霧越邸殺人事件

劇団「暗色天幕」の一行は、信州のあるホテルに招待されるが、その帰りにホテルの送迎バスが峠でエンコしてしまう。仕方なくそこから近くの町まで歩いていくことになった。
ところがあいにく降り出した雪はたちまち視界を奪い、さらに初めての道に迷ってしまう。そして辿り着いたのが山奥の洋館霧越邸。
霧越邸は山奥にある霧越湖に面して建ち、邸の一部である噴水は霧越湖の中に作られていた。劇団の一行は主宰者で演出家の槍中秋清以下全部で8名。邸のほうでは人道的見地から吹雪が治まり、下山できるまで滞在を認めてくれた。
邸の主人は白須賀秀一郎といい、世捨人のような生活をしていたが、皆の前に姿を現すことはなかった。ほかに執事の鳴瀬、料理人の井関、主治医の的場、雑用を受持つ末永の4人の使用人がいた。
さらに暗色天幕一行と同様に吹雪のために山を降りられなくなった、近くの町の医者忍冬準之介が一行の少し前に避難してきていて、霧越邸には総勢14名に及ぶ人間がいた。

一晩経っても吹雪は衰えるどころか激しさを増すばかりで、交通は完全に途絶して14名は霧越邸に閉じ込められる形になってしまった。さらに電話も線が切れたらしく通じなくなり、外部との連絡は一切出来なくなった。
2日目の夜、最初の殺人が起きた。殺されたのは暗色天幕の男優榊由高。榊の死体は霧越邸にある八角形の温室の中で見つかった。
死体は後頭部を殴られ、さらに自らのベルトで首を絞められ、両腕を胴に巻きつけた不自然な姿勢をとらされ、宙に吊るされた如雨露から水をかけられていた。
如雨露にはホースが突っ込まれて水が供給され、さらに足のそばには赤い木履が置かれていた。北原白秋の「雨がふります。雨がふる」で始まる童謡雨の見立てだった。
続いて起きた第二の殺人も同じく雨の見立てらしく、死体のそばには折り鶴が置かれていた。第二の被害者は女優の希美崎蘭。やはり頭を殴られて、ナイロンの荷紐で首を絞められていたのだ。
さらに第三の殺人が…殺人鬼は霧越邸の中にいるのは間違いないが、邸の人間なのか部外者である劇団の人間なのか?それに、なぜこの状況で連続殺人を始めたのだろうか?

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