長い廊下がある家

火村とアリスがさまざまな事件に挑む。
長い廊下がある家
京都府の廃村にある不思議な家に迷い込んだのは英都大の学生日比野浩光。日比野は卒論のために廃村や限界集落を訪ねていたが、途中で道に迷った挙句、夜になって民家の明かりを頼りにたどり着いたのだった。
廃村のその家に明かりがともっていたのは、オカルト系雑誌の取材のために3人の男女がいたためで、持ち主の許可を得ているという。ここはネットでもそれなりに話題の霊スポットだというのだ。もうひとり遅れてメンバーが来て、本格的な取材を開始するのだといい、彼らは迷い込んだ日比野を温かく迎えてくれた。
この家は建設会社の社長が建てたもので、本宅と別邸があるという。どちらも間取りは同じで対になっていて、その2つの建物の間を地下トンネルが結んでいるらしい。日比野もメンバーとともに地下トンネルを見学した。
そのトンネルは全長130mほどで、中央にスイング式の観音開きのドアがある。その通路に霊がいるのだという。その後、日比野は見ていないが遅れていたメンバーが来て、すぐに3人とトラブルになり怒って帰ってしまった。
取材にならないので日比野を入れて4人で飲み、いつしか皆寝入ってしまった。翌朝目が覚め再びトンネルに入ると、扉の所にナイフを刺された死体があった。遅れてきて怒って帰ったメンバーだった。
そして状況が不可解だった。扉には両側から閂がかかるのだが、死体は扉の西側に寄りかかり、東西両側の扉には閂が掛けられていた。一方、日比野を含む4人がずっといたのは東側の家だったし、長時間中座をした人物はいない。
死亡推定時刻からいって皆が東側に家にいたときに殺人が起きたのは動かない、。犯人は日比野以外の3人だと思われるが、すると犯人は西側に回って地下に入り殺人を行ったのか、または東側から地下に入り殺人を犯したあとで西側の閂を掛けたのか…
アリバイを認めれば密室事件になり、密室を否定すればアリバイを破らなければならないという奇妙な事件だった。

雪と金婚式
田所雄二、安曇夫妻は金婚式を水入らずで祝っていた。最初は外食も考えたが、安曇の希望で家でささやかに仕出しを取り、海外在住の子供や孫たちからのお祝いを兼ねたビデオを見て過ごした。ふと外を見ると、50年前同様に雪が降ってきて、雰囲気は盛り上がった。
翌朝、田所家の敷地内にある離れで死体が見つかった。安曇の妹婿重森の絞殺死体だった。重森は詐欺に近い仕事に手を染め、逮捕されたが不起訴となった。すでに安曇の妹は死んでいたために血縁ではないのだが、信用も名誉も失って安曇を頼って来て、ちょうど空いていた離れに転がり込んだのだ。
重森は顔を合わせれば殊勝な態度を示すが、働こうとせず、パチンコに入り浸っていた。田所夫妻にとっては、全くの厄介者であったのだが、その日もどこかに出かけたようだが、いつ帰ってきたのかもわからなかった。
唯一、積もった雪に重森が門から離れに向かった足跡だけが残されていた。そういう重森だから、恨みを買っている人物もいて、容疑者候補として2人の名があがった。2人ともアリバイは完全ではないが、雪の降りやんだ時刻と解剖所見から、2人ともに時間的に重森を殺せなかったことがわかった。

天空の眼
死者の名は富士野研介、22歳の学生だった。姫路市郊外の人里離れたところにある、金満家の別邸の屋上から裏の崖に落ちて死んだ。屋上の手すりの一部が損壊しており、そこから落ちたのだが、その損壊部分は自然に朽ちたのではなく人為的になされた痕跡があった。
その別邸はここ数年使われることがなく、誰も出入りしていなかった。富士野は持主一族との接点は何もなく、建物近くの木に登って、屋上に不法侵入したらしい。したがって手すりの工作も、誰がいつ何の目的で施したのかもわからなかった。
一方そのころミステリ作家有栖川有栖は、マンションの隣人から心霊写真に関する相談を受けていた。隣人の友人が青森に行ったときに、何気なく自撮した写真が、心霊写真らしいと騒がれているのだ。

ロジカル・デスゲーム
犯罪学者火村英生は、千舟という男に騙されてある部屋に連れ込まれ、そこで死のゲームを強要された。赤、青、緑の三色のグラスに火村が均等にオレンジジュースを入れる。その後、火村に背中を向かせ、千舟がトリカブトをグラスの一つに入れる。
そのグラスのひとつを火村が選ぶ。残る2つのグラスのうち、毒の入っていないひとつを千舟が飲み干し排除する。そこでもう1回、火村は選びなおすことができる。最終的に選ぶグラスが決まったら、残るグラスを千舟が取り、同時に飲み干す。
つまりトリカブト入りのグラスをめぐる、死を賭けたゲームだった。千舟は拳銃を出してゲームを強要した。火村はオレンジジュースを均等に注ぎ、千舟はトリカブトを入れた。そして火村が選んだのは赤…


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