絶叫城殺人事件

火村とアリスが奇妙な影を落とす6つの館に挑む。
黒鳥亭殺人事件
推理作家有栖川有栖と犯罪社会学者火村英生の学生時代の友人で画家の天農仁は、叔母から丹後半島の奥地にある黒鳥亭と名付けられた屋敷を相続した。天農はその不便な屋敷に5歳の娘真樹と一緒に住んでいた。
黒鳥亭は外壁が全て黒く塗られていたことから名付けられたもので、叔母の死後にいったん大手都市銀行の支店長をしていた並木将人が別荘として購入した。
ところが2年ほど前に将人が妻の峰子と滞在したときに、夫婦喧嘩から将人が峰子を刺し殺し、自分も断崖から海に飛び込むという事件が起きた。原因は将人の浮気だったが、将人の死体は上がらなかった。
その将人の死体が一週間前に黒鳥亭の使われていない古井戸から見つかったのだ。古井戸の蓋をしようと近づいた天農が懐中電灯で照らして偶然発見したのだ。
将人の死体には頭を殴られた跡があり、検死の結果これが死因だった。死後約一週間と見られていた。すると将人は2年前に自殺したのではなく、自殺を偽装してどこかに隠れていたが、何らかの理由で黒鳥亭に舞い戻り何者かに殺されたということになるのだが…

壺中庵殺人事件
壺中庵とは、土地成金の壺内刀麻が屋敷の地下室に付けた名前だった。刀麻は土地を売った金で京都市内に屋敷を建て、地下室を造って壺中庵と名付け、そこにこもるのが常だった。
地下にある壺中庵へは刎ね上げ式の扉を開き、ほぼ垂直になった梯子を降りる。刎ね上げ式の扉には内側から閂ができるようになっており、庵の中には窓ひとつなかった。
ある朝、家政婦がいつものように庵に向って声をかけたが、どうしたことか返事がない。そこで隣に住む刀麻の息子の宗也を呼びに行った。宗也は刀麻と犬猿の中で別居していたのだ。
だがことがことだから宗也も駆けつけた。するとちょうど刀麻の碁敵の熊沢房男が訪ねてきたところだった。3人で壺中庵の刎ね上げ式扉の所に行き、代わる代わる引っ張って見たが、中から閂がかけられているらしく開かない。
そこでバールを持ってきて扉を壊した。開いた裂け目から宗也が手を入れて閂を外す。閂が落ちる音がし扉が開いた。中には刀麻の首吊り死体がぶら下がっていた。しかもその死体の頭には壺が被せてあった。

月宮殿殺人事件
峠近くの河原にホームレスが建てた巨大な家があった。夜中に車で通りかかったアリスは、月明かりに照らされたその家を見たときに思わず車を停め、河原に降りて見とれてしまった。
後ろから声をかけられた。ホームレスで浜と名乗った。浜によれば、その巨大な家は5年かかって高岡というホームレスが自力で建てたものだった。その名も月宮殿というそうで、この付近では知らないものはいなかった。
アリスはぜひ月宮殿の主の高岡とも話をしたかったが、人嫌いで偏屈な高岡は門前払いを食わせた。浜によれば月宮殿の中は空っぽで、あまりに殺風景なので、壁にペタペタと無数のポスターが貼られているだけだという。
それから1年、再びアリスは火村とともに同じ場所を通りかかった。する月宮殿はなくなっていて警官が多数うろついていた。河原に降りてみると浜がいて、月宮殿は昨夜放火され、中にいた高岡は焼け死んだという…

雪華楼殺人事件
鞍馬山のふところ深く建つ鉄筋コンクリート7階建ての細長い建物は、雪華楼と呼ばれていた。旅館として建設されたが、開発業者が倒産したために未完成のまま廃屋となっていた。
そこには3人の男女が住み着いていた。もちろん不法に住み着いたもので、付近の住民から警察に苦情が持ち込まれていた。住人の3人は家でした若い男女と中年の男であった。
ドヤ街にいた中年男が先に住みつき、それから暫くして2人の若者がやって来た。中年男と若いカップルは別の階で生活し、普段は没交渉だったがすれ違えば挨拶したりすることはあった。
カップルの方はシンナーや覚せい剤を使い、自堕落な生活をしていたのだが、ある夜男の方が屋上から飛び降り、それを見ていた女が悲鳴を挙げた。その悲鳴を聞いた近所の住民が110番し警官が駆け付けた。
駆けつけた警官が見たものは、雪の積もった屋上に残る一つの足跡と、地上の雪の上にバンザイした格好で横たわり息絶えた男の死体だった。往生の足跡は飛び降りた男自身もので、死体の周囲には足跡はなかった。
家でして廃屋で女と暮らしていた若い男の飛び降り自殺、というふうに見えたが、問題がひとつあった。男の死因が後頭部を殴られたことによる殴殺だったのだ。

紅雨荘殺人事件
元化粧品会社社長で資産家の飯島粧子は、大阪高槻と箕面に家を2軒持っていた。どちらも紅雨荘といい、粧子は普段は閑静な箕面で一人暮らしをしていた。
一方高槻の邸は広大で、映画のロケにも使われて有名だった。高槻の方の紅雨荘には粧子の3人の子供が住んでいた。子供は3人とも独身で、33歳の長女は家事全般を見ており、32歳の長男は失業中、28歳の次男はホストだった。
子供たちはときどき箕面の家に母親の様子を窺いに行っていたが、ある日のこと長男が訪ねてみると粧子は首を吊って死んでいた。だが死体を移動した形跡があり、死体の様子も不自然で事件は殺人として捜査が始まった。
警察からの要請で火村とアリスも現場に向った。粧子には係累が少なく、3人の子供のほかには従妹がいるだけだった。3人の子供にはアリバイが成立し、残るは従妹だけだったが、この従妹と粧子は犬猿の仲のうえ、従妹のアリバイもあやふやであった。

絶叫城殺人事件
ホラー系のアドヴェンチャーゲーム絶叫城を模倣したと思われる、連続通り魔事件が発生した。いずれも夜中に一人で歩いている女性を狙い、背中からナイフで刺し殺して現場から逃走していた。
現場には凶器はなく、被害者の口の中にはゲームのオープニングを真似た文字を書いた紙が押しこまれていた。3人の被害者が出たが犯人の影も形もつかめておらず、警察は批難され、市民は脅かされた。
そして豪雨の夜、第四の事件が起きた。被害者は即死ではなかったようで、自力で警察に携帯電話をかけたが、その通話中に力尽きた。だがすぐに緊急配備が敷かれたにもかかわらず、犯人の行方も手掛かりもまったくつかめなかった。
さらに前の3つの事件と違うところは、被害者の背中にナイフが刺さったままだったのと、口中の紙に書かれたGAME OVERの文字だった。


島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -