黄昏の獲物

高校時代にはインターハイで2年連続チャンピオンとなった剣道三段の女子大生栗村夏樹の友人桂木亜沙美が誘拐され、ファックスで身代金1億円が要求されてきた。
桂木家には刑事が派遣され、管轄の祖師ヶ谷警察署には捜査本部が置かれ報道協定も結ばれた。祖師ヶ谷警察署は夏樹が剣道の稽古に通うところでもあり、署員の多くも知り合いであった。
夏樹がよく知る牧田刑事によると、誘拐される直前に会ったのが夏樹であるらしい。そういう理由もあって、夏樹には亜沙美誘拐の事実が告げられたが、もちろん口外が禁じられていた。
亜沙美の父親玄太郎は元総会屋で、現在では金融業を中心に多くのペーパーカンパニーを作り、かなり悪どい法律スレスレのことをしてきたので、多くの人から恨みを買っていた。
今回の1億円という法外な要求額からみて、誘拐犯は玄太郎に恨みを抱く人物ではないかとの見方が強かった。だが、犯人はその後何も言ってこなかった。電話もなければファックスも来ないのだった。

いったい亜沙美はどこにいるのか?犯人の目的は何なのか?捜査本部ではまったく犯人の意図を図りかねた。そんなとき埼玉県警から照会があった。
秩父の荒川村にある喫茶店の駐車場で、炭化した若い女性のものと思われる死体がみつかったというのだ。死体は裸で入念に燃やされており、衣服はおろか髪の毛や指紋なども焼失し、肋骨も全て折られていた。
肋骨を折ったのはレントゲン写真から被害者を特定できないようにするためで、犯人の残忍さと周到さが窺がわれる事件であった。
また犯人は死体の口の中に新聞紙を丸めたものをいくつか突っ込んでいた。検視官の見解では、完全に窒息死させるためではないかということだった。
そのおかげで歯だけは無事であり、歯の治療痕から被害者を特定できる道筋は残されたが、それとても膨大なエネルギーが費やされそうであった。
もうひとつの手がかりは、口の中に詰め込まれた新聞が、調布のコミュニティ紙であることだった。埼玉県警では亜沙美の誘拐事件から被害者が亜沙美の可能性もあるのではないかと考えて照会してきたのだ。
祖師ヶ谷警察署では亜沙美が通っていた歯科医佐伯紀実代に連絡を取り、紀実代とともに牧田刑事と夏樹が秩父に向った。紀実代が死体の歯を検案した結果は被害者は亜沙美ではないことがわかったが、そうなると亜沙美はどkどえどうしているのだろうか…
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