スイス時計の謎

国名シリーズの第6作目で、ダイイングメッセージ、首のない死体、密室、フーダニットと正調本格4作品。
あるYの悲劇
ロックバンド「ユメノ・ドグラ・マグロ」のギタリスト山元優嗣が、マンションの自室で殺された。凶器は部屋にあったエレキギター。 近くに住む幼馴染であり、また同じバンドのメンバーである沢口彩花が差し入れを持って部屋に来たが、体調を崩して部屋にいるはずの優嗣の応答がない。 玄関には鍵が掛かっていなかったので部屋に入ると、瀕死の優嗣が倒れていた。まだ息があったので助け起こして救急車を呼んだ。 救急車を待つ間に犯人の名を問う彩花に優嗣は「やまもと」と囁いた。さらに壁に自分の血でYと書き、そこで力尽きて意識を失った。 その直後に救急車が来て、優嗣は病院に運ばれる途中で息を引き取った。「やまもと」と壁のYの地文字が優嗣のダイイングメッセージになった。

女彫刻家の首
女彫刻家高見沢花炎が、京都府下樟葉にあるアトリエで殺されたいた。花炎は首を切断され、代わりに花炎が制作していた彫刻の一部であるヴィーナスの首が置かれ、花炎の首はどこかに持ち出されていた。
発見したのは夫の高見沢一馬で、前日の夜にアトリエにいるはずの花炎と連絡がとれず、翌朝取るものも取り敢えずアトリエに駆け付けてみると、花炎が首を切断された死体になっていたとのだという。
花炎は前々日から前日にかけて東京に遊びに行っており、その後いったん自宅に戻り、前日2時頃にタクシーでアトリエに向かったらしい。花炎の自宅にはアトリエに向かうとのメモがあり、花炎らしい女性を乗せたタクシーも見つかった。
一馬と花炎は、アトリエの隣人で偏屈で口うるさい水城とのあいだでトラブルになっており、一馬は水城が犯人であると決め付け、一方水城の方は一馬と花炎の間は喧嘩が絶えず、一馬こそ女房殺しの犯人に違いないと主張した。

シャイロックの密室
常石は悪徳高利貸しの佐井六助に弟の敦朗とその嫁の夏海を殺された。殺されたというのは直接ではなく、株の投資に失敗した夏海が佐井から借金をし、その取り立てに悩んで夏海が自殺し、そのショックで自失した敦朗がボンヤリ道を歩いていて交通事故死したというものだった。
だが、常石は弟夫婦の死の責任を佐井に求めた。そして佐井を殺すことにした。拳銃を入手し佐井に接近し、やがては佐井の家に招かれるほどになり、そして一人暮らしの佐井を書斎で撃ち殺した。
直後に佐井の手に拳銃を握らせて持参した枕に一発撃ち込み、佐井の手から硝煙反応が出るように細工し、同時に拳銃に佐井の指紋をつけた。
その後、常石は部屋の閂をある方法で外側からかけて書斎を密室に仕立て上げた。これで佐井は拳銃で自殺したことになるはずだったが…

スイス時計の謎
真田山高校社会思想研究会とは優秀な生徒6人が集まって結成した部であったが、その実態はないに等しかった。部の予算を獲得するのが唯一の目的のようなもので、活動は放課後に集まっていろいろなことを語り合うだけであった。とはいえ、そこはひと癖ある秀才たちのことで、大激論になることもよくあった。
優秀な6人は卒業後、それぞれの進路を歩み、ひとかどの人物になったものが多かった。その6人はリユニオンと称して、2年に一度同窓会を持っていた。
そして今年の同窓会が六甲で開かれた日、6人のうちのひとり村越啓が殺された。村越も当然リユニオンに出席の予定であったが、出発直前に自身が持つ貸しビルの事務所で何者かに殺されたのだった。
村越はこの貸しビルに住んでいて、六甲へ出発直前に訪ねてきた犯人と格闘になったらしい。翌日に出勤してきた秘書によって、その死体は発見された。
犯人の遺留品は皆無だったが、どうも犯人は犯行後に掃除機を使った形跡があった。さらに村越の腕時計がなくなっていた。村越のなくなった腕時計はスイス製のディプテロスという特殊なもので、社会思想研究会の6人全員がメンバーシップとしてディプテロスを持ち、リユニオンにはディプテロスを嵌めていくのが原則であった。
なぜ犯人は村越の時計を奪い、掃除機を使って何をしようとしたのだろうか?この謎に火村助教授とともに、真田山高校OBで社会思想研究会の6人と同窓でもある有栖川有栖が挑む…


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