殺人喜劇のモダン・シティ

昭和9年、なんとか不況を脱し戦火が拡大する前の時期、大阪は市域の拡張もあってモダン・シティの名を冠せられ、束の間の平和を楽しんでいた。
その大阪でも市内一というスパルタ高、芝蘭高女に通う平田鶴子は、ミナミのレストラン王平田旗太郎氏の長女で、毎朝市バスに乗って通学していた。
ある朝、満員の市バスの車内で男が突然倒れて死亡してしまう。死者は毒針のようなものを首筋に打ち込まれ、それが元で死んだ。当初は身元不明であったが、やがて満州帰りの阿郷という男と判明。
この殺人事件を取材する仮名文字新聞の新米記者宇留木昌介は、事件を取材するうちに鶴子と知り合う。
阿郷は市バスに大江橋の停留所から乗ったことが判明したが、今度はそのバス停のそばのビルで奇怪な殺人が起こる。
そのビルは上層階がホテル、下層階が貸事務所になっていて、その貸事務所の一室で芸能ブローカーの高嶋という男が殺されたのだ。
高嶋は電気時計を利用した自動青酸ガス発生装置によって殺されたと考えられたが、鶴子と宇留木の検討では装置自体に無理があるとわかり、装置は見せかけに過ぎなかったらしいと判明。
鶴子と宇留木はビルの上層のホテルに蒙古探索から帰ってきた異端の学者香山とその娘が宿泊している事実に注目する。

香山博士の娘未亜は鶴子の小学校の同級生で、芝蘭高女に転入したのだが、鶴子のことをことごとく無視した。鶴子は未亜が偽者ではないかと疑っていたのだが、偽香山博士親子が高嶋の死に関係しているのではと考えたのだった。
宇留木も鶴子の考えに同意して香山博士のことを調べていくと、阿郷も高嶋も博士親子と同時期に蒙古に滞在していることがわかった。2人とも「大東亜建設の曙」という映画のロケ隊の関係者だったのだ。
さらに「大東亜建設の曙」のカメラマンだった清田が地下鉄の通風孔に転落死し、主演男優の夏川が東京で死亡していることもわかった。
清田と夏川の死は事故として処理されていたが、「大東亜建設の曙」のロケが行われた蒙古に謎を解く鍵が存在するように思われた。
そして今度は「大東亜建設の曙」の主演女優浦屋敷ふき子が映画の撮影中に殺されてしまう。ふき子は敵手から逃げてセットのバンガローに駆け込む役回りであったが、駆け込んだバンガローからシナリオにはない悲鳴が聞こえたのだ。
皆が駆けつけるとバンガローの中では喉首に矢を射込まれてふき子が絶命していた。セットとはいえバンガローは四周を囲まれ、衆人環視であった。
さすがに天井は吹き抜けであったが、そこから矢を射ても喉に射込むことはまず不可能で、一種の密室殺人であった。いったい「大東亜建設の曙」のロケ隊には何があったのだろうか、そして香山博士とは何者なのか…
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