明智小五郎対金田一耕助

明智対金田一の夢の競演をはじめ、フレンチ警部やエラリー・クイーンなどの名探偵博覧会Ⅱ
明智小五郎対金田一耕助
昭和12年のある日の夕刻、薬種問屋が軒を連ねる大阪道修町の本家鴇屋蚊龍堂の善池初恵の招かれてやってきた金田一耕助は、本家の目の前に元祖鴇屋蚊龍堂の看板を掲げる、同じつくりの店を見てギョとした。
明治のころ、鴇屋蚊龍堂のあるじ万右衛門は隠居するにあたり2人の番頭に暖簾分けをした。2人の番頭は年も、経験もほとんど同じで、何かにつけて比べられたために仲が非常に悪かった。万右衛門はそれを知っていて2人に競わせる形で、同じ格の店を同じ場所に向かい合わせに出させたのだ。
それ以来一方の善池家の方は本家、もう一方の丸部家の方は元祖の看板を掲げて張り合ったが、主人同士の仲はますます悪くなり、それが奉公人にも伝染して、三代目になろうというのに両家は日々諍いの連続だった。
ところがある日たいへんな事が起きた。本家のあるじ善池喜一郎が元祖のあるじ丸部長彦を訪ねて話をするうちに喧嘩となり、長彦の顔に硫酸をかけてしまったのだ。
長彦の顔は焼けただれ、それ以来黒頭巾で顔を隠して2階の表通りに面した座敷に閉じこもったきり、一方の喜一郎はどこかに行方をくらましてしまった。
本来なら警察沙汰になるところだが、双方とも事情がある上に世を憚って届けはしなかった。喜一郎が逐電したままの本家では、妹の初恵が店を仕切り、元祖では店に出られない長彦に代わって番頭たちが店を仕切っていた。

さて耕助が本家の2階の部屋に落ち着き、小僧と初江がが茶を持って上がって来たときに事件が起きた。向側の元祖の部屋の2階の障子が開き、黒頭巾を被った男が何人かの賊に襲われ、誘拐されたのだ。
耕助たちが駆け付けると元祖には誰もおらず、2階への板戸には鍵がかけられて通れなくなっていた。耕助は取り敢えず本家の車を借りて運転手とともに警察に知らせに行き、やがて警官を大勢連れて帰ってきた。
元祖の2階の部屋には争った跡や血痕が残り、さらに土蔵には元祖の奉公人たちが縛られて監禁されていた。奉公人によるといきなり賊が押し入って来て、否応なく閉じ込められたのだという。
そして翌々日、淀川の河川敷で黒焦げになった男の焼死体と男のものと思われる黒頭巾が見つかった…

フレンチ警部と雷鳴の城
休暇で妻とともに記者旅に出たフレンチ警部は、途中の乗り換え駅で人違いされて、雷鳴の城に連れていかれた。雷鳴の城はキャロウェイ准男爵の城であったが、准男爵が亡くなり一人娘のハリエットが相続した。
相続時にハリエットは未成年であったために、事務弁護士のグレゴリー・マナリングが後見したが、マナリングは悪評が高く、ハリエットの財産に不正を働いている様子だ。
准男爵もマナリングには不審を抱いており、ハリエットが18歳に達したときに、無事財産を相続できるように、ロンドンの著名な名探偵にしてスコットランドヤードでも信頼厚いFに協力を要請していた。
このたびハリエットが18歳になり、Fとはフレンチ警部のことだと執事に勘違いされて訂正する間もないまま雷鳴の城に入ったのだが、そこには本物のFであろうフェル博士が偽名を使って先着していた。

フレンチも咄嗟に偽名を名乗ったのだが、フレンチもフェルも相手のことを見破っていた。だが、表面は何事もないように芝居を続けた。翌朝早くフレンチはフェルに起こされた。
庭の先に建つ納骨堂との間の専用電話が鳴り、フェル博士が出たのだが先方は無言であったというのだ。納骨堂で何か事件が起こったらしい。フレンチはフェルとともに納骨堂に向った。
庭には前夜に降った雪が積もっていたが、納骨堂への足跡はまったくなかった。納骨堂の入り口は鍵がかかっていたが、それはフレンチが持っていた専用の器具で開けた。
そして納骨堂の中にあったのはマナリングの死体。傷の具合から他殺と考えられた。死体の口の中からは納骨堂の鍵が見つかった。雪の中に建つ納骨堂は密室であったのだ…

ブラウン神父の日本趣味
日本趣味で溢れた書斎の中でアルフレッド卿の死体は発見された。卿の死体は書斎に置かれた長持の中で見つかり、拳銃で撃たれていた。凶器の拳銃は書斎の中の伊万里の壺の中にあった。
書斎から銃声がしたので、驚いた卿の夫人と客のひとりで新聞記者のマコーミックが駆け付けると、書斎の唯一の出入口であるドアは中から鍵がかけられていた。
マコーミックが大工道具を探してきたが、そこで夫人は合鍵を持っているのを思い出してドアを開けた。夫人とマコーミックが書斎の中を捜し、長持から死体を発見したのだった。夫人もマコーミックも書斎のドアを開けたとき、中には誰もいなかったと証言した…

そしてオリエント急行から誰もいなくなった
積雪のためにユーゴスラビア国内で立往生したオリエント急行の一等寝台車内で起きたアメリカ人殺害事件は、乗り合わせた高名なベルギー人探偵により解決された。
それによると、犯人は途中駅から車掌に変装して乗り込んで殺人を犯したあと、次の停車駅で降りて逃走したといい、そのことをユーゴスラビア警察に連絡してきた。
警察は捜査陣を派遣したが、乗客は高名な上流階級の人物ばかりだったし、国籍も仏、英、伊、露、ハンガリーなど多彩であった。
乗客たちは最初からユーゴスラビアの警察を見下しており、そのうちに各国の大使館経由で圧力がかかり、除雪後に列車はパリに向けて出発し、ユーゴスラビア警察も探偵の解決を受け入れざるを得なかった。
しかしユーゴスラビア警察にも優秀な人間はいた。その人物はガンバ近くから押収したレコードに注目した。そのレコードを聞いてみると…

Qの悲劇 または二人の黒覆面の冒険
デトロイト公立図書館の静謐な一室でジェレマイア・コツウィンクル教授の絞殺死体が見つかった。死亡推定時刻は午後1時から2時の間だが、2時少し過ぎにはゴーディル氏が来て部屋の外で教授の帰りを待っていた。
というのはゴーディル氏はもともと教授と面会する約束でホテルで連絡を待っていたが、午後1時半過ぎに教授から電話が掛かり、外出先から3時半頃に帰るからその頃に来てくれと連絡があった。
ゴーディル氏はデトロイトの町に不案内であり、電話があるとすぐにホテルを出て2時過ぎに着き、それからずっとドアの外にいて、通りががった職員が親切心から部屋のドアを開くと教授が死んでいたというわけだった。
その後、ホテルの電話交換手により教授からの電話は偽電話の可能性が高くなった。そしてゴーディル氏によれば、偽教授は電話で「さっきエラリー・クイーン君を見かけたよ」とも言ったという。
事実デトロイトではエラリー・クイーンとバーナービイ・ロスの2人が黒覆面をつけて対決する講演会が予定され、リーとダネイの2人がデトロイト入りしていた。

探偵映画の夜
古今東西の探偵映画を収集している探偵小説家の郊外の家は、収集品のビデオやDVDで足の踏み場もないほどだった。探偵小説家は訪ねて来る人ごとに、収集品のことを延々と講釈するのが常だった。今日も訪問者に延々と講釈していたのだが、その人物は探偵小説家を殺そうとしていたのだった。
そしてその夜、婚約者が探偵小説家のもとを訪れたとき、その家の中から大きな叫び声が聞こえ、その直後に窓からスイカのお化けのような人物が見えた。
たまたま通りがかった通行人たちも叫び声を耳にし、スイカのお化けを目撃したし、探偵小説家の裏手に住む家族も同様だった。たまたま警官が通りかかり、婚約者とほぼ同時に家の中に入ってみると、そこには胸を刺された探偵小説家の死体と緑色のマスクがあった。
しかしマスクを脱いだ殺人者は表側は通行人たちが、裏側は裏手に住む家族が見張る形になったにも関わらず、跡形もなく消えうせていた。

少年は怪人を夢見る
大仏の中に縛りつけられ閉じ込められた男、近くには短くなっていく導火線、導火線が燃え尽きたとき仕掛けられた爆薬が大爆発を起こし、男の体は木っ端みじんになるだろう。
そんなとき男の頭の中には、少年時代から今までのことが走馬灯のようによみがえった。幼いころに小遣いをもらい遊んでいる間に両親が消えたこと。
警察に保護されたが、信じていた名前がまったくデタラメであったこと。そして施設に預けられ、見知らぬ男女の養子になったこと。その養父母にどこかの偉い博士に預けられて、危うく顔形を変えられそうになったこと。
そこから危うく逃げ出して全国を放浪し、サーカスに入ったこと。黄金仮面と名乗る怪人物の手下になったこと…


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