新・本格推理02・黄色い部屋の殺人者

二階堂黎人編集長になって新たなスタートとなった新本格推理2002年版。
十年の密室・十分の消失   
東篤哉
島根と広島の県境近くに建つ洋館は、天才画家といわれた中江陵山画伯が住んでいたが、10年前に陵山画伯が洋館から少し離れたところに建つ丸太小屋で自殺を遂げてからは、画伯の兄の孝太郎が住んでいた。
丸太小屋は高床式で、陵山画伯がアトリエとして使っていたもので、夏のある日のこと陵山画伯は密室となった丸太小屋の中で首を吊っていた。
その時に8歳だった陵山画伯の子の美也子は、忌まわしいこの土地から遠ざけられていたが、10年目にあたる今年久しぶりに孝太郎に会いに帰って来た。
10年の間に美也子も成長し、父の陵山画伯が首を吊った丸太小屋を見ても、美也子はショックを受けることはなくなっていた。ところが翌朝、雪の中でわずか10分の間に丸太小屋が消失してしまったのだ。
洋館の窓から見たときには丸太小屋が確かに見えたが、雪が降り始め視界が悪くなり、10分ほどして雪が小降りになってみると丸太小屋は消えていたのだった。

恐怖時代の一事件    
後藤紀子
フランス革命でロベスピエールが独裁をしていたころの話。ある夜に命の危険がある男を、2人の人間がつけている。男はある路地を曲がる。その路地は袋小路で、少しして路地の奥から叫び声。
2人が駆けつけるとバラバラにされた男の死体とナイフを刺された男の死体。どちらも顔は潰されていた。路地の入り口には浮浪者がいて、ほかには誰も出入りしていないと言うのだ…

月の兎    
愛理修
夜10時、依頼者のもとを訪れた見習い探偵。その依頼者の伯父は海辺の古びた洋館を買いとって、そこでかつての海で溺死したかつての愛人の復活を願って、オカルト研究をしている。
伯父は長年金融業をやっていて、強引な取立てをしてきたために恨みを買っていて、その誰かに騙されているらしいと依頼者は言うのだ。
翌日、見習い探偵が洋館に行くと、そこの寝室でパジャマ姿の伯父が死んでいた。死因は溺死、寝室の中も海水でしっとりと濡れていた。
伯父のオカルト研究で海の底から復活したかつての愛人が、伯父を殺したのだろうか?だが、浴室には海水が張られた跡が残り、伯父の毛髪も発見された。
真犯人は伯父を浴室で溺死させて、愛人の幽霊が殺したように見せかけようとしたのだろうか?

湖岸道路のイリュージョン    
宇田俊吾・春永保
山の中の道路で轢き逃げがあった。その直後に現場に来た2台の車。そのうちの1台は非番の刑事、もう1台は医師が運転していた。それを見て轢き逃げをした車は、急発進して逃げた。
非番の刑事は医師に被害者の介抱を任せて、轢き逃げ犯を追った。轢き逃げ犯の車はやがて行き止まりの道に入り込む。その先には分岐道として有料レイクサイドロードがあるが、この有料道路は夜間通行止め。
したがって轢き逃げ犯は行き止まりで立ち往生するしかない。刑事は余裕を持って犯人を追ったが、犯人は有料道路の料金所のゲートを押し上げてレイクサイドロードに入ったらしい。
夜間警備の係員が車が入り込んだようだと刑事に告げた。刑事は警察と反対側の料金所への連絡を指示して有料レイクサイドロードに入った。
有料レイクサイドロードには一切の枝道はなく、両脇には全線ガードレールが取り付けられている。ところが轢き逃げ犯の車は、有料レイクサイドロードから消えてしまったのだった。

ジグソー失踪パズル    
堀燐太郎
看護婦の田原久美、通称クーがアパートの部屋から消えた。状況から自分で失踪したようだが、失踪する理由もわからない。突然の失踪に友人たちはクーの行方を捜そうとする。
唯一の手掛かりは、どこに行くにもクーが持っていた白雪姫を題材にした煙草の箱ほどの大きさのミニチュアの人形セット。英国製の値の張る珍しいものであった。クーが自分の意思で部屋を出たと考えたのも、この人形セットが部屋から消えていたからだった…

時計台の恐怖    
天宮蠍人
名門女子校である黒鳥女学院の校舎には時計塔があった。その時計塔に一人の女子生徒が昇っていった。これは複数のほかの生徒が目撃している。
ところが、その女子生徒は時計塔の中からから消え、校庭の片隅で気絶しているのが見つかった。その生徒に聞くと時計塔に昇ったことも、そこから消えたことも一切覚えていないという。
名門女子校で起きた人間消失事件を聞いた、この高校OGの名探偵司馬博子は後輩の頼みで学校に乗り込んだ…

窮鼠の悲しみ    
鷹将純一郎
中学三年の男の子が誘拐された。勉強は出来るが内気で、いじめやたかりにあっていたらしいが、家では母親思いの優しい男の子だった。
送られてきたワープロの脅迫状は、誤字だらけのお粗末なもので、それに男の子の穿いていた靴も一緒に送られてきた。要求金は2億円。男の子の父親は、鉄工所の経営者で自宅も広かったが、不景気でとても2億円など出せそうになかった。
結局準備できたのは1億円。その1億円と偽装紙幣1億円を犯人の指示で2つのトランクに入れて、父親が身代金の受け渡しに向った。
警察は水も漏らさぬ警戒態勢をしいたが、結局1億円を奪われた上、男の子は殺されてしまう…

「樽の木荘」の悲劇    
長谷川順子・田辺正幸
昭和17年、日本占領下にある大連にあるアレクセイ・フェイドルフ老人の住居樽の木荘。クリスマスイブの日の夜、老人の遺体が書斎で発見された。殺害時刻は当夜午後7時半ごろと推定される。
樽の木荘の周囲は積もった雪に覆われ、門から玄関までは訪問者が来たと思われる一筋の足跡があるだけで、戻った跡はない。この足跡は樽の木荘にあるどの靴のものとも一致しなかった。
老人は小さなナイフで左胸を刺されたらしく、そこからの失血死であったが、凶器は部屋の中にはなかった。そして庭には黄金仮面と外套が雪の真中にポツンの置かれていた。
この日18時55分に旅順発の列車が大連駅に着いた時に、その列車から外套を着て黄金仮面を被った男がゆっくりと降りてきて、最後に改札を通ったことが駅員に目撃されていた。
すると犯人は黄金仮面で正体を隠して列車で大連にやって来て老人の家に向かい、そこで足跡のない殺人を遂げたのだろうか…


本格推理のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -