道具屋殺人事件

落語家寿笑亭福の助とその妻亮子が出会う落語がらみの事件。
道具屋殺人事件
神田紅梅亭の高座で開口一番、前座が「道具屋」を演じていたが、サゲ近くなって短刀に見立てた扇子が突然2つに割れて中からペティナイフのような本物の短刀が転がり出た。そしてその短刀には明らかに血がこびりついていた。
警察が呼ばれ検査の結果、短刀についていたのは明らかに人血。やがて川崎のマンションの一室から見つかった男の死体の血と判明し、死体の傷口から凶器と断定された。
仕込み杖ならぬ仕込み扇子を作ったのは花山亭小喜楽という真打。小喜楽は芸歴は長いが、地味であまりパッとしない落語家であった。その小喜楽の扇子が楽屋に忘れられており、それをたまたま扇子を忘れた前座が高座で使ったのだ。
小喜楽は前々日に代演で久しぶりにトリをとることになったが、高座に上がる直前に脳溢血で倒れ、紅梅亭の楽屋から救急車に乗せられて病院へ向かった。
小喜楽は意識がなく集中治療室に入っているので事情聴取は不可能だったが、扇子屋から小喜楽の特注で仕込み扇子を作ったことがわかった。もちろん小喜楽は作る理由は言わなかった。
さらに小喜楽が川崎の死体の男に恨みを持っていたこともわかり、警察では小喜楽が男を刺し殺し、楽屋で倒れた時に隠し持っていた凶器が転がり出たまま忘れられていたと推理し、小喜楽が犯人と考えたが…

らくだのサゲ
寿笑亭福の助の弟弟子に桃家福神漬という、いいかげんな落語家がいた。福神漬はサラリーマンを経験した後、風俗店の店員やホストをやり、27歳で寿笑亭福遊に弟子入りした。
福神漬はよいしょは上手いが落語はパッとせず、一方で改名を繰り返して師匠の福遊をはじめ関係者の顰蹙を買っていた。この福神漬に探偵社の尾行がついた。
福の助の妻亮子は福神漬を尾行していた探偵に呼び止められて話を聞かされた。それによると福神漬が前に付き合っていた路恵という女が行方不明になり、路恵の兄から福神漬がことによると路恵のことを殺したのではないかと疑って調査依頼を出したのだという。
というのも路恵の部屋から兄に宛てた手紙が見つかり、その手紙には路恵が福神漬に貢ぐために多額の借金をしたと書かれていたからだった。
でもいくら福神漬がいいかげんな人間とはいえ、とても人を殺すほどの度胸があるとは思えないのだが…

勘定板の亀吉
亮子の勤める高校の国語教師倉本が、紅梅亭の2月下席のネタ帳が見たいと言ってきた。落語好きな倉本は、2月の下旬にふと紅梅亭に入ったところ花山亭小喜楽が「壺算」を演じていたのを聞いたというのだ。
倉本はコンビニでの釣り銭詐欺の犯人ではないかと疑われ警察から事情を聴かれており、そのアリバイのひとつとして小喜楽が「壺算」を演じた日を知りたかったのだった。
倉本の頼みを快く引き受けた亮子がネタ帳を調べてみると、下席で小喜楽は「茶の湯」「家見舞」「二番煎じ」「反魂香」と演じ、5日目の昼に倒れてしまい休席していた。つまり「壺算」は演じていなかった。
ところが倉本はそんなはずはないと記憶している小喜楽の「壺算」を演じてみせた。それではネタ帳の付け違いかと前座に聞いてみたが、絶対にそんなことはないと逆に怒られる始末。
肝心の小喜楽は脳溢血で意識もはっきりしない状態で、困った亮子は夫の福の助に相談すると…


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