モロッコ水晶の謎

国名シリーズの第7作目で、中篇3作品と掌篇1作品。
助教授の身代金
かつてはテレビドラマの主役を演じたこともある俳優志摩征夫は、人気が頂点に達したときにイメージキャラクターを勤めた企業の不祥事とその後に起こした交通事故により忘れらた存在となっていた。
妻の恵理香とも別居したが、それは精神的な面で一人になりたいからであり、夫婦の仲が冷え込んだわけではなかった。お互いに連絡は取り合っていたし、恵理香は夫の生活の面倒もみていた。
そんなときに起きたのが志摩征夫の誘拐事件であった。恵理香と恵理香の父親井関申太郎のところに相次いで誘拐犯から電話があり、渋る恵理香を申太郎が説得し警察に届け出た。
やがて誘拐犯が郵便で接触してきた。身代金3千万を用意して、電車の窓から赤い目印を目標に投げ落とせという、なんとも杜撰な指示だった。恵理香は電車に乗るが、目印は見つからず身代金の受け渡しには失敗。
その後は犯人から接触はなかったが、あまり間隔を経ずして廃墟となったモーテルから征夫の死体が見つかった。解剖の結果、征夫は身代金要求の電話の前に殺されていたことが判明した。
最初の恵理香への電話で、恵理香の要求に誘拐犯が応じて征夫と電話でしゃべったことは間違いないと恵理香は主張するのだが…が来て、優嗣は病院に運ばれる途中で息を引き取った。「やまもと」と壁のYの地文字が優嗣のダイイングメッセージになった。

ABCキラー
最初の犠牲者浅倉一輝は尼崎市安遠町の路上で至近距離から拳銃で撃たれて殺された。その2時間後、豊中市別院町の自宅前で番藤ロミが同じ拳銃で撃ち殺された。
翌日、警察に「アルファベットは26文字、手元の弾丸は26発…まずはA、そしてB。いったい何人イケるだろう」と書かれた手紙が送りつけられた。
火村教授とミステリ作家有栖川アリスはクリスティのABC殺人事件を思い起こす。そして翌々日京都府八幡市千曲町で、やはり同じ拳銃で撃ち殺されたのは茶谷滋也という男だった。

推理合戦
朝井小夜子と有栖、それに火村の会話による推理合戦。朝井小夜子が雑誌にはじめた新連載ミステリの行方は…

モロッコ水晶の謎
羽田野書林社長の羽田野弘資の誕生パーティの席上で殺人事件が起きた。弘資の娘の千菜の恋人で、羽田野書林の若きホープと目される社員阿江泉が殺されたのだ。
阿江が乾杯の後に飲んだオレンジジュースに除草剤が仕込まれていたのだ。即死だった。出席者は10人ほどで、ジュースを飲んだのは3人だけ。未成年の千菜とその弟の弘俊、それに下戸の阿江だった。
グラスは不作為に選ばれ、ほかのグラスにはジュースのものかどうかを問わず毒物は混入されておらず、瓶や食物、皿なども同様だった。毒は阿江のグラスだけに直接混入されたのだ。
現場にいた10人の中に、ゲストとして呼ばれたアリスもいた。アリスは乾杯の際に誰も阿江のグラスに毒を入れることは不可能であったと証言し、これはほかの出席者も同じだった。
事件の謎は、いつ誰がどうやって阿江のグラスに毒を入れて、目的通り阿江を死に至らしめたかということだった。


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