新・本格推理04・赤い館の怪人物

新本格推理2004年版。
迷宮の観覧車   
青木知己
隅田川の堤防の脇にある遊園地アドベンチャーワールドの大観覧車に、一人の中年男が乗った。その日は12月の平日で、園内には人がほとんどおらず、その男が乗ったときも観覧車にほかに客はいなかった。
男は隅田川に釣に来たついでに乗ったらしく、大きなウインドブレーカーを着、直方体の大き目のバックを持ち、さらに釣竿も持っていた。
男が乗った観覧車のゴンドラは係員によって外から鍵が掛けられたが、一周してくるとその男は背中をナイフで刺されて死んでいた。ゴンドラの中は血まみれで、さらに男の両手の指が全て切断されていた。空中の密室であった観覧車のゴンドラの中でいったい何があったのか…

殺人の陽光    
森輝喜
佃照美という青年実業家が週末を過ごす別荘で殺された。別荘は石垣の上に建っていて、その石垣の下にある縁台に全裸で縛り付けられ、胸には出刃包丁が深々と刺さっていた。さらに不思議なことに全身を画鋲で刺されていて、死体は黄金に輝いているように見えた。
独身の佃は最近出会い系サイトで知り合った女子大生と援助交際をしていて、それを知った女子大生の父親が犯人と考えられたが、父親には犯行時刻に強固なアリバイがあった。

ノベルティーウォッチ   
時織深
山中にある暗い林に囲まれた西洋風の二階建ての家。その家は黒城氏の別宅で、週末になると黒城氏と使用人夫婦が3人で過ごしていた。
大雨のその夜は、そのほかに黒城氏の2人の息子と1人の娘、それにテニアン島から来た甥の4人が黒城氏によって集められた。そこに道に迷って助けを求めに来た一人の若い女性。
黒城氏の3人の兄弟仲は目を覆いたくなるほど悪く、さらに甥を加えた4人は遺産がらみか黒城氏の死を願っていた。その異様な雰囲気の中、真夜中に黒城氏が電気コードで首を締められて殺されているのが見つかった。

吾輩は密室である    
ひょうた
大きな岩をくりぬいて作られた部屋は藪田幹夫の仕事部屋であった。コンピューターシステム開発の天才藪田は、セキュリティーを確保するために、岩を繰り抜いてこの仕事部屋を作ったのだった。
部屋の唯一の入口は鋼鉄製のドアで、そのドアも虹彩認証が付けられ、藪田以外は入ることが出来なかった。ほかには嵌め殺しの防弾ガラスの入った窓が二ヶ所あるだけであった。
この密室内で藪田はナイフで刺されて死んでいた。厳重すぎる密室を考えると自殺とも考えられるのだが、現場に凶器はなかった。藪田の死は他殺で犯人は何らかの方法で密室を出入りしたのか、それとも自殺で何らかの方法で凶器が外に持ち出され隠されたのか…

幽霊横丁の殺人    
青山蘭堂
三方を建物や高さ3メートルの塀に囲まれた袋小路は通称幽霊横丁と呼ばれていた。
そこでは3年前の雪の早朝に落ち目の女優がこの横丁で何者かに襲われ、顔をしたたか殴られて怪我をしたのだが、犯人の男の足跡が女優を襲った場所までのものしかなく、そこから逃げ去った跡がまったくなかった。つまり犯人は空中に消えうせたが如くで、それが幽霊横丁の名前の由来であった。
そして3年後のクリスマスの日の夜、再び雪の上で惨劇があった。闇金融を営んでいた帽子屋の老人がナイフで背中を刺されて雪の上に倒れていたのだ。
その老人が横丁に入るのは、その入口に屋台を出していたおでん屋と通りがかりの警官が見ている。2分後に横丁に入った男が、横丁に入った老人の死体を発見したのである。
横丁には外灯がなく、外からは暗くて様子が見えなかったが、犯人は全体に横丁から逃げ出さないのは確かだし、横丁の中に潜んでもいなかった。しかも老人の死体の周りには老人の足跡しかついていなかったのである…

カントールの楽園で    
小田牧央
台風の影響で土砂崩れと橋の流失で県道*号線に閉じ込められた殺人鬼砂神。同じく車で来ていて土砂崩れにあい、車を失ったという稲野辺という男を途中で拾う。
そして2人は閉じ込められた区間に唯一存在する山荘に向かった。山荘は無人のようであったが、稲野辺が偵察に行くと部屋の中に死体があるという。
砂神も車を降りて山荘に入ると、密室になった洋室のドアガラス越しに女性の死体が見えた。ガラスを割って部屋に入ると、女性は既に息絶えていたが、血で綴ったダイイングメッセージが残され「にしのゆういちにころ」と読めた。そしてドアには内側から閂錠が掛けられていた。
顔を見合わせる砂神と稲野辺であったが、そこに猟銃を持った男が現れて…

ありえざる村の奇跡    
園田修一郎
岩手県N村の巨大な風力発電の風車の羽根にビニール袋に入った生首が引っかかっているのが見つかった。生首は前日からN村に入って取材をしていたTVディレクターのものであった。
ディレクターはN村に現れるというUMA(未確認動物)の取材をしていて、同行のカメラマンによれば前夜、確かにUMAが現れたという。
UMAは農協の倉庫の7メートルもの高さの窓を飛び越え、超人的なスピードで走り、高速でため池を泳ぎ、しかもその姿が赤外線暗視カメラで撮影されていた。ディレクターはUMAに殺されたうえ、首を晒されたのだろうか?
ディレクター殺人事件は迷宮入りしたが、その事件から3年後ある村で同じような事件が起きた。生首が乗っていたのは大木の上だったが、ほとんどがN村の事件と酷似していた。

金木犀の香り    
鷹将純一郎
医者である兄が死んで葬式に帰った私。葬式が終わり兄の部屋に入ると本棚から兄の遺品である文学全集に一冊を取り出し、パラパラとページをめくる。
ところどころページの隅が所々折られている。誰がこんなことを…すると私が中学生の頃に、母がやっていたピアノ教室に通ってきた少女恵梨子のことが思い出された。
私と同じ中学生だった恵梨子は、ピアノの練習が終わるとよく兄の部屋から文学全集を借り出していった。やがて恵梨子は、突然ピアノの練習に来なくなり、そして中三の年の9月に公園で首を締められて死んだ。
それも尋常な締められ方ではなく、太いマフラー状のものと細い紐状のもので二重に締められていたのだった。ふと、手元の本に目を戻すと、折られたページが何かを語っているような気がしてきて…


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