探偵宣言

森江春策の高校時代、大学時代、記者時代などの活躍を描く連作短篇集
殺人喜劇の時計塔-森江春策、初期の事件
森江春策の通っていた高校には時計塔があった。4面のうち3面には大きな文字盤が着いていて、唯一東側だけが単なる壁であった。
交通ストで学校が休校になった秋のある日、この時計塔の下で他校生の帯谷善司が大きな石塊で頭を殴られて死んでいた。死体が発見されたのは5時半近く。帯谷は5時15分には生きていたことが目撃されている。
他校生の帯谷がこの学校に来たのは、この日登校している演劇部の執行あき子に会うためであった。帯谷と執行は付き合っていたが、もう一人田山久がそこに関係し、3人の間には不穏な空気が流れていた。
田山も演劇部に所属し、当然この日も登校していた。動機面から田山に容疑がかかるが、その田山も青酸を飲まされて地下室に転がっていた…

殺人喜劇の不思議町-森江春策、大学時代の事件
うらぶれた港町の駅で列車に乗りはぐれた森江春策が出合った事件は、町一番の旅館今日館の主人が海岸で鉄砲で撃ち殺されるという事件。その鉄砲たるや16世紀の火縄銃で、太腿に残った玉も丸い鉛球だった。
この鉄砲は骨董コレクターの今日館の主人が集めたものの一つで、普段は今日館のロビーの鍵をかけたケースの中で展示してあった。今日館のケースは鍵を壊された形跡があり、凶器はこの火縄銃と思われたが…

殺人喜劇の鳥人伝説-森江春策、記者時代の事件Ⅰ
山上のホテルの3階の部屋の窓枠に腰掛けたまま死体となっていた男。その下の部屋にいた女性客は、窓の外を男が下から上に飛んでいったという。
さらにその男が着ていたオレンジ色のジャンパーがはるか遠くの欅の木の天辺に引っかかり、老人クラブの面々が空を飛ぶオレンジ色のジャンパーを着た人間を目撃していた。
そして極めつけはその死体の男がふもとで人を絞め殺し、ホテルからふもとの駅に向かって山道を下っていたホテルの送迎バスに事故を起こさせたのだ。
バスのフロントガラスにオレンジ色のジャンパーを着た男が逆さにぶら下がり、それが原因で運転手はハンドル操作を誤ってガードレールに激突死した。ホテルの窓枠で死体となっていた男は鳥人になったのか…

殺人喜劇の迷い家伝説-森江春策、記者時代の事件Ⅱ
山の中に建てられた三角屋根に風見鶏がある特徴ある西洋館。山のふもとの不登校児の施設で演劇を教える赤沢真紀は確かにその西洋館を見たはずだった。ところが、そこには西洋館などないという。
そこで仮名文字新聞通信員の森江春策は真紀とともに西洋館のあるべき場所に行ってみると、底にはプレハブの物置が建っているだけ。しかもその物置を開けてみると中から男の死体が転がり出てきた。
肝心の西洋館は消えてなくなっていたが、西洋館を見たのは真紀だけではなかった。最近赴任した派出所の新米巡査も見たと言い、さらに西洋館を不動産屋から買ったという人間まで現れた。

殺人喜劇のXY-森江春策、転進前後の事件
昭和初期に建てられた大大阪第一ビルで連続殺人事件が起きた。最初の殺人は森江春策が勤める九鬼法律事務所の隣りに入っているテナント場況通信社で起きた。
場況通信社で言い争う声が聞こえた直後に銃声がし、皆が駆けつけると須磨ノ浦という経営者が撃ち殺されていた。場況通信社は須磨ノ浦と熊嶽という2人が経営する、密輸や詐欺まがいの事をしている怪しげな会社で、犯人は熊嶽と考えられた。
次に殺人が起きたのはイベント会社SERA'S。SERA'Sは世良夫妻が経営する小さな会社で、夫人が急に苦しみだした。夫は貿易会社の長田に救援を求め、長田がビル内を駆け巡ったあげく救急車が呼ばれた。救急隊員が世良夫人を抱き上げると、胸を拳銃で撃たれ夫人はすでに死んでいた。
さらに第三の事件が起きた。第三の事件の犠牲者は世良夫人を救うために奔走した長田。自分の事務所でやはり拳銃で撃たれていた。そしてテーブルには自分の血でXYとダイイングメッセージが記されていた。

殺人喜劇のC6H5NO2-森江春策、余暇の事件
大阪七彩舎会館というクラブの会員湯捨氏のところに試供品と賞するチョコレート・ボンボンが送られてきた。
甘いものは好かない湯捨氏は、そばにいた呉安氏に請われてその試供品を呉安氏に渡す。呉安氏は妻との賭けに負けてチョコレートを妻に買ってくる約束をしたのだった。
呉安氏が家に帰り妻とともにチョコレート・ボンボンを食べるが、チョコレート・ボンボンにはニトロベンゼンげ仕込まれていて呉安夫妻はともに中毒になった。食べた量の少なかった呉安氏は助かったが妻は死亡した。
この日本版毒入りチョコレート事件を推理クラブの面々が鳴り物入りで解くが、どれも回答は今ひとつ。それらの話を喫茶店で森江春策に聞かす作家の芦辺拓。すると喫茶店に居合わせた客たちも次々に珍説を披露しだし…

殺人喜劇の森江春策-森江春策、最近の事件
レトロビルにある森江春策の事務所を訪ねてきた吉池と名乗る依頼人は、森江に向かって話を始めたが、途中でトイレに出て行った。ところが廊下から争う声がし、さらに叫び声が聞こえた。
森江が廊下に出ると、そこには背中にナイフを突き立てられて絶命した吉池の死体が。ところが吉池というのは偽名で、付け髭とサングラスを取ってみるとその正体は森江の高校の同級生田山久だった。
一方ほぼ同じ時刻にレトロビルより数百メートル離れたホテルのレストランに現れた端正な男がコーヒーを注文した。そのまま男はコーヒーを前にしてじっと座っていたが、しばらくして男が死んでいるのが発見された。
ホテルで死んだ男は彩沢安彦といい、田山と同じようにやはり背中をナイフで刺されていた。そして不思議なこと彩沢のナイフの柄には田山の指紋が、田山のナイフの柄には彩沢の指紋が残っていた。田山と彩沢は同じ時刻に刺し合ったとしか思えない状況だった。


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