暗闇の囁き

悠木拓也は大学院への受験レポートの作成のために、10年ぶりに烏裂野にある叔父の別荘を訪れた。烏裂野は周囲が山林に囲まれたところで、別荘も叔父のものと少し離れた場所にある円城寺家のものが2つあるだけで、この静かな環境でじっくりとレポートを書こうというのが拓也が久しぶりに烏裂野に来た理由であった。
別荘が近づいたときに、道端から男の子が拓也の車の前に飛び出してきて危うく轢きそうになる。間一髪で事故は免れたが、男の子は膝を痛めてしまった。
男の子は2人連れで実矢と麻堵と名乗った。2人は1つ違いの兄弟で、円城寺家の当主隼雄の子供であった。拓也は2人を車に乗せて円城寺家に送り届けたが、これが拓也が円城寺家の事件に巻き込まれるきっかけとなった。
円城寺家の家庭教師遙佳から、遙佳の前任者朝倉かをりが森の中で死に、その死体から黒髪が切られていたという話を聞かされた拓也は、自然の真相解明を依頼される。

朝倉かをりは数ヶ月前に森の中で、喉に鋭利な枝を突き刺して死んでいた。だが、自殺か事故か殺人かすらもはっきりとは断定されていなかった。
そして円城寺の当主隼雄は異常なほど厳格で、子供たちにはテレビを見させず、別荘から少し離れたところで遊ぶことすら許さなかった。
隼雄はすぐに子供たちにも手を挙げて、異常なほどその躾には熱心だった。さらに隼雄の母ハツ子は痴呆症で家に籠り、妻の香澄は精神を病んで一言も喋らずに自室で暮らしていた。
また出戻ってきた隼雄の妹安達雅代もいて、この雅代は隼雄にしょっちゅう金をせびり、自分は不幸な女であるがそれは皆が悪いからだという身勝手で口うるさい女であった。
雅代には子供の克之がいたが、克之は雅代以上に身勝手であり、女好きで金遣いも荒かった。雅代は皆に嫌われていたが、克之はそれ以上に嫌悪されていた。
そして、克之がある夜から行方がわからなくなった。これに続いて円城寺家の別荘では不可解な事件が相次いで起きる…
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