朱色の研究

2年前に南紀で起きた未解決の殺人事件を捜査して欲しい、というのが貴島朱美の願いだった。朱美は犯罪心理学者で英都大学で教鞭をとる火村英生のゼミ生で、火村のゼミを選んだのも南紀の事件の再捜査を火村に頼むのが目的であったという。
その南紀の事件は、砂浜で椅子にかけて本を読んでいた女が頭を強打されて殺され、その数時間後に砂浜の上の崖にあった石を投げられてさらに死体を損壊されたという事件だった。
警察の捜査ではおそらく石を投げたのは被害者が死んでいないと犯人が考えたからだろうということだったが、それにしても奇妙な行動だった。
火村はミステリ作家アリスとともにこの事件の再捜査をしようと考え、大阪市内のアリスの住むマンションに向かった。アリスの部屋から大阪市内の景色がよく見えたが、その中にひときわ目立つマンションがあった。
そのマンションはオランジェ夕陽丘といった。オランジェ夕陽丘は、その名のとおり大阪市内の中心部に近い夕陽丘にあったが、売出価格が極端に高くて入居している所帯が10所帯しかなく、世間では幽霊マンションと呼ばれていた。
アリスが住むマンションの部屋からも、オランジェ夕陽丘は10分程度の距離であった。そして火村がアリスの部屋に泊まった日の翌早朝のこと…

アリスの部屋に電話があり、火村とともにオランジェ夕陽丘の806号室に行けという。電話の相手は当然名乗らず、またオランジェ夕陽丘の806号室に何があるかも言わずに電話を切ってしまった。
アリスは火村を起こして、2人でオランジェ夕陽丘に向かうが、途中で中年の細身の男とすれ違った。オランジェ夕陽丘に着いたアリスと火村は806号室の浴室で死体となった男を見つける。
男の死体は山内陽平と言い、いくつか事業を起こしては常に失敗している人間だった。やがて容疑者として六十部四郎という男が浮かんだ。
六十部は死体が見つかった朝、オランジェ夕陽丘に向かうアリスたちと途中ですれ違った男に間違いはなかった。ところが六十部は806号室にいたことは認めたものの犯行は頑強に否認した。
六十部は過去の秘密をバラすとの脅迫状を受取り、それにはバラされたくなかったら深夜オランジェ夕陽丘に行き、そこにある指示書どおりに行動せよと書かれていた。
六十部は指示に従いオランジェ夕陽丘に行って、そこにあった指示書どおりに806号室で一晩過ごし、その帰りにアリスたちとすれ違ったというわけだった。
だが警察の追及に、六十部は過去の秘密のことは一切黙秘したし、806号室には死体はおろか人の気配もなかったと主張した。
アリスと火村は六十部が罠に嵌められたと考えて、六十部が906号室誘導され906号室で一晩過ごしたことを証明する。では六十部を罠に嵌めた真犯人は…

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