な別荘を建ててから暫くして、この別荘の中で死んだ。和臣の死体は螺旋階段の1階で発見され、最初は階段から転落死したものと思われたが、検死の結果その死は墜落死であった。
しかし建物内には墜落死するような場所はない。するとどこかで墜落死した死体を移動してきたことになる。他殺か、自殺か、事故かはともかく死体を動かした人物がいることは確かであった。
しかも和臣の死亡した現場がどこか、まったくわからなかった。事件は暗礁に乗り上げ、一時は設置された捜査本部も解散し、ほそぼそと継続捜査が続けられた。

それから半年、岡山県警の刑事相馬隆行は横島の十文字家の別荘にやってきた。相馬は十文字家の未亡人康子の遠い親戚で、和臣事件のときの捜査員でもあった。
康子夫人は事件から半年、夏休みに事件関係者、つまり和臣が死んだときに別荘に滞在した人物を招待したのだった。それは主治医の吉岡、県会議員の野々村淑江と奈々江母娘、和臣の部下の鷲尾の4人。
このほかに和臣の死とは関係のない相馬、さらに康子夫人の親戚で私立探偵の小早川沙樹、雑誌記者の栗山智治を合わせた7人が招待者であった。
また十文字家側の人間は康子夫人のほかに長男信一郎、次男正夫、三男三郎の4人に執事役の青柳の5人。つまり全部で12人が十文字家の奇妙な別荘に集まった。
そしてその夜、長男の信一郎が奇妙な死を遂げた。密室状態の屋上のドームの中でネクタイで首を絞められて殺されたのだ。同じドームの中には意識が朦朧とした三郎がいたが、三郎はワインに仕込まれた睡眠薬で眠らされて信一郎がドームに来たのさえ知らないという。
信一郎の死体が発見されたのは翌朝のことで、折悪しく台風が接近して暴風雨となりつつあり、横島への船は航行できず警察も島にはやってこれない。
閉じ込められた相馬刑事と私立探偵小早川沙樹は事件を解明しようと捜査を開始するのだが…
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