山伏地蔵坊の放浪

土曜日の夜、スナック「えいぷりる」には常連たちが、山伏の地蔵坊先生の体験した殺人譚を聞きにやってくる。
ローカル線とシンデレラ
JRの駅秋野と鉱山町銅野を結ぶローカル線。2両編成のディーゼルカーが2台、1日6往復している。単線なので上下の列車は途中の中野という駅で交換する。
地蔵坊は中野の1つ秋野よりの駅から秋野行きの最終列車に乗った。途中、置石があったとかで列車は10分ほど遅れてやってきた。
いつもは乗客はほとんどいない最終列車だが、地蔵坊が乗ったときは1両目に銅野出身のスターとマネージャー、銅野の町長、鉄道会社の社長、地元の青年団など多くの人が乗っていた。
列車が終点の秋野に着くと、そこでは騒ぎが持ち上がっていた。地蔵坊が乗った列車と中野で交換した下り列車の車内で殺人事件が発生、犯人は途中で列車を飛び降りたというのだ。
殺人のあった下り最終列車に乗ったのは始発の秋野から乗った被害者と、中野から乗った犯人の2人だけ。地蔵坊はこの話に疑問を感じて…

仮装パーティーの館
地蔵坊が野宿覚悟で山道を歩いていると、前方にポツンと洋館が建っていて窓には煌々と灯りがともっていた。
洋館は成田金蔵という金融業者の持ち物で、この夜は金蔵の誕生祝の仮装パーティが行われており、地蔵坊は仮装と間違われてパーティーに引き込まれてしまう。
狼男、パンダ、お岩、ダースベンダー、バットマン、月光仮面、力士と仮装はいろいろで主賓の成田金蔵も鎧兜に身を固めていた。
そして酔った金蔵が部屋に引き上げ、やがてお開きという頃バットマンの仮装をした男が金蔵の部屋に入っていくと、そこには絞殺された金蔵と頭を殴られたダースベンダーの仮装の男の2つの死体が…

崖の教祖
狐付きを落とした地蔵坊に、天空の光という新興宗教に凝って教団本部から帰ってこない娘を救出してくれとの依頼があった。天空の光教の本部は鄙びた温泉宿の奥にあり、奇妙な神殿と鳥居、そしてその奥の洞窟を修行の場としていた。
洞窟の反対側は崖の途中に口を開けており、正面から入ろうとすると教団の人間に見咎められ、裏からは急峻な崖に阻まれて簡単には入れない。
その洞窟内で教祖が勤行中、何物かが仕掛けたダイナマイトが爆発して、教祖の体はバラバラに吹き飛ばされた。現場は勤行の場で護摩壇と額以外は何もなく、教団の人間も勤行前に掃除した時にそれは確認している。
いったいどうやってダイナマイトを持ち込んだのだろう…

毒の晩餐会
北陸のある町で修行仲間を訪ねた地蔵坊は、夕食に招待される。そこで一人の青年が生ビールを一口のみ、その直後にジョッキに煙草の灰を落としてしまったと言って代えを要求した。
仏頂面のお手伝いが、代わりのビールを持ってくる。ところが、それを一口飲んだ青年は突然苦しみだして絶命してしまった。ジョッキからは青酸カリが検出された。
当然お手伝いが疑われたが、お手伝いは泣きながら、煙草の灰を掬い取っただけでジョッキは代えなかったと証言し、それがビールの残量などから裏付けられた。すると、誰がいつ青年のジョッキに青酸カリを入れたのか…

死ぬ時はひとり
ひょんなことから足を洗ったヤクザの経営する小さなスナックで酒を飲むことになった地蔵坊。はやらない店で、店内には地蔵坊と経営者の元ヤクザ、客の元子分、それにバーテンが2人の計5人しかいなかった。
やがて経営者の元ヤクザが電話をかけに店から出て、裏にある事務所に入った。暫くして事務所から銃声がした。地蔵坊と元子分が駆けつけると、事務所には元ヤクザの射殺死体と拳銃が一丁。だが警察の調べで元ヤクザを殺した弾丸は、落ちていた拳銃から発射された物ではなかった。
すると拳銃を持った犯人は裏口から逃げたことになるが、当時裏口の先の道路は全て監視の目があったか通行不能だった。つまり犯人は煙のように消えうせてしまったのだ…

割れたガラス窓
地蔵坊が山道を歩いていると トリュフを捜す男に出合った。地蔵坊がトリュフ探しを手伝い、それを掘り当てると男は感謝して自分の住む家に案内した。
そこには近所の人間や男の友人達が来ていて、地蔵坊を交えて賑やかに話が弾む。やがて主人の男は部屋にこもり、他の人間は思い思いに過ごす。
そして主人の部屋からガラスの割れる音が聞こえた。居合わせた人間が駆けつけると、そこには殴殺された主人の死体が転がっていた。窓ガラスは、外から犯人が来たかのように一部が割られていたが…

天馬博士の昇天
発明家天馬博士の家は海際の道の脇から切り立った崖の上に建っていた。雪の積もった朝、天馬博士の死体が海際の道で見つかった。
天馬博士は崖のうえから落ちたらしく、崖上には雪の上に天馬博士の足跡がくっきりと残っていた。だが、その足跡は千鳥足以上に乱れていた。靴は天馬博士が履いていたものに間違いないいのだが、地蔵坊は乱れた足跡が気になって…


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