暗い宿

火村とアリスがさまざまな宿で起こった事件に挑む。
暗い宿
奈良県大塔村に鉄道の廃線跡を辿る小旅行に出かけた有栖川有栖は、途中で体調を崩し、なんとか大塔村の集落に入った。熱を出した有栖は、民宿の看板を見つけ声をかけたが、そこにいた女主人に宿泊を断られる。すでに1年も前に宿は廃業し、この旅館も人手に渡り、明日は業者が入って取り壊しが始まるというのだ。そのために最後の掃除と点検をしているのだという。
そこを何とかと頼み込んだ有栖は、女主人の好意もあって一晩だけ泊めてもらえることになった。もちろん風呂も食事もなく、煎餅布団にくるまれるだけだが、女主人は少し離れた自宅からお茶とおにぎりをサービスしてくれた。女主人が用意してくれた風邪薬を飲んで、早々に寝入った有栖だったが、夜中にふと目覚め、階下の部屋で物音がするのを聞いた。
不審に思って起き上がり窓から外を見ると、野球帽に鞄を持った男が遠ざかって行くのが見えた。その夜はそれで済んだが、一週間後に新聞の片隅に有栖の泊まった民宿の跡から、白骨が出てきたとの記事が掲載された。しかもその白骨は、明らかに他殺死体のものだったという。するとあの夜の物音は、白骨と関係があるのだろうか。有栖は火村とともに大塔村に向かった。

ホテル・ラフレシア
石垣島にあるリゾートホテル・ラフレシアで犯人当てミステリゲームのイベントが開かれた。顎足つきで、編集者の片桐から誘われた有栖と火村は、石垣島までやって来た。有栖は片桐とともに主催者側にアドバイスや感想を述べる立場で、ゲームに参加はするが賞はもらえなかった。火村は片桐からの完全な招待で、ゲームに参加する義務もなかった。
火村は火村で休養と論文書きに来たのが目的で、せっかくのリゾートなのにホテルの部屋から一歩も出なかった。さてゲームが始まったものの、有栖の方はある程度まで謎を解いてしまい、余裕の行動で夜の散歩に海岸に出てみた。そこで火村と寺坂夫妻に出会った。なにかを飲んでグロッキーになった寺坂夫人を、夫の寺坂崇夫と火村が抱えていたのだ。夫人の飲んだものは酒ではなく睡眠薬らしい。取りあえず夫人を部屋に寝かせたあと、火村はある疑念を持って寺坂に質問を始めた…

異形の客
猛田温泉の中濃屋旅館に現れた客は、顔を包帯でグルグル巻きにし、サングラスとマスクをかけ手袋をはめた、まさに異形の男だった。離れの部屋に案内されても、手袋やマスクも取らず部屋にこもり、大浴場に入ることもなかった。予約は2泊で、2日目も朝夕にそれぞれ30分ほど散歩に出ただけで、あとは部屋のこもりきりだった。
そして3日目の朝、仲居が食事を持っていくと、離れで男が殺されていた。浴衣の紐で首を絞められていたのだった。その男は見たこともない男であったが、運転免許証から相羽徳明という学生と判明した。そして異形の男は姿を消していた。ちょうどそのころ、シャングリラ十字軍という過激新興宗教団体がテロ事件を起こし、その首謀者3名の行方が知れなかった。
異形の男はシャングリラ十字軍と関係があるのだろうか。一方被害者の相羽は、数か月前から引き籠り状態でほとんど外出しなかったという。食事もコンビニで調達し、そのコンビニに行く時は夜でもサングラスをかけマスクをしていたという。ひょっとしたら相羽もシャングリラ十字軍と関係があるのかも、との噂もあったらしい。たまたま中濃屋旅館に滞在していた有栖は火村を呼び寄せ、事件の捜査を始めた。

201号室の災厄
火村は東京での学会のあと有栖と別れ、高級ホテルであるダイナスティーホテルにチェックインした。火村が普段泊まれるようなホテルではないが、知人から優待券を譲り受け、安い値段で泊まれたのだ。火村は思い切って高級ホテルの夜を満喫するためにバーで飲み、自室の301号室に戻った。
ところが酔っていたのか降りる階を間違え、201号室に入ろうとした。その201号室の前には大男の外人がいて、部屋が違うと火村に喚いた、火村も気づいて謝り、その場を去ろうと歩きかけたが、その外人がロックスターでコンサートに来日中のミルトン・ハースであることに気付く。
振り返った火村は、そこに大変なものを見てしまった。ミルトン・ハースが開けかけた201号室のドアの先には、口を開けた女性が横たわっていた。明らかに死んでいた。その瞬間、ミルトン・ハースが火村にとびかかり、201号室の中に叩き込んだのだった。


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