密室の鍵貸します

架空の町である烏賊川市の大学4年生戸村流平は、就職の件で恋人の紺野由紀と派手に喧嘩して別れた。紺野由紀は流平と別れた後すぐに恋人を作ったから、流平の就職は単なる理由付けだったのかもしれない。
別れた直後の流平は一時期大荒れに荒れた。仲間と酒を飲んで前後不覚になり、駅前で紺野のことを殺してやるとわめいたのを多くの人間が見ている。
だが、やがて流平も落ち着き、好きな映画のビデオを見る余裕も出来た。前から見たかった「殺戮の館」というビデオであった。流平はビデオを見るときに、よく大学の先輩の茂呂耕作の部屋を利用した。
茂呂も映画好きで、借りているアパートの部屋の一室を大金をかけて改装し、完全防音のホームシアターにしていたのだった。その日、人生最悪の日にあるとも知らずに流平は「殺戮の館」をレンタルビデオ店で借りて茂呂の部屋に向った。

貧乏学生で風呂なしの部屋に住む流平は、茂呂の部屋で雑談をした後、茂呂のところに来たときのいつもの習慣で風呂を借りた。
風呂から上がって、茂呂と2人でホームシアターに入り「殺戮の館」を2人で見る。このビデオは2時間30分、上映開始は午後7時30分だった。
ビデオが終わり、茂呂が近所の酒屋に酒とつまみを買いにいき、2人で15分ほど軽く飲んでから茂呂は風呂に入った。その間流平はずっとホームシアターの中で映画関係の雑誌を読んでいた。
30分経っても茂呂が戻らないのをいぶかしんだ流平はやっと腰を挙げてホームシアターを出て、風呂場に向った。ところが風呂場には洋服を着たままの茂呂の死体があった。
それを見て茂呂は卒倒して、翌朝まで気絶してしまう。だが、前夜流平が死んだ時間に、すぐ近くのアパートに住む紺野由紀も何者かに殺されていた。
紺野由紀は背中をナイフで刺され、アパートの部屋のベランダから突き落とされたのだが、その時間は前夜9時42分。ちょうど流平が茂呂と「殺戮の館」を見ている時間だった。
警察は流平が気絶しているのも知らず、紺野由紀殺害の容疑者として流平の行方を探し始めた。一方、流平は翌朝気がつくが、そこで部屋を点検して窓には内側から鍵がかかり、ドアにも鍵とチェーン錠が掛かっていることを知る。
茂呂の部屋は密室だったのだ。すると密室の内側にいた流平が犯人ということになる。流平は一晩で2つの殺人の容疑者になってしまったのだった。
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