歴史街道殺人事件

11月27日午後3時、名神高速道路の天王山トンネルを出た先の大きなカーブで、宅配便のワゴンの屋根から何かがジャンプして道路脇の雑木林に放物線を描いて飛んでいった。
宅配便のドライバーはトンネル内から何かが屋根の上でゴロゴロと転げまわる音を聞いていて気になっていたが、それが何かはわからなかった。そのゴロゴロと転がっていた何かが飛び出したようだ。
パーキングで車を停めて屋根を見てみたが、そこにはガムテープの切れ端があるだけで、ほかに異常はなかった。このときはこれで済んだが、後日そのゴロゴロしていたのは、女の生首であることがわかった。
川越理奈のバラバラにされた死体の各部が順次発見されてから数日後、ドライバーの届けを受けて警察が名神高速脇の雑木林から、里佳の首を発見したのだった。

11月27日午後5時、奈良県奈良町いある昔ながらの円筒形の郵便ポストから女の右腕が発見された。午後5時の集配に来た郵便局員が投函された手紙に混じって出てきた梱包された女の右腕を見つけたのだ。
11月27日午後7時、兵庫県宝塚市にある廃屋となった旅館七賢荘の浴室から、女の死体が見つかった。その死体の心臓部には大きなナイフが深々と刺さっていたが、首と右腕、それに左足が切断されていた。
死体の身元は不明、死体発見の経緯は七賢荘に女の死体があると男の声による匿名の電話が、警察に架かってきたことによるものだった。
11月27日午後8時、伊勢志摩スペイン村の中にあるコインロッカー。スペイン村では閉園後に全てのコインロッカーが点検される決まりだった。
使用中であればマスターキーで開錠され、中身は遺失物として処理されることになる。今、使用中であった一つのロッカーが係員によって開けられた。その中には女の左足が入っていた。

奈良のポストの右腕、スペイン村のコインロッカーの左足、宝塚の旅館の胴体は同一人のものであった。右腕と左足は死後に切断されたものであったが、全部をつなげてみても寸足らず、つまり切断面同士が一致せず、その間にさらに切られた部分があった。死者の身元はやがて川越理奈という若い女性のものと判明する。
一方、若手弁護士の森江春策は川越理奈の母親から娘の行方を捜してくれるよう依頼されていた。依頼に基づいて動くうちに三重県の青山高原と奈良県明日香村での連続殺人事件に巻き込まれていた。そしてさらに理奈までが殺され、バラバラ死体となって発見された。
そして浮かび上がったのは、伊勢志摩、青山高原、明日香村、奈良市、天王山、宝塚市と事件が起きたり、関係した場所がすべて歴史街道上にあることだった。
歴史街道とは伊勢から神戸にかけての約300kmにわたって、日本版ロマンチック街道とも言われる、歴史をテーマにした探訪ルートのことであった。

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