ダリの繭

サルバドール・ダリに心酔するジュエリー堂条社長堂条秀一は、ダリを真似たダリ髭と急成長した宝石チェーンの社長として有名であった。
ジュエリー堂条は秀一の父親堂条光が起業し、秀一の代に全国各地に支店を持つチェーン店として成長した。本社は大阪、秀一は市内にマンションを持つほか、神戸六甲に別宅を持っていた。
秀一は週末には別宅で過ごすことが多かった。別宅にはフロートカプセルというリラクゼーションマシンが据えられていた。
カプセルの中にはエポジウムという物質を水に溶かした液体が入っていて、そこに全裸になって浮かぶとストレスが解消するという代物で、アメリカで発明されたものであった。

秀一の死体は、そのフロートカプセルの中にあった。金曜の夕方、秀一は営業部長の湯川元雄、営業部員兼社長秘書役の鷲尾優子、広告代理店の吉住訓夫、デザイナーの長池伸介らと立続けに会い、その後マンションに寄って着替えた後、自分で
車を運転して六甲の別宅に向かった。
翌週の月曜日、秀一は夕方になっても出社しなかった。行方もわからなかった。副社長で秀一の異母弟でもある秀二が心配をし、秀二、湯川、鷲尾の3人で六甲の別宅に向かう。
別宅は明かりが消え、人がいる様子が無かった。秀二が鍵を開けて中に入るが、どこを探しても秀一の姿は無い。
帰りかけた時に鷲尾優子が噂のフロートカプセルをついでに見たいといい、秀二がカプセルの蓋を開くと、そこに全裸の秀一の死体があったのだった。
そして秀一の顔には自慢のダリ髭がなく、きれいに剃られていた。さらに脱衣駕籠には秀一の下着だけが入っていて、服の類は家中のどこからも出てこなかった。
秀一がこの週末六甲の別宅で過ごすことは、ジュエリー堂条の多くの人間が知っている。秀一を殺し、髭を剃り、フロートカプセルに入れたのはいったい誰なのか…
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