芝浜謎噺

落語家寿笑亭福の助とその妻亮子が出会う落語がらみの事件簿第2弾。
野ざらし死体遺棄事件
弟弟子寿々目家竹二郎との二人会で「野ざらし」を演じた福の助。終演後の打上げでも評判は上々で、落語通の呉服屋桔梗屋の主人も手放しの褒めよう。だがそのあと、初めて落語を聞くという桔梗者の娘婿で舞台俳優の荻原に、落語の底の浅さを指摘されて落ち込んだ。
荻原は落語のリアリティのなさ、演者の姿勢を指摘したのだった。それ以来、家にこもって悩む福の助。噺にも自信がなくなったようだ。一方そんな時に、福の助の妻亮子の方にも変な話が持ちかけられた。
落語嫌いで、亮子や福の助とはほとんど行き来もない伯父の弥太郎に呼び出されたのだ。弥太郎は出会い系サイトで知り会ったという若い娘を家に呼んだが、それを隣家の女に見られてしまった。
隣家の女は拝み屋をしていて、事あるごとに霊魂だの悪霊だの言い出す詮索好きな女で、近所の鼻つまみだった。その拝み屋女が弥太郎の行為を目撃して、攻めてきた。弥太郎は思わず、河原で見つけた骸骨を供養したら、その日に女が訪ねてきたと、落語の「野ざらし」そのままの嘘を拝み屋に言ってしまった。
拝み屋はそれなら骨を見せろと言い出し、弥太郎はどうにも逆らえなくなった。そこで弥太郎は人体標本の骨を河原に埋めてごまかす作戦を思い立ち、亮子にも一緒に行ってくれと頼んできたのだ。いつもなら福の助に助けを求める亮子だが、福の助は最悪の状況。仕方なく伯父弥太郎の言うがまま、早朝の河原に骨を捜しに行ったのだった。

芝浜謎噺
神田紅梅亭の売店に勤める船田美樹は、席亭の遠縁にあたる24歳の美人で、会社勤めを辞めて席亭の縁で働くようになった。その美樹に派手な30歳過ぎの客が一目惚れしてしまったらしく、夏のある日とうとう押し付けるようにして指輪のプレゼントを置いていってしまった。
突然のことで、すぐに席亭も客の男の跡を追いかけたが見失ってしまい、残されたのはいわれのない指輪だけ。忘れ物の扱いにして様子を見ることになり、指輪は金庫に納められたが、そのこと自体は楽屋の話題になった。
さて夏になると紅梅亭では、贔屓筋が大量のカルピスを差し入れてくれるので、楽屋ではお茶ではなくカルピスが出された。これは寄席関係者の間では有名で、紅梅亭名物にもなっていた。事件のあった日、亮子は席亭に呼ばれて楽屋で話をしながらカルピスを飲んでいた。
そこに高座を降りた松葉家常八が来て仲間に加わり、話題は指輪の話になった。常八は昔質屋に勤めていた関係で、多少目利きができるという。席亭はさっそく金庫から指輪をだし、それを見た常八はかなり高価な品だという。
一同驚いていると、客席から大きな音がした。煙も漂ってきた。楽屋一同舞台に上がると、舞台にいた漫才師の一人が舞台から落ち、客席では音と煙が出て客がパニックになっていた。あとでわかったことだが、誰かがねずみ花火を客席で点火したのだ。
すぐに騒ぎは収まり、幸い客にも怪我はなかった。舞台から落ちた漫才師も怪我ひとつないようだが、大事を取って病院に連れて行った。だが、楽屋では大変なことが起きていた。指輪がなくなっていたのだった。誰かが騒ぎに紛れて盗んだのでは、と緊張が走り、警察にも連絡したのだが、すぐに見つかった。
なんと常八に出されたカルピスのコップに入っていたのだ。知らずに常八は、指輪をカルピスごと飲み込んでしまったが…
一方、二つ目になったばかりの弟弟子亀吉から芝浜の稽古を頼まれた福の助。聞けば亀吉は故郷の独演会で芝浜を演じるのだという。しかも曰くのある家族で、意地でも演らなければならない状況だった。
そのことを知った福の助は、何とかしてやりたいのだが、人情話の大ネタだけに工夫がつかない。思い余って病気で引退した師匠の馬春に相談に行くことにした。その結果思いついた工夫、そしてそれが楽屋の指輪事件にも繋がるのだという。

試酒試
故郷の独演会で芝浜を演じることになった亀吉。準備万端を整えて、ゲストには兄弟子の福の助、それに寿笑亭一門の総領でテレビでも人気の小福遊師匠をそろえ、おかげで前売り券の発売も上々。
独演会当日には引退した馬春師匠夫妻も駆けつけてくれた。だが、肝心の小福遊がいつまでたっても来ない。小福遊は前日に来て釣りをし、昼過ぎに切り上げて独演会場に向かう予定だった。これから向かうという連絡があったきり、いつまでたっても現れないのだ。
しかたなく繋いだり、中入を長くとったりしたが、さすがにごまかしきれず客が詐欺だと騒ぎ始めた。そんなとき引退した馬春が高座を勤めると言い出した。脳血栓で倒れた馬春はまだ言葉が不自由でろれつがよく回らず、プライドも高いから日常会話も筆談に拘るほどだった。その馬春が高座に…一同驚いたが馬春には秘策があるようだった。


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