1 怪人二十面相
少年探偵シリーズの記念すべき第一作で、昭和11年講談社発行の雑誌「少年倶楽部」に連載された。 神出鬼没でどれが本当の顔かわからないほどの変装の名人、稀代の怪盗二十面相と名探偵明智小五郎の対決を描く。
二十面相は実業家羽柴壮太郎氏からロシアのロマノフ王朝ゆかりのダイヤモンドを警戒厳重な中から盗み、さらに国宝級の仏像を盗む。 しかし仏像に化けた明智探偵の助手の小林少年の活躍でダイヤモンドを取り返され、隠れ家を急襲されてしまう。
さすがに二十面相は捕まるようなヘマはせずに逃げ去ってしまい、今度は伊豆の日下部家から名画の数々を盗み出す。この時は、なんと二十面相は明智小五郎に化けて日下部家に入り込んでいた。
そして国立博物館からもその所蔵美術品の一切を盗み出すと予告をしてくるが、一方でその予告の日の数日前になんと明智が二十面相に誘拐されてしまう。
東京駅での明智と二十面相の直接対決など、どちらかといえばスリルに重点がおかれている。またこの事件で最初に二十面相に狙われた羽柴家の次男壮ニを中心に少年探偵団が結成される。

2 少年探偵団
怪人二十面相に続き、昭和12年に雑誌「少年倶楽部」に連載された作品。
東京の街に全身真っ黒な人間が現れ、あちこちで騒ぎを起こしていた。人々は「黒い魔物」と呼んで噂をし合っていた。 その黒い魔物が少年探偵団員の篠崎少年の家の周りに現れ始めた。
篠崎少年の父によると中国で買った宝石がインドの仏像から盗まれたもので、現地の人たちは宝石を取り返すべく魔術を使う2人のインド人に宝石を探させているらしいと言う。 そしてある夜のこと、その宝石が黒い手によって盗まれ、さらに翌日には篠崎家の長女が小林少年とともにさらわれてしまった。
小林少年の機転で賊の隠れ家まで目印をつけたために、明智探偵たちが駆けつけ小林少年達は救出されるが、正体を見破られた二十面相は軽気球で脱出してしまう。
逃げおおせた二十面相が次に狙ったのは大鳥時計店が所蔵する純金で作られた五重塔「黄金の塔」。この黄金の塔を警戒厳重な中から盗み出すが、警護を依頼された明智探偵は一計を案じていて二十面相の裏をかく。 二十面相も稀代の怪盗として怠りなく、ここから俄然テンポが速くなり二十面相対明智探偵の大捕り物となる。

3 妖怪博士
過去に何度も明知探偵と少年探偵団に煮え湯を飲まされた怪人二十面相。今度は少年探偵団に復讐をしようと団員を次々に誘拐し隠れ家に閉じ込め、団員の父親の持つ製造機械の設計書を盗み出す。
そして自らは探偵殿村弘三と名乗り、設計図を取り返し誘拐された子供達を助け出すことを宣言し、明智と対決する。約束の期限に殿村は設計図を見つけ出し子供達も探し出すが、殿村が二十面相であることを見破ったいた明智は、逆に殿村を追い詰める。
捕縛された二十面相は護送の途中で奇計を使って逃げ、再び少年探偵団への復讐を始める。後半では奥多摩の鍾乳洞に出かけた少年探偵団が二十面相の手によって鍾乳洞の中に閉じ込められてしまうが…

4 大金塊
怪人二十面相が出ない作品。この作品が雑誌に連載された昭和14年は中国との戦争のさ中で、言論統制も厳しくなっていたために、乱歩も冒険談的な本作品にせざるを得なかったのかもしれない。
宮瀬家の先祖が隠したという小判の山。その隠し場所は暗号となって宮瀬家に伝わっていた。「ししがえぼしをかぶるときからすのあたまのうさぎは三十ねずみは六十いわとのおくをさぐるべし」おそらく「獅子が烏帽子をかぶる時、烏の頭の兎は三十、鼠は六十、岩戸の奥をさぐるべし」との意味だとはわかるが、それだけではどこを探せばいいかまるでわからない。
明智探偵は兎や鼠(子)は方角で三十や六十は距離と推測し、日本中の獅子や烏帽子、烏の名前のついた山や岩を調べ、ついに三重県の無人島に3つの名前のついた岩があることを知る。明智と小林少年は宮瀬親子とともに無人島に渡るがその運命は…
この作品を最後に戦争中は少年探偵団シリーズは書かれず、次の作品の青銅に魔人まで10年のブランクが空く。

5 青銅の魔人
夜の銀座に現れた青銅色の怪人。顔は金属でできた気味の悪いお面で、その三日月型の口からはギリギリと歯車の音が聞こえてくる。時計店から沢山の時計を盗んで追いかけられると、四つん這いになって走り、角を曲がったかと思うと消えてしまう。この怪人はすぐに世間の話題をさらい、「青銅の魔人」と呼ばれた。
青銅の魔人は時計を集めているらしく、狙われたのは手塚龍之介が所有する皇帝の夜光の時計。手塚氏の息子昌一少年に時計を盗むと予告の紙切れを渡してきた。
衆人環視の中で皇帝の夜光の時計を盗んだ青銅の魔人は、追い詰められて煙突に登るが、煙突の上から落ちてきたのは機械がぎっしり入った金属でできた胴体。青銅の魔人とは機械人間で、煙突から落ちて死んでしまったのか?
明智の助手小林少年は煙突騒ぎの間に何者かにさらわれて、気が付くと青銅の魔人の隠れ家に監禁されていた。そこには手塚氏の息子の昌一少年とその妹の雪子も同じくさらわれていた。
一方、皇帝の夜光の時計を盗まれ昌一、雪子兄妹をさらわれた手塚家では、さらに当主の龍之介氏までさらわれてしまった。名探偵明智小五郎は小林少年をはじめさらわれた人々を助け出せるのか、そして青銅の魔人の正体は…
10年ぶりに雑誌に連載された少年探偵団シリーズ。終戦直後の混乱がまだ収まらず、東京のあちこちに焼け跡が残り、浮浪児が多くいた背景が作品に色濃く出ている。そして明智の仇敵二十面相が復活。

6 地底の魔術王(雑誌連載時は「虎の牙」)
広場で遊ぶ少年達に前に魔法博士と名乗る不思議な人物があらわれた。広場で少年達に奇術を見せた後、近くの塔のある洋館を指差して、「あの洋館は私の家であそこには不思議の国がある」といい置いて立ち去った。
数日後、魔法博士は近所の子供達やその両親を洋館に招待したが、その中に天野勇一少年とその親戚の小林少年も混じっていた。観客達は不思議の国の鏡の部屋などを体験した後、舞台で魔法博士の演じる奇術を見た。奇術はブラックマジックといわれるもので、客席に照明を当て舞台は黒幕で覆ったりして真っ黒くし、その中で奇術を演じるものだった。
指名された勇一少年が舞台に上がり、奇術で消されたように見えたが、これはブラックマジックで黒ずくめの助手が黒布を順次、勇一少年に被せて客席からは見えなくしたもの。
その直後に魔法博士も着ていた白い服を脱いでいったが、その下は黒ずくめで同じく客席からは見えずに舞台から消えたようになってしまった。ところが勇一少年と魔法博士はいくら待っても戻ってこなかった。勇一少年は魔法博士にさらわれてしまったのだ。
さらに数日後には小林少年もさらわれ魔法博士の隠れ家に監禁されてしまう。そして魔法博士の魔の手は、病気で臥せる明智小五郎にまで及んだ。
見事に明智をさらった魔法博士は隠れ家で得意になるが、なんとそこにもう1人の明智小五郎が現れて、魔法博士を驚かせる。明智は替え玉を使って偽明智を魔法博士にさらわせ、自分は魔法博士の部下に化けて隠れ家に乗り込んだのだ。そこで明智の口からでた言葉は、魔法博士またの名を怪人二十面相…
怪人二十面相が小林少年や明智に復讐するために魔法博士と名乗り再び姿を現したのだった。

7 透明怪人
東京に透明人間現る。少年達が怪しい仮面の男を尾行し、崩れかけたレンガの建物の中に入ったその男をレンガの壁の影から見ていると、仮面、シャツ、ズボンと次々に脱いだが、その下には何もなかった。そのまま着ていたものが丸められ、宙を飛んで建物から出て行ってしまった。
少年たちが驚いているとやはり怪しい仮面の男を追けて来た東洋新聞の黒川記者が現れ、今のは1週間前から東京中を騒がせている透明人間だという。
黒川記者によると銀座の街中で何人もの人間が肩をぶつけられ、有楽町では靴磨きの少年から金を奪おうとした不良青年が透明人間に組み伏せられ、さらに銀座の宝石店ではショーウィンドウが割られてネックレスがひとりでに宙を飛んで店を出て行ったしまったという。これらは全て透明人間の仕業らしい。
数日後に透明人間を目撃した少年の一人が母親とデパートに買い物に行きマネキンに化けた怪しい人間を発見し、通報でデパートの店員が追いかけて倉庫に閉じ込めたが、駆けつけた警官と倉庫を開けると誰もおらず、これも透明人間の仕業と考えられた。
そして、その少年の家に透明人間から家宝の真珠塔を盗むとの予告状が届いた。真珠塔は使われなくなった防空壕を改造した地下の金庫に入れてあり、それを少年親子や黒川記者、警官隊が厳重に見張っていたが見事に盗まれてしまった。少年親子と黒川記者が予告の前日に確認した時には真珠塔は確かに金庫に入っていた。
さらに透明人間を尾行した少年探偵団の大友少年も、透明人間にされてしまい、明智探偵は透明人間事件の捜査に向かう途中に透明人間の手下により誘拐されてしまう。そして明智夫人も誘拐して透明人間にするとの脅迫状が見つかった。

8 怪奇四十面相
透明怪人事件で拘置所に入れられた二十面相は、自ら四十面相と改名し拘置所から脱出する宣言する。宣言通りに脱出した四十面相が狙ったのは黄金どくろの秘密。
黄金どくろとは黒井博士の四代前の先祖の黒井惣右衛門が残した金色のどくろで、そのどくろの謎を解くと隠された宝物が見つけられるという。黒井博士のもとにあるどくろには意味不明の12文字のひらがなが記されていた。
黒井博士は他にもどくろが存在すると確信し、やはり惣右衛門の子孫の2人が同じどくろを持っていることを苦心の末につきとめた。そして黒井邸に週に一度その3人がどくろを持って集まり、それぞれに記されたひらがなの暗号を解いていた。
そのことを知った二十面相がその暗号と宝物を狙ったのだ。ほかの事件で忙しい明智探偵に代わり、小林少年が黒井邸で警戒にあたるが、二十面相はまんまとどくろの暗号を解いてしまった。
小林少年と明智探偵の方も少し遅れて暗号を解き、小林少年と黒井博士達は暗号に記された宝物の隠し場所の三重県に向かうが、そこで待っていたものは…
大金塊を思い起こさせるような暗号と宝捜しの物語で、宝のありかは大金塊と同じ三重県となっている。

9 宇宙怪人
東京銀座の空にある日の夕方空飛ぶ円盤が現れた。それから日本中に奇怪な出来事が次々に起こりはじめた。
まず、神奈川県丹沢の山中できこりが空飛ぶ円盤が着陸し、そこからトカゲのような怪人が現れたのを目撃した。
つぎに北村という青年がトカゲ怪人に捕まり1ケ月ほど監禁されたが、怪人の隙を見て円盤から逃げ出して助った。北村青年によると囚われている間に日本語を教えさせられたという。
さらに夕方のデパートの屋上からトカゲのような怪人が店員の目の前に現れ、腰を抜かす店員を尻目に屋上から空へ飛び去ったり、少年が怪人に捕まり上野公園の五重塔の天辺に置き去りにされたりした。
また、新聞記者を乗せたヘリコプターがトカゲ怪人に空の上で囲まれもし、このときは記者が撮ったという写真が翌日の新聞に掲載された。
トカゲ怪人の事件は日本だけでなくアメリカやソ連、ドイツなどでもトカゲ怪人が現れたり円盤が目撃されたりた。日本をはじめ各国から科学者や俳優などの有名人や著名人が誘拐された。
トカゲ怪人は宇宙から地球を侵略にやってきた宇宙人なのだろうか。そして天才発明家の虎井博士のところにもトカゲ怪人の魔の手が伸びてきた。
地球的な規模で展開される怪事件を明智探偵と小林少年のコンビが解決する物語。

10 鉄塔王国の恐怖
明智探偵の助手小林少年が街角で老人に呼び止められ、勧められるままに覗いたのぞきカラクリは、巨大なカブトムシが西洋風の城から出てきて鹿を殺すという不気味なものだった。
数日後、今度は巨大なカブトムシが夜中の銀座に現れた。そしてその背中には白いドクロの模様があった。銀座の巨大カブトムシはどこかに消えてしまったが、その数週間後に実業家の高橋氏の家に一人の男が現れた。
村瀬と名乗るその男は、日本の山の中にある鉄塔王国という国の首領に一千万円の寄付をしろと高橋氏を脅した。もし寄付しなければ鉄塔王国の戦車である巨大カブトムシで高橋氏の子供の賢ニ少年を誘拐し、鉄塔王国の兵隊にするとも言った。
高橋氏は明智探偵に助けを求めるが、賢ニ少年は結局さらわれてしまい鉄塔王国に連れ去られてします。だが、小林少年が賢ニ少年をさらった車のトランクに忍び込み、まんまと鉄塔王国への潜入に成功する。
乱歩の少年探偵団シリーズ第10作は、スリルに満ちた冒険談風物語。

11 灰色の巨人
灰色の巨人と名乗る怪盗が東京のデパートから「志摩の女王」という真珠の塔を盗み出した。
次に狙われたのは銀座にある有名な宝石商の大賞堂で、見せの宝石を全部盗むと予告してきた。 驚いた大賞堂の主人は明智探偵に相談し、まんまと敵の裏を書き怪盗に偽物を盗ませる。
灰色の巨人は失敗にもめげず今度は園井氏が持つ「にじの宝冠」という王冠を盗みに来て、小人を使いその王冠を盗み出す。
「にじの宝冠」を盗み取った小人は近くのサーカスにいるらしいとわかり、少年探偵団がサーカスの客となり様子を見ていると、「にじの宝冠」を被った少女が曲芸を始めた。
少年探偵団の団長の小林少年は警察と明智探偵にすぐに連絡し、サーカスでの捕り物が始まり、小人や少女は捕まり「にじの宝冠」は無事に園井氏の元に戻る。
ところがそのドサクサに園井氏の子息正一少年が誘拐され、園井氏のところに「にじの宝冠」と引き換えに正一少年を渡すとの脅迫状が来る。灰色の巨人のもとに単身赴いた園井氏は「にじの宝冠」を渡して正一少年を取り返す。
今度は明智探偵と小林少年の番で「にじの宝冠」を取り返すべく、灰色の巨人の隠れ家を探り出そうとするが、いったい灰色の巨人とは何者なのか…

12 海底の魔術師
少年探偵団シリーズの第12作は、題名からもわかるようにシリーズ唯一の海洋談。
冒頭から沈没船の調査に海底に潜った潜水夫の前や海岸で海を見つめる少年の前に鉄の人魚が現れる。鉄の人魚とは銀色の鉄でできた体にワニのような尻尾、背中から尻尾にかけてトサカのようなキザキザをもつ機械のような生き物だった。
この鉄の人魚を操るのが怪人二十面相で、今回この二十面相が狙うのが紀州沖に沈んだ大洋丸の中にある金塊。
ひょんなことから金塊のありかを書いた紙の入った小箱を手に入れた宮田親子は明智探偵と小林少年とともに大洋丸の沈没現場に向かう。
一方、二十面相もその引き上げの現場に現れて、双方とも潜航艇を使ったり、二十面相は作り物の巨大な蟹を繰り出したりして金塊を巡って海底で争う。
そのうち宮田少年が船から二十面相面にさらわれて洞窟の隠れ家に閉じ込められてしまう。 それを知った明智探偵たちは宮田生園の救出に向かい、無事に少年を助け出し二十面相を捕縛、金塊も無事に手に入れるという冒険色の色濃い物語。

13 黄金豹
銀座の街中に金色の表が現れ人々を驚かせた。その金色の豹は最初のうちは街中を走り回ったりするだけだったが宝石店から宝石を奪ってその場で食べたり、銀行から札束を奪ったりし始めた。
銀行から札束を盗んだときは、応接室に案内したはずの老人が部屋の中でいつのまにか豹に変わってしまい、驚く人々を尻目に堂々と札束を盗んでいった。
次に金色に豹が狙ったのは園田氏の持つ純金の豹の置物。園田氏の息子が少年探偵団員だった関係で小林少年も純金の豹が盗まれないように応援に来るが、板戸に書かれた豹の絵から突然豹が本物になって抜け出してきたり、追い詰めた金色の豹が密室で消えてしまったりの怪事件の連続。結果的に純金の豹は守ったものの豹に翻弄されてしまう。
豹はその後も寝台列車に現れて乗客の宝石を盗んだり、東京駅に現れたりと世間を騒がせ松枝氏の持つインドの宝石を盗むと予告する。松枝氏は宝石を明智探偵に預けると、その夜明智と小林少年が見張る明智探偵事務所に金色の豹が現れた。
金色の豹が密室で消えたり現れたりとトリッキーな要素がふんだんに盛り込まれている作品。


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