倒叙の四季

表題作の中篇「赤死病の館の殺人」ほか3篇で、いずれも森江春策もの。
春は縊殺 やうやう白くなりゆく顔いろ
俺は恋人の薫子を殺すことにした。子供ができた年上の女には用はない。将来、父親の地盤をついで国会議員になる俺にとっては、邪魔なだけの存在だ。縊死に見せかけて殺すことにした。
多くの書や秘密裏に売買されている完全犯罪完全指南を研究し、方法は完璧だった。警察は付き合いのあった俺のところには来るだろうが、物証は何一つなく基礎は不可能なはずだった。そして殺人は実行され、刑事が2人訪ねてきた。

夏は溺殺 月の頃はさらなり
俺は龍也を物置のようなプレハブ造りの釣り小屋で溺死させたのは夏の夜のことだ。釣り好きの俺は、その拠点とするために土地を借り、そこに粗末な小屋を建てていたのだ。そして龍也を夜釣りに誘った。喜んだ龍也は小屋に着くまではしゃいでいた。
俺は小屋で団子をむしゃむしゃ食っている甘党の龍也をナイフで脅し、手足を縛ったうえで、クーラーボックスに満たした海水に付けて溺死させた。もちろん沖から苦労して汲んできた海水だった。その後、ボートで沖まで行って龍也の死体を遺棄した。
夜釣りの最中に誤って海に落ち死んだことにする、というのが俺が描いたシナリオだった。ここまでに俺は、多くの書や秘密裏に売買されている完全犯罪完全指南を研究し、方法は完璧だった。事実それはうまく運んだ。潮が龍也を運び死体はなかなか見つからなかった。死体が10キロほど離れた離島に上がっているのが見つかったのは8日後、そして葬儀が終わると、刑事が2人訪ねてきた。

秋は刺殺 夕日のさして血の端いと近うなりたるに
俺の伯父は多くの遺産がありながら、唯一の肉親である俺に遺産を残さず、俺からすればわけのわからないM市旧陸軍墓地維持会に遺産のすべてを寄付するという遺言にすると俺に告げた。そんなことをされてたまるものか。
伯父を殺すしかない。そのために俺は生まれて初めて真剣に打ち込み、多くの書や秘密裏に売買されている完全犯罪完全指南を研究した。その結果、伯父を強盗に殺されたことに見せかけて刺殺することにした。アクシデントはあったものの伯父を殺したが、少しして俺のところに刑事が2人訪ねてきた。

冬は氷密室で中毒殺 雪の降りたるは言ふべきにあらず
私は憎むべき仁美への復讐をついに実行した。そのために多くの書や秘密裏に売買されている完全犯罪完全指南を研究し、そして得た殺害方法は練炭自殺に見せかけた密室での殺人。
一人暮らしの仁美の家を訪ね、睡眠薬で仁美を眠らせて小さな和室に運び、練炭3つで一酸化炭素中毒で殺す。ポイントは家全体を密室にすること。仁美の家の裏口は、木枠にドアがぴたりと嵌ってしまっていて、内側からは体当たりすれば何とか開くが、外側からは絶対に開かない。
私はこの裏口から外に出て、扉にある細工をして完全な密室として、仁美の死は自殺と結論づけるように計画し、成功したのだ。仁美の死体は姉によって発見され、数日後刑事が私のところにやって来た。


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