人形は遠足で推理する

腹話術師朝永嘉夫は二重人格者で、腹話術の人形鞠小路鞠夫というもう一つの人格を持っている。ノホホンとした嘉夫、頭脳明晰な名探偵鞠夫が一つの肉体に同居しているのだった。
嘉夫と鞠夫はめぐみ幼稚園に勤めるおむつこと妹尾睦月の頼みで、幼稚園の遠足に同行することになった。
幼稚園から園児全員が路線バスを停留所まで歩き、最初に来たバスに乗り切れない園児が次のバスに乗ることになった。睦月のもも組と野坂先生のうめ組の生徒だった。
前のバスが遅れていたらしく、次のバスはすぐにやって来た。野坂先生と睦月は協力して園児をバスに乗せ、最後の一人になったときにバス停近くの路地から警官に追われた若い男が走り出てきた。
その男は拳銃を持っており、今まさにバスに乗り込もうとした園児に駆け寄って捕まえ、その頭に拳銃を押し付けて人質にし、睦月と園児をバスに引っ張り込んでバスジャックしてしまった。

バスの乗客は園児たちと睦月、野坂の両引率の先生、嘉夫のほかにはのちに二宮と名乗った老人が一人だけだった。日野と名乗る乗っ取り犯人は、全員をバス後部に集めて、拳銃で運転手を脅してバスを全速力で走らせる。
後からパトカーが追跡してくるが、どうしようもなく、途中に張った非常線も強引に突破されてしまう。だが県境近くで厳重なバリケードが築かれていて、バスはその地点でパトカーに前後を挟まれて停車した。
ここから警察と犯人の交渉が始まるが、犯人の日野は殺人の容疑をかけられ、それが濡れ衣であると主張、殺人事件の真犯人を連れてくるのが人質解放の条件だとわめいた。
日野のいう殺人事件とは…
日野はもと暴力団員であり、暴力団にいたころの尊敬する先輩坂崎輝美と一緒に前夜酒を飲み、泥酔した。その日はどうやって部屋に戻ったかも覚えていないほどだった。
翌朝、つまり今朝起きてみると隣に坂崎がいて、その胸に拳銃を撃たれて死んでいた。そして日野の手には坂崎を撃ったとも思われる拳銃が握られていた。
しかも日野のアパートの部屋は窓もドアも全て内側から鍵が掛けられていた。密室の部屋の中にいるのは死んだ坂崎と、拳銃を握った日野だけ。
これでは誰が考えても日野が疑われるし、警察も日野を疑い部屋から逃げる日野を追いかけた。日野は拳銃を持ったまま逃げ、はずみでバスジャックをしたというのだ。
だが日野は自分は絶対に犯人ではないと主張、真犯人は別にいるはずと譲らない。そして鞠夫と嘉夫が名探偵と知ると殺人の謎を解けと脅してきた…
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