マジックミラー

琵琶湖の北東余呉湖畔の別荘で見つかった死体は、別荘の持ち主柚木新一の妻恵のものだった。消防署に不審者がいるとの通報があり、警察官が行ってみると首に電気コードを巻かれた恵の死体が転がっていたのだった。
検視の結果死亡推定時刻は午前10時30分ごろとされたが、不審者が殺したという線はほとんど消えた。
関係者は恵の妹ユカリ、夫の新一と夫の弟健一の3人に絞られた。新一、健一兄弟は一卵性双生児であり、誰が見ても瓜二つであった。
ユカリには確固としたアリバイがあり、新一と健一にもアリバイがあった。だが新一、健一のアリバイは出張に行っていたというもので、確固としたものではなかった。
新一、健一兄弟は古物商柚木堂を経営しており、兄新一が社長で彦根の本店に、弟健一は専務で大阪の支店に常駐していた。
新一は恵が殺された日の朝、彦根から米原に出てこだまで京都に、そこでひかりに乗り換えて博多に行っていた。彦根発が11時2分、米原発が11時26分、博多着が15時45分その足で取引先に行き、そこで恵の悲報を聞いた。乗換駅の米原で目撃者がおり、博多では新一の指紋のついた乗車券が回収されていた。

健一の方は大阪9時55分発の特急白鳥に乗り酒田に向かった。酒田着は18時49分で、こちらも取引先に行きそこで悲報を聞いた。
車中大阪発車直後、敦賀発車直後、福井発車直後、金沢手前、新潟停車中にそれぞれ車掌や車販の目撃証言がある。
警察は双子を利用した共犯ではないかと疑い、新一と健一が巧妙に入れ替わを演じたと考えたもののアリバイは破れず時間ばかりが経っていった。
ユカリとその知合いの推理作家でかつての恵の恋人空知雅也は、新一と健一の犯行に違いないと考えるが警察同様にアリバイの壁に突き当たる。
そうこうするうちに事件から8ヶ月がたち捜査本部も大幅に縮小されていた。そこで再び事件が起きた。余呉湖畔の別荘で頭と手首を切断された死体が見つかったのだ。
死体の特徴から新一か健一のどちらかのものであることは間違いないが、そのどちらかであるかは特定できなかった。そして双子のもう一方の片割れも行方がわからなかった。
警察では双子のどちらかがどちらかを殺して雲隠れしたと判断した。動機は恵の殺害後の保険金の分配を巡っての仲間割れと見たのだが…

あとがきで作者は、この作品は「鮎川哲也氏へのオマージュかもしれません」と書いている。アリバイものではあるものの、双子を使ってかなり捻ってあるので、かなり面白い作品になっている。作中にアリバイ講義があり。
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