時の密室

明治9年大阪川口外国人居留地、不平等条約の結果、治外法権が認められたその居留地は安治川と木津川に挟まれ砲弾型をしていた。
お雇い外国人の一人エッセルは、福井への出張を終えて居留地へ戻ってきた。ところが鉄道駅に着くと暴漢に襲われて目隠しをされ、馬車に押し込まれてしまった。
馬車から降ろされて建物内に連れ込まれ、そこで目隠しをはずされると目の前にはベームラーという悪徳外国人の惨殺死体があった。そこで再び後頭部を殴打されたエッセルは気を失った。
次にエッセルが気がついた時、周囲は火の海であった。消防隊に何とか助けられたが、また気絶してしまう。のちに病院で聞いたところ、エッセルは居留地の中にあるベームラー商会から助け出されたのだという。
ところが不思議なことにベームラー商会からは肝心なベームラーの死体は発見されなかった。居留地内の事件ということでそのままウヤムヤになってしまったが…

時は移り現代の大阪。弁護士森江春策は元機動隊員だったという老人の弁護を引き受ける。老人は学園紛争時、機動隊員として府下の商都大学で学生と対峙し、そのときに4人の学生に袋叩きにあい半身が不自由となった。
その後警察もやめ、ゴルフ場で雑役をしていた。そのゴルフ場に昔老人を袋叩きにした3人の学生がプレーに来たとき、思わずその3人に襲い掛かり、その事件がもとでゴルフ場を解雇された。
その学生であった一人、現在は消費者金融の社長をしている宇堂祥吉という男を夜道で襲ったというのだ。老人によれば駅から宇堂の跡をつけたのは事実だが、目の前で宇堂が突然透明人間に襲われた、怖くなって逃げたという。
宇堂はネクタイで首を絞められて殺されたが、そのとき2人が争っているのはすぐ近くの住宅の2階の受験生に目撃されていた。宇堂を襲った相手が着ていたのは茶色の上着、老人がその夜着ていたのも茶色の上着。ということで老人は逮捕され、その日の当番弁護士であった森江が呼ばれたのだった。
森江は話を聞いて老人の無実を信じて弁護にあたることにした。宇堂とその仲間を調べるうちに、25年前に起きた安治川河底トンネルでの不思議な事件を知る。
老人を襲った学生の一人遠見高明が深夜の河底トンネル内で殺されていたのだ。容疑者と考えられたのは宇堂をはじめ学生達だったが、その全てにはアリバイがあった。
森江には、その事件が明治9年に起きたエッセル氏の不思議と題された事件と共通しているような気がしてきた…

芦辺氏らしい重層化した謎、明治9年の河畔の密室、昭和45年の河底の密室、現代の路上の密室、さらに水上、街角、祝祭と不思議な状況での事件が続く…
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