新・本格推理08・消えた殺人者

新本格推理2008年版。
ウェルメイド・オキュパイド   
堀燐太郎
敗戦後、占領軍の命令で日本のブリキのおもちゃが大量に輸出された。そのおもちゃにはMADE IN OCCUPIED JAPANという屈辱的な刻印がされたが、現在で希少価値が出てコレクターの間では高値で取引されている。
そのころのおもちゃに詳しい物集のところに、岡本金之助と名乗る人物から、三色に塗り分けられたジープを捜してくれと依頼があった。
ジープは何とか捜しあてて岡本に見せ、岡本はそれをデジカメに撮って謝礼を払って帰って行った。物集は責任を果たしたが、ジープを捜す過程で知ったジープの製作者奥田敬司とも面会できることになった。
約束の時間に奥田の家に行くと快く迎えてくれたが、どうも孫が誘拐されたらしい。その後、気になって奥田の周囲を探ると、どうも奥田家の様子がおかしい。奥田の孫の誘拐は本当なのかもしれない…

コンポジット・ボム    
藤崎秋平
神奈川県相模湖畔で爆破事件が起きた。ふらふらと歩いている女性に声を掛けた男、「助けて」と呟いてその男に倒れかかった女、その瞬間に女の体が爆発し木っ端みじんになった、というのが目撃情報だった。
被害者は跡形もなく身元も不明、倒れかかられた男も意識不明の後に3日後に死亡。その捜査が始まったばかりのころ、今度は津久井湖の駐車場で車が爆発し、乗っていた女性が死亡。
目撃者はなかったが、やはり相模湖の事件同様自爆したようだった。その翌朝、マスコミ各社に「黒いコード」と名乗る犯行声明文が届けられた。
黒いコード…それは2つの事件の現場に落ちていたもので、爆破装置の一部に使われたものと考えられたが、公表は一切されていなかった。したがってこの犯行声明には、かなり信憑性があった。
だからと言って犯人が特定できるわけでもなく、捜査が進展することもなかった。そして第3の爆破事件が起きた…

論理の犠牲者  
優騎洸
ロボット工学三原則第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。しかしこれに反することが起こったのだ。
伊集院家は主人の拓真、妻の優佳、息子のリュウト、優佳の母親の葉子の4人家族。そのほかにベルウッド、ビグリジ、パインブック、ライフドルのロボットが4体。
ある朝、主人の拓真が起きてこないので、優佳の命令で拓真を起こしに行ったベルウッドが見たものは、部屋の中でライフドルのよって刺されて絶命している拓真。そして機能を停止したライフドル。
ライフドルの腕は調理用のナイフに変化し、拓真の胸と腹に深く食い込んでいた。さらに部屋は窓もドアも内側から鍵を掛けられた密室状態。部屋の中には生物反応は一切なかった。

第四象限の密室    
澤本等
F市郊外にある鉄筋コンクリート4階建ての賃貸マンション「叉塔きょむ」で起きた密室事件。事件があったのは404号室。被害者は同室の住人橙堂美江。事件当時に隣室の401号室の住人緑原裕子が404号室にいた。
緑原は交通事故で盲目となり、自暴自棄になっていたのだが、橙堂が面倒を見て立ち直らせていた。橙堂が緑原を隣室に入居させたのも、緑原の自立のためだった。
緑原も今では橙堂のことを尊敬し、毎日のように404号室を訪れては一緒に過ごした。午後6時、緑原のお気に入りのラジオドラマがはじまり、それに耳を傾けていると部屋の電話が鳴り橙堂が話し始めた。
やがてラジオドラマの中で交通事故の場面があり、それを聞いた途端に緑原は気分が悪くなり、今のガラス戸を開けた。すると何者かが室内に転がり込んできて、橙堂の悲鳴。
だが盲目の緑原には何が起きたのかわからない。暫くして玄関をドンドンと叩く音。緑原が玄関のチェーンロックを外すと管理人や他の住人が入ってきた。
彼らが口にした言葉から、玄関先で橙堂が腹にナイフを突き立てて虫の息なのがわかったが、その言葉を聞いた途端、緑原は失神してしまった。
橙堂の悲鳴が聞こえた直後から窓は第三者に見られており、犯人は窓から脱出していないのは明らかだし、玄関にはチェーンロック、室内には盲目の少女という密室事件を解くのは自称名探偵草馬。

天空からの槍    
泉水堯
昔、ある時代、ある場所にファランドルという王国があった。ファランドル王国は、北からの蛮族バーベリ人による侵略と西方のサラゴサ公国の勢力伸張に悩まされていた。王国には2人の勇将パラヴォワーヌ侯とカッセル侯がいて、軍団を指揮して王国への侵攻を防いでいた。
さて、王国内のボルミダ川に沿ったところに廃墟となった修道院がある。その修道院にはボルミダ川に架かる橋を渡っていくのだが、横木を渡しただけのその橋も朽ち果てて、ところどころ大きな穴が開いている始末。
その橋の上を修道院に向ってカッセル侯が歩いている。そこに後ろからパラヴォワーヌ侯がやって来てカッセル侯に声をかけ、カッセル侯が振り向いた。
その瞬間、カッセル侯の体がくず折れた。この様子は修道院の近くに建っている物見台から2人の見張りの兵士が見ていた。見張りの兵は一大事と物見台から橋に駆けつけた。
するとそこには頭から尻に向って槍を突き刺されたカッセル侯の死体と、そばで呆然とするパラヴォワーヌ侯の姿があった。パラヴォワーヌ侯によると天空から槍がものすごい勢いで降ってきてカッセル侯を串刺しにしたのだというのだが…

ミカエルの心臓    
獏野行進
雷雨にあって修道院に避難したフリーライターの平松昌弘は、親切な修道院長に夕食どころか宿泊までさせてもらった。ところが翌朝、一人の修道士がいなくなってしまう。
平松も一緒にいなくなって修道士を探し、年間に1回だけ掃除をするときにしか開けないという宝物堂の中で、行方不明の修道士小林を見つけた。
小林修道士の体は、宝物堂の中央にある2メートル以上ある鉄柵に突き刺さっていて、すでに絶命していた。宝物堂の天井までの高さは約4メートル、部屋の入口には鍵がかかり、部屋一面には埃が積もって乱された跡はなかった。
小林修道士の部屋には紙を燃やした痕があり、燃え残った紙片には「地下の秘密の部屋に…」と書かれていた。その言葉を聞くと修道院関係者の顔色が変わった…

賢者セント・メーテルの敗北    
小宮英嗣
新興宗教XLM(ザルム)の連中が、駅前で大声を上げて「悪魔と戦おう」と叫んでいた。やがて一人の信者が自分の体験を話し始めた。
その男の信者も初めは新興宗教など全く信じていなかったという。友人の誘われて、XKMの教祖で元アイドルのメーテルが目の前の小屋から悪魔と戦うために消失したのを見て、XLMに加わったのだという。
その消失劇は真っ黒に塗られた丸太小屋で起きた。床だけはコンクリートだったが、その床も黒く塗られていた。そこに入ったメーテル。小屋の周囲は信者達やその友人、バイトの人間に囲まれた。
数時間後にXLM幹部のホンダラが様子を見に入り、少しして出てきた。そのまた数時間後に再び入り、少しして出る。その数時間後、ホンダラが扉を開けると中には誰もいなかった。
衆人環視の小屋の中からメーテルは悪魔と戦うために見事に消失したのだった…

シュレーディンガーの密室    
園田修一郎
私のところに、誰かから時間遡行装置が送られてきた。試しに使ってみると、まさしく時間が遡った。周囲の状況がセットした時間だけ戻るのだ。ただし私の記憶だけは消えなかったが…
私はその時間遡行装置を持って、友人2人と雪の中の建つホテルに泊まった。そのホテルにはその夜、オーナーとその娘のほかに私達を入れた8人の客がいた。
ホテルの中庭に離れのような建物が一つあった。夜、食事の後に飲み会が始まり、中座したわたしは部屋に戻る途中、ふと中庭を見た。
本館から離れに向う一つの足跡。離れには暖房設備は無く客も泊まっていないはず。異変を感じた私は、ちょうど通りがかったほかの客とともに離れに向った。すると離れには氷室と名乗った女性客が背中にナイフを刺されて死んでいた。
犯人はすぐにわかったが、私は氷室の命を救うために部屋に戻ると時間遡行装置を作動させ、飲み会の初めに時を遡らせた…

エクイノツィオの奇跡    
森輝喜
世界統一教と名乗るカルト教団は、殺人集団と恐れられてから日本での活動をあきらめ、イタリアのピサの地に本拠を移した。いつの間にか教団は勢力を盛り返して増殖を続け、ピサに地上100階建てという本部ビルを持つまでになった。
そのビルは、東北東に2度だけ傾いており、現代の斜塔と呼ばれ、最上階には卵形をした巨大な催事場「オバーレ・ルオーゴ」があった。
そのオバーレ・ルオーゴで、教団に敵対し、教団が殺人者である証拠を握っている岩尾孝俊が衆人環視の中で、頭を吹き飛ばされた。
オバーレ・ルオーゴはガラス張りで、周囲には多くのマスコミの目があり、中には大理石の階段の上に白木の椅子、その周りには幔幕があった。
岩尾が椅子にかけると幔幕が引かれ、さらにその幔幕が開かれた瞬間、岩尾の頭が吹き飛んだのだった…


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