女王国の城

英都大学推理小説研究会部長江神二郎が突然失踪した。下宿の部屋を調べると、長野と岐阜の県境に近い村である神倉に行ったらしい。かつては寒村だった神倉は、今や人類協会総本部がある宗教都市と化していた。この村出身の会祖野上御影が宇宙から降臨したペリパリと洞窟で出会ったことが人類協会のルーツだった。
御影は最初神倉の村で人々にお告げをしていたが、それがどんどん評判になり、わずか十数年で巨大な宗教団体に成長した。それが人類協会だった。しかし人類協会はいかがわしい団体とは違い、トラブルがほとんどなく、狂信的なカルト集団でもなかった。だから村人たちとの関係も良好だった。
今では人類協会のおかげで村は発展し、なくてはならむ存在であり、村の9割が人類協会の信者だった。会の代表は御影からその娘の季子、さらには養女の公子に変わっていた。公子はまだ21歳で、美少女といえるその容貌は世間でも注目されていた。公子みたさに入会する信者もいるほどだった。

江神部長の神倉行きを知った部員のアリスや有馬マリア、望月、織田の面々はとるものもとりあえずレンタカーで神倉へ向かった。村で唯一の旅館に泊まり、巨大でユニークな総本部に向かった。応対にあたった信者はソフトだった。そして江神も滞在しているという。だが会わせてはくれなかった。瞑想中で3日後にならないと会えないし、瞑想中は口もきけないという。体よく追い払われたのだった。
だがアリスたちにはどうしようもない。セキュリティを盾に取ったガードが固すぎるのだ。仕方なく旅館に戻り待つことにした。旅館にはほかに2人の人物が滞在していた。九州から来た荒木という男と、元警官で神倉に駐在していた椿だった。荒木はUFOマニアであった。神倉はUFOの目撃や遭遇で有名な地でもあった。
一方、椿はこの地で十数年前に起きた未解決の殺人事件の捜査に来ていた。その事件は村出身のやくざ者が東京でトラブルを起こし、村に逃げ帰り殺されたというものだった。現場は元木工所だった小屋で、出入口は内側から閂が掛けられ窓申し側から施錠された密室だった。そこで拳銃でやくざ者が撃ち殺されていたのだ。
凶器の拳銃は現場になく、未だに見つかっていなかった。さらに東京からやくざ者を追いかけてきたらしい怪しい男が目撃されながら、事件直後から行方不明になっていた。その事件の第一発見者が当時駐在だった椿だったのだ。結局事件は迷宮入りしたが、椿は諦めきれず、退職後も時々神倉に戻っては捜査と称して歩き回るのだった。

夕食時にアリスたちは椿から密室殺人の話を聞き、そのまま床についた。翌朝人類協会の本部から電話があった。江神と会えるように手配したというのだ。しかも希望すれば内部も見学できるという。昨日とは打って変わった態度だった。何があったのだろうか、といぶかりながらもアリスたちは本部に向かった。
本部ではVIP扱いで、江神とも会えたが、江神は人類協会を訪れた目的をなぜかはぐらかす。だからといって何かの調査や事件絡みでもなさそうだった。本部ではVIP専用の部屋を与えられて歓待されているというのだ。いったい何がどうなっているのだろうか、アリスたちには全く分からなかった。
もやもやした感じでいったん本部を出たアリスたちは、夜再び本部を訪れた。夕食に招待されたのだ。さらにその後、ぺリパリが降臨した洞窟を見学した。単なる洞窟は今や建物と取り込まれ、聖洞と呼ばれる協会内で最も重要な聖地だった。ぺリパリの再びの降臨に備えて、洞窟は信者によって24時間監視され、ビデオにとられていた。
その聖地で殺人が起きたのだ。監視にあたっていた信者が、荷造り用の紐で首を絞められて殺されたのだ。そしてビデオテープが持ち去られていた。ところがここから協会の態度がおかしくなる。協会幹部が警察への連絡を拒否し、そのうえ死体を移動した。さらに幹部は内部で捜査をするから2日間だけ待ってくれと懇願し、アリスたちを体よく軟禁してしまったのだ。
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