人形は眠れない

めぐみ幼稚園に勤めるおむつこと妹尾睦月の住む街で、連続放火事件が起きた。いずれも深夜のことで、結果的にはゴミ箱などが燃えた小火程度で消し止められたが、大火事になってからでは遅いとして警察は警戒を強めていた。
その矢先にまたしても放火と思われる火事が起きた。今度は白昼、しかも人通りが多い、駅の近くの電器店でのことだった。この電器店は、店と自宅が棟続きになっていて、4人家族であった。
その日は雨だったが、主人以外の3人は外出し、主人も店を閉めてパチンコに行き、大きく負けて帰ってきた。最近、郊外に大型電器店ができ、個人商店に毛が生えたようなこの店は暇だったのだ。
主人はパチンコから帰り、傘を玄関に置き2階に上がって寝ていると、いきなり玄関付近から火が出て、自宅部分をほとんど焼いたのだった。主人は逃げ出して無事で、被害者はなかった。
玄関付近は火の気のないことから放火と考えられたが、鍵が開いていたのは玄関だけで、しかも玄関の向かいの店からそこは丸見え。向いの店の人間は、家事の前に電器店の主人が帰った後は、誰も玄関を出入りしなかったと証言した。
かといって火事のあとまで犯人が家の中にいたとは思えないし、電器店の主人が犯人とも考えられない。なんと密室の放火事件になってしまった。

一方、妹尾睦月は暫く前から同僚の結婚式で知り合った関口昌樹という好青年から好意を持たれ、何度かデートの誘われていた。
睦月は気乗りはしなかったが、あまり断るのも悪いと考えて、電器店が火災に遭った日に駅前で関口青年と待ち合わせをしていた。
待ち合わせ時間はちょうど火が出た時刻。睦月は少し遅れていったので、火事騒ぎの間中駅で関口を待った。結局1時間待ったが関口にすっぽかされて家に戻った。
だが、その後の関口の言動から、どうも関口は待ち合わせのために駅に来ていたのではないかと、睦月には思われた。そして放火魔は関口ではなかったかと思いはじめて…
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