本格推理15・さらなる挑戦者たち

第7回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第2巻。この巻をもって鮎川哲也編集長の「本格推理」シリーズは終了し、二階堂黎人編集長の「新・本格推理」に引き継がれる。
風水荘事件   
藤崎秋平
雪に覆われた山荘風水荘にやってきたのは推理作家4人と編集長1人、それに山荘のオーナーと料理人がその夜の山荘の全員であった。
殺されたのは推理作家の一人で、その側には編集長が花瓶で頭を殴られ気絶していた。アリバイは全員になく、誰が犯人であってもおかしくないのだが…

お寒い死体    
池月涼太
20センチほど雪が積もった郊外の新興住宅地で発見された車の中には、素っ裸の中年男がナイフで背中を刺されて絶命していた。車の周囲には発見者の小学生の足跡だけしかなかった。
車の持ち主に連絡を取ると被害者は持ち主の叔父で、風呂に入っていたところを窓から自分で抜け出し、キーをつけたままだった車に乗って出て行ったのだという。事実、その家の風呂の窓下からカーポートまでは、被害者の裸足の足跡だけが残っていたが…

情炎    
深川拓
車に乗った2人の男が深夜の公園の前で車を停めて、自動販売機で缶入りのお茶を買い飲んでいると、目の前の公園の階段を人魂が転がり下りてきた。
びっくりして男2人は、その人魂を見てみると、それは人魂ではなく火をつけられて燃えている人間の生首であった。

丑の刻参り殺人事件    
飛鳥悟
群馬県のある寺で丑の刻参りをしていた女。テレビ局の取材班は、隠れてその女を取材していた。途中で気づかれて女は逃げていったが、杉の木に五寸釘で打ちつけられた藁人形には蜂谷真由美と書かれていた。
同時刻ごろ東京の蜂谷家では、真由美が五寸釘で胸を刺されて死んだ。真由美の家では先日事故で死んだ夫の晴彦の通夜が営まれており、翌朝発見された真由美の死体の上には、棺桶から這い出た晴彦の遺骸が五寸釘をもって覆い被さっていた。まさに女の丑の刻参りが通じたのだ。

利口な地雷    
石持浅海
防衛庁に地雷を納入している軍事産業部門を持つ会社の倉庫で、地雷開発者の一人がブービートラップにかかって死んでいた。死体の側にはトラップに使われた金槌やテグス、壁につけられた滑車、ロッドなどが散らばっていた。被害者の死因は金槌で額を強打したことだった。
被害者は死の十数分前まで生きていたのは間違いない。また被害者が倉庫に行くことは本人を含めて誰も知らなかった。なぜなら被害者はコーヒーを飲む紙コップがたまたま切れたので、倉庫に取りに行ってのだから…
だが、そのトラップは被害者の背丈に合せて作られていた。いったい何が起きたのだろうか…

お誕生日会    
朝岡栄治
資産家の娘で高慢な高嶺美華のために取り巻き達が開いた誕生会。部屋を真っ暗にして、数秒後に特注のバースディケーキがライトアップされる手はずだった。
ところが手違いがあったらしくケーキがライトアップされず、仕方なく部屋のライトをつけた。すると床には胸をナイフで刺された高嶺美華が…
取り巻き達は何らかの恨みを美華にもっており、動機面では犯人にことかかないが、犯人はどうやって真っ暗闇の中で美華を殺せたのか…

動く「密室」    
嵯峨大介
スキー場のクワッドと呼ばれる4人乗りゴンドラリフトに1人で乗ったスノーボーダーがいた。ところがそのクワッドから降りてきたボーダーの背中にはナイフが深々と突き刺さっていた。
ボーダーは押し出されるように数歩進んで前のめりに倒れこみそのまま絶命、ゴンドラ内にはボーダーが刺された痕跡が…

オニオン・クラブ綺談5 鍵のお告げ   
大友舜
千葉の片田舎で小さな書店を営む田島氏は、自宅の鍵を何度も外されるいたずらをされたという。最初は玄関の鍵をかけ忘れたのかと思ったが、何度か続くのでついに玄関の戸を取り替えた。
しかし、その後も鍵を外されたので今度は補助錠を取り付けた。すると玄関へのいたずらは止んだが、次に勝手口の鍵が外されるようになった。
警察にも何度か相談したが、鍵を外された以外に何の痕跡も見つからず、家から盗まれたものもない。商売上恨みを受けることもなく、店と自宅はかなり離れている。田島氏の家族も品行方正なもの揃い。いったい何故鍵が外されるのか…

雪のウエディングドレス    
柴田哲良
雪の山荘から消えた2人の男と女。どうも様子から駈け落ちらしい。だが雪の上に残された足跡は出て行った男のものとなぜか戻ってきた女のものだけ。女は足跡を残さずに山荘から消えたのだった。

隣りの部屋の殺人   
田中健治
アパートの隣の部屋の住人が出張から帰り、鍵でドアを開けたがチェーンが掛かっていて開かないという。ということは室内に妻がいるはずだが、何かあったらしく呼びかけても返事一つ無い。
心配になった夫の方が現れてチェーンを切るためのペンチを貸してくれという。僕はペンチを取り出しつつ、夫と一緒に行って代りにチェーンを切ってあげた。
僕と夫が中に入ると妻はリビングのソファの上でネクタイで絞殺されていた。僕の隣の部屋で密室殺人が起きたのだった。

テレポーテーション   
行多未帆子
中学生が3人土曜日の午後の英語の補修を抜け出して、学校のそばの線路脇で電車をバックに写真を撮った。その写真は、それぞれが交代で撮り、3人それぞれの写真の後ろには電車が写っていた。
ちょうどその電車が現場を通っている時刻に、そのうちの1人が水泳大会の会場のプールに現れて、県大会に出る同級生を励ましていたと言うのだ。その当人はテレポーテーションだと言うが…

六人の乗客   
大森善一
田舎町の駅前を出てニュータウンに向かう最終バスが6人の乗客を乗せて終点の手前の坂道で交通事故を起こした。運転手が居眠りして道を外れ、田んぼに転落したのだ。
このバスの乗客は基本的に常連ばかりで、いずれも名前は知らないが顔は知っているという間柄であった。事故に遭ったうち1人の女性は右耳が半分ちぎられ、意識を失った。
意識が回復しても、その女性は軽い記憶喪失が残り、事故から意識が回復するまでの記憶がなかった。そしてもう1人の男の乗客は事故車体から死体となって搬出されたのだが…

陽炎の夏   
今里隆二
推理作家がオーナーの夏の山荘で起きた事件。死体となって発見されたのはオーナーの推理作家とその友人の推理作家の2人。
オーナーのほうは殴られて絞殺されたらしく階段下に倒れ、友人のほうは2階で千枚通しで刺殺されていた。そして山荘は中から鍵がかけられた密室であった。事件当夜にこの山荘にH・Aというイニシャルの女性がいたらしいことはわかったが…


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