ダイニング・メッセージ

美少女代理探偵根津愛の事件簿。
Kaiseki Lunch
36歳の独身刑事桐野義太は、子供の時から知っていて、最近は恋心を抱いている根津愛の父親根津信三に食事に招かれた。信三は義太が最初に配属された部署の尊敬すべき先輩で、義太が愛を知ったのもその縁であった。
信三は警察を退職後に料理学校の講師という異色の道に進んだ。その信三からの昼食の招待だから、義太に断る理由はない。ところが行ってみると信三は急用で外出、かわりに娘の愛が食事を供するという。
それはいいのだが、驚いたことに案内された客間にはほかの事件で知り合った新田靖香が着物姿で座っていた。どう考えてもお見合いだ。どうも2人とも信三の罠にかかったらしい。
異様な雰囲気の中で本格的な懐石料理が始まった。最初は2人ともぎごちなかったが、知らない仲ではないのですぐに打ち解けて来た。やがて会話の中で靖香が聞き捨てならないことを言った。先週もお見合いだったというのだ。
相手は佐藤という高校の教師で人柄もいい。しかし年齢は少し離れているし、容姿はチビ、ハゲ、デブ。靖香の姉の嫁ぎ先の義母の紹介だという。さらに衝撃的なのは、靖香が事情があってその縁談を断りかねていることだった。
お見合いは姉の嫁ぎ先で、義母自慢の料理が供される形で進んだ。やがて義母十八番のビーフシチューが出されたが、そのシチューの中からビー玉が出て来たという。それを知らずに口に含んだ佐藤は不機嫌に。これで話は壊れたと思ったが、佐藤は見合いそのものには乗り気だというのだ。
ビーフシチューの中にビー玉を入れたのは、靖香になついている姉の長男らしい。ビー玉の件は靖香と佐藤しか知らないし、このことが姉や義母に知れたら靖香の甥が叱られる。それが靖香が見合いを断れないという理由だった。

Packed Lunch
新田靖香が勤める仙台市内の建設会社の総務課の女性豊原盟子は臭覚がするどく、外から臭いをかいだだけで課長の弁当の中身をある程度当ててしまうほどだった。
弁当の中身だけにとどまらず、シャンプーやポケットのガムの銘柄まで当てられて、課長の加勢貴大は驚嘆するとともに、反面怖ろしくなった。それ以来朝は風呂に入り、服や体臭には入念に気をつけた。
4月に入って暫くして総務課の最年少課員山口知夏が元気がなく、加勢は退社後食事をしながら相談に乗った。知夏はなんと部長との不倫問題で悩んでいた。なだめたり説得したりするうちに時間がたち、知夏は泥酔してしまった。
仕方なくホテルに部屋を取り、暴れる知夏をベッドに入れた。だが知夏は暴れるばかり。なんとか寝かしつけたが、すでに朝の4時になっていた。加勢はいったん家に帰り一睡もせずに出勤した。
それが地獄の始まりだった。盟子が近づいてきて知夏との不倫をたてに加勢を脅し関係を迫って来た。進退きわまった加勢が応じて2人でラブホテルに入った。ところが今度は加勢の口臭に盟子が顔をそむけた。
加勢が問い詰めると癌の匂いがするというのだ。最近胃が痛み、癌で死んだ父親の恐怖に慄いていた加勢は奈落の底に突き落とされた。なにがなにやらわからないまま、そのままホテルを出た。
3日後接待の後で加勢は会社の屋上から飛び降り自殺しようとフラフラと会社に戻った。そこで残業していた靖香と会い、自暴自棄になった加勢は靖香を押し倒したのだった。

French dish Dinner
桐野義太のところに突然メールが送られてきた。フリーアドレスを使っていて、送信者は不明。内容は4部に分れ、カナダで悪霊のウェンディゴに憑依され、その影響でカニバリズムに目覚め、そして具体的に若い女性を殺して調理して食したという猟奇的なものだった。
そしてメールの最後には、このメールが嘘でない証拠に桐野にささやかなプレゼントを送ったと書かれていた。メールは調理法など詳細を極めており、刑事部屋で桐野と同僚の松橋刑事がその内容に呆然としていると、そこに根津愛が来合わせた。
愛は一階の受付で桐野宛の速達を預かって来たと郵便を差し出した。その速達便からは女性のものと思われる指が転がり出した。どうもこれがメールに書かれていたささやかなプレゼントらしい。
驚いた桐野と松橋が上司の捜査課長に連絡しようとすると、それを愛が押しとどめた。そして桐野宛のメールを読み始めた…

Celebration Lunch
桐野義太と新田靖香の仲は順調に進み始めたかに見えたが、ある日突然靖香が泣きながら交際を断って来た。佐藤との交際を断り切れずに、何回かデートを重ねるうちに佐藤から結婚を示唆されたというのだ。
さすがに靖香も断ったが、すると佐藤は態度を豹変させて、見合いの席でのビー玉の一件を持ち出して、半ば脅迫し結婚を強要してきたというのだ。気の弱い靖香は、ここで断ると姉や姉の嫁ぎ先に迷惑をかけると思い、佐藤と結婚することにしたというのだ。
それを聞いた義太はショックで酔いつぶれてしまった。なんとか家にたどり着いたが、そこに架かって来た愛からの電話。義太は愛にすべてを打ち明けた。それを聞いた愛は「自分で蒔いた種は自分で刈る」と、謎の言葉を残して電話を切った。


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