真説ルパン対ホームズ

ホームズ、明智、ファイロ・ヴァンス、チャーリー・チャンなど古今東西の名探偵が難事件に挑む、パスティーシュ短篇集
真説ルパン対ホームズ
1900年にパリで行われた万国博では日本ブームが起きた。アメリカで人気を博した川上音二郎とその妻マダム貞奴が、ロイ・フラー女史と契約し、女史の劇場で公演、万博の女王の異名を取った。
貞奴のファンも多く、芸術家たちはすでに名をなした人も、のちに大きな名を残す人も例外なく絶賛し、金持ちの中には高価な贈り物をする者もあった。
大富豪バルバロス氏もその一人で、宝石を幾種類も散りばめた高価な頸飾りを贈ったが、条件があった。それは、その頸飾りをつけて舞台で踊ることであった。この頸飾りに目を付けたのは、強盗紳士ルパン。
舞台上で踊る貞奴から、策略をめぐらして頸飾りを奪い取ってしまった。その事件で騒然とするなか、さらに事件が続く。今度は万博の日本館で仏像が盗まれた。
本国から運ばれた数トンはあろうかという巨大な仏像が、一晩のうちに展示室から盗まれたのだ。展示室は施錠されているうえ、毎晩2時間おきに警備員が巡回して、のぞき窓から中の様子をうかがっていた。
警備員の証言などから、犯行は午前4時から6時のわずか2時間の間に行われたとしか思えなかった。数トンもの仏像をわずか2時間のうちにどうやって持ち去ったのか?

警察もマスコミもこんな派手なことをするのは、ルパンの仕業に違いないと決めつけたが、当のルパンは仏像を盗もうと思ったことすらなかった。完全な濡れ衣だった。
ところが頸飾り事件、仏像事件に続いてまたも日本絡みの事件が起きた。マルセイユからパリに輸送される日本の風景を写したフィルムが、輸送中の列車から抜き取られたのだ。
マダム貞奴や万博の日本館に風物に代表される東洋の神秘、エキゾチックな国、日本の情景がありのまま写されているフィルム。
それは万博の会場で大型スクリーンで上映されるはずだったが、そのフィルムが全て奪われたのだ。フィルムの所有者は独自の判断で英国の名探偵シャーロック・ホームズにフィルムの行方捜査を依頼した。
一方フランスの捜査当局は、フィルム盗難もルパンの仕業によるものとした。ここにルパンとホームズがパリで火花を散らすべく舞台が整ったのだった。

大君殺人事件 またはポーランド鉛硝子の謎
自らを大君(タイクーン)と呼ぶクラムリー・パンコットは、ニューヨークで多数のパルプマガジンを発行する出版社の社長であった。パンコットは15種類のパルプマガジンのほかに、最近「自分は高級雑誌を読んでいるから高級なのだと思いたい低級読者に向けた雑誌」というコンセプトでタイクーン・マガジンという16種類目の雑誌を創刊した。
このタイクーン・マガジンが大当たりし、なかでもレイモン・F・キンメルという作家の小説が大人気だった。キンメルのためには専用の執筆のための部屋が用意され、その部屋の鍵はキンメルとパンコットしか持っていなかった。その部屋でパンコットの死体が見つかったのは10月25日土曜日のことだった。

パンコットは拳銃で撃たれ、前日の夜に隣室の住人が銃声を聞いたという。ちょうどそのころパンコットの部屋のラジオから、アイリーン・マクバードの歌が流れており、その直前に銃声がしたというのだから、犯行時間は容易に割り出せた。そして部屋の鍵を持つキンメルが第一容疑者とされた。
だが、キンメルは3人いたのだ。パンコットはキンメルの正体を隠し、3人の人物に競作をさせていた。
その1人目はロマンス作家のキャロル・ド・キャロル、で2人目は活劇作家ニック・カイドー、3人目は怪奇作家Q・モリー・ケンタウロスといった。
しかも3人は犯行時刻のアリバイを主張、キャロルはローマ劇場でピストル騒動を見ていたといい、カイドーはオランダ記念病院で診察中、ケンタウロスは勤務先のフレンチスデパートで仕事中だった。
3人にマーカム地方検事とファイロ・ヴァンスは尋問を始めたが、そこにヴァン・デゥーゼン教授とネロ・ウルフも加わって…

ホテル・ミカド殺人事件
サンフランシスコのホテルミカドで事件は起きた。22号室の中で銃声がし、駆け付けた人々の前には、日本刀でハラキリをした日本人と銃で撃たれた白人女性がいた。
市警察のダンディ警部補は、たまたまサンフランシスコに来ていたホノルル警察のチャーリー・チャン警部とともに現場に赴いた。現場検証の結果、女の死因は首を絞められの窒息死で、死後に銃弾を撃ち込まれていた。
男に身元は日本の軍人でタツギ大尉、女はデビーという娼婦であったが、現場には地元の探偵サム・スペード、日本領事館のマコヤマ事務官、通信社のアキ記者、それにホテルの雑役夫の日本人なんとかコフスキー、サンフランシスコ武侠会のナボシマなどが次々に現れて…

黄昏の怪人たち
迷子になった僕は、親切なおじさんに助けられて家に連絡を入れてもらい、駅で迎えを待っていた。その間そのおじさんが僕に話してくれたのは…
怪人二十面相が草小路氏の家から予告どおりに「バブルクンドの宝剣」を盗んだが、警戒していた中村警部たちに追われて、路地に逃げ込んだ。
中村警部たちが路地に入っていくと、そこには気絶した二十面相と、「バブルクンドの宝剣」で刺し殺された男の死体があった。男は近所の人間で、たまたま路地で逃げる二十面相とばったり出会い、殺されたものと思われた。
二十面相は逮捕されたが、そこに明智小五郎が現れ二十面相と面会。そして明智は二十面相から殺人の濡れ衣を晴らしてくれるように依頼された…

田所警部に花束を
嫌味な探偵星影龍三と実直で粘り強い鬼貫警部。対照的な2人の名探偵ともに親交がある田所警部を囲む、芦辺ワールドご一行。その席で田所警部の口から語られたのは、ある2つの事件だった。
星影氏は時刻表片手に犯人のアリバイ崩しに苦しんでいたし、鬼貫警部は密室の謎の前に立往生していた。密室や不可能犯罪が得意な星影氏とアリバイ破りなら人後に落ちない鬼貫警部にとっては、おのおの不得意な分野の事件を抱えることになって、当惑していたのだった。
そこに現れた田所警部は、それぞれアドバイスをし、それを聞いた2人は愁眉を開き事件はめでたく解決を見た。秘話に属する類の話を聞くともなしに聞いた、開催場所三番館のバーテンは、田所警部のある一言を疑問に思い…

七つの心を持つ探偵
ある晩のこと、出張先から新幹線で帰ってきたビジネスマンが、翌朝、自宅の書斎で死体となって発見されました。ごく普通の人間である被害者は、これもごく普通の犯人に、ごく普通に殺されたのでした。でも、ただ一つ普通の事件と違っていたのは…このお話の語り手が突如、人格変換を起こししまったことなのです。それも次から次へと、いろんなタイプの探偵に!
とういのが本篇の書き出しで、語り手は文字通りいろいろなタイプの…パルプ・マガジン風のハードボイルド探偵をはじめ黄金時代さながらのディレッタント探偵、昔子供たちを喜ばせた少年探偵、テレビでも人気の岡っ引きなどなど…探偵に変わり変わって最後には…

探偵奇譚 空中の賊
明治時代に行われた、黒岩涙香による海外探偵小説の翻案の文体を真似た作品。
ロンドンの銀行頭取のところに、銀行で保管しているロシア人の所有する仏像と盗むという世間を騒がしている迷宮男爵からの予告状と、頭取の娘の結婚を妨害し娘を略奪するという脅迫状が届く。
右往左往する銀行頭取と番頭にところに警視庁警部や民間探偵がやって来たのだが、迷宮男爵は稀代の大怪盗、変装の名人とあって…

百六十年の密室―新・モルグ街の殺人
森江春策のところに星々森人という名の人物から、事件の依頼の手紙が来た。森江は手紙に従って、4階建ての古びたビルの一室に入っていく。
そこには覆面で顔を覆った、黒い大きな影のような者がいて森江に話しかけてきた。それが手紙を書いてきた星々森人だった。
星々森人が依頼してきた事件とは、160年前のモルグ街の殺人そっくりのもので、星々森人はあの事件の解決が本当に本のとおりなのかと問うていたのだ…


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