紅楼夢の殺人

元勲の一族である賈家は寧国府と栄国府に分かれてが、両家の広壮な屋敷はたがいに接し、頻繁な往来がある。
寧国府は賈家の長男の系統で現在は四代目の賈珍が、一方の栄国府は次男の系統で現在は三代目の賈赦が当主であったが、2人とも元勲の功には程遠く、放蕩の限りを尽くし酒食に溺れていた。
この2人に限らず賈家の男たちはそろって性格も悪く、品行もよくなかったが、例外もあった。ひとりは賈赦の弟の賈政で、清廉潔癖であり職務にもよく励み、皇帝の覚えもめでたかった。
もうひとりの例外が賈政の次男賈宝玉であった。賈宝玉は子供の時から姉妹や従姉妹、さらに侍女たちと過ごすのが好きであり、また賈一族の女性たちの人気も高かった。
賈一族の最高権力者は、最年長である賈赦や賈政の母親である史大君であったが、この老婦人の覚えもめでたかった。そんなところが潔癖な賈政に言わせると、逆に不肖の息子であった。
賈宝玉には姉がおり、名を元春といったが、この元春が貴妃として宮廷に入った。貴妃とは皇后に次ぐ高位の女性で、これがまた賈一族の勢威を高めた。

その元春があるとき里帰りを許され、その里帰りのためだけに莫大な財産をかけて造営された庭園が大観園である。
元春の里帰りはわずか数時間に過ぎなかったが、元春は帰り際に大観園を未婚の女性と寡婦の園にせよと言い置いた。そして唯一の例外として賈宝玉が住むことを許された。賈宝玉は元春のお気に入りでもあったのだ。
一族とはいえ、今をときめく貴妃の意向である。だれも逆らえなかった。大観園は多くの女性と賈宝玉が、それぞれ個性に合った建物に住む楽園となった。
そこは世俗に交わらず、詩歌や管弦、さらに演劇の世界となって行った。その大観園と賈家が、ある日を境に連続殺人の舞台となって行った。
それも衆人環視の中で見えない人物に池に引きずり込まれて殺されたり、死体が空中を飛んだとしか思えない状況での殺人だったり、忽然と死体が花園に現れたりと不可解なものばかりであった。
これを解くのが賈宝玉と刑部省勤務で理論家の役人である頼尚栄という人物。頼尚栄はかつて多くの難事件を理論的に解決して、高官に請われて賈家を守るべく送り込まれたのだった。しかし彼らの奮闘むなしく、不可解な殺人事件はさらに続いた。

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