うまや怪談

落語家寿笑亭福の助とその妻亮子が出会う落語がらみの事件簿第3弾。
ねずみととらとねこ
亮子の夫で実力派の二つ目寿笑亭福の助が、紅梅亭で行われる第1回の若手落語家競演会に出演することになった。福の助の所属する東京落語協会の松葉屋常吉会長の発案で、将来有望な若手5人が上がるコンクールだった。
競演会で優勝したり、芸を認められれば大きな実績となり、真打昇進にも影響があるかもしれない。ただ福の助は、あまり乗り気ではなく数合わせでの出場と自分を卑下していた。
その福の助が突然変わったのは、競演会のメンバーに兄弟子の福太夫が選ばれてからだった。本来の出場者に事故があり、急遽古株の福太夫に出番が回ったのだ。陰険な福大夫は一門の嫌われ者で、それが福の助の闘争心に火をつけたらしい。
競演会を目指して猛烈な稽古を始めた。そんなとき福の助を訪ねてきたのは弟弟子の福神漬。聞けば陰険な福太夫は、福の助に対して何か悪さを仕掛けようとしているらしい。福の助がかける演題はねずみ。いったい福太夫は何を考えているのだろうか。

うまや怪談
落語錬成会は崇教大学の池山大典教授が主催する落語会で、若手真打主体の会だった。池山教授は故人となった怪談噺の名手と言われた落語家の実の弟で、いくつもの落語会をプロデュースしたり、コンクールの審査員をやったりしている大物だった。
その錬成会に福の助が出演を依頼された。二つ目の身分では異例のことで、福の助の実力のほどがわかろうというものだった。ただこの会はネタ出しで、いったん出したネタの変更は一切認められなかった。
福の助が選んだ演題は厩火事。髪結いの亭主が、姉さん女房のことを本当に思っているかを、亭主が大切にしている骨董を壊すことで試そうとする噺だ。一方、福の助の妻亮子が勤める私立高校では奇妙な事件が起きていた。
女性教師の洗濯物がコインランドリーから盗まれ、その服のポケットに入っていたはずの特殊なカッターが1年後に学校に現れたのだ。それも根暗でストーカーでもやりかねないと陰口をたたかれている非常勤講師の持ち物としてだった。
さて、錬成会当日のこと。亮子の兄翔太の婚約者の両親が上京し、福の助の落語を聞くことになった。ところが厩火事では差し障りがあるという。しかし演目の変更はできず、そこで福の助はあることを思いついた。
そして同時に亮子の勤める学校で起きたカッター事件の謎を解くというのだ。やがて高座に上がった福の助がマクラをふり始めたが、それは何と怪談噺のものだった。

宮戸川四丁目
寄席で宮戸川を演じた福の助の高座を見た池山大典教授が楽屋を訪ねてきて、宮戸川自体は結構だが、あのサゲはなんとかならないものかとつぶやいた。そして馬春師匠が一度だけやったサゲがもう一度聞きたいというのだ。
馬春は福の助の最初の師匠で、病気で倒れて以来、千葉県館山で車いす生活をしている。新しい師匠についた福の助だが、月に一度は馬春師匠のもとに見舞いがてら通っていた。しかし福の助は馬春の宮戸川自体聞いたことはなかった。
そこで教授に馬春のサゲはどんなサゲだったのかと聞いても、教えてはくれない。そこで馬春のもとに出向き、直接聞くことにしたが、そんなとき馬春師匠のおかみさんが葬式のついでに福の助を訪ねてきた。
そしておかみさんが言うには、馬春師匠が怒っていて、福の助は出入り禁止だという。どうもうまや怪談事件を、馬春に相談せずに自分で解決してしまったのが気に食わないらしい。そこで福の助は一計を案じて馬春に詫びに行くことにした。


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