本格推理14・密室の数学者たち

第7回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第1巻。ボーナスは巨匠土屋隆夫と鮎川哲也の対談。
被拐取者に発言させない事(誘拐の鉄則)   
千桂賢丈
大人気のテレビタレント、ベンテンこと紅屋典介が誘拐された。ベンテン自筆の手紙が送られてきて、それには無事であることやシャワーや入浴も許されのんびりできること、犯人は顔を隠しているが2人組であること、そして事務所に1千万円を用意しておくことなどが綴られていた。
警察では狂言の線もあると考え、犯罪調査統計所の小鳥遊のところに相談に行ったが…

手首は現れた    
雨月行
大学の体育の授業で着替えに使った体育館横の倉庫に財布を落としてしまった学生。幸い倉庫には学生達が出たあと鍵がかけられたために、財布は倉庫の中に落ちたままであることがわかった。
その学生は鍵を借りて倉庫を開けるが、すでに日は落ち、明かりのない倉庫で何とか財布を探り当てる。その瞬間、出入口で音がしたので行ってみると、そこには指輪を嵌め、マニュキュアをした女の右手が落ちていた。
慌てて警備室に走る学生。警察が呼ばれ倉庫の中を調べると、学校のアイドル的存在の美女が絞め殺されて倉庫に転がっていた。そして死体からは手首が切り落とされていた。

壊れた時計    
森輝喜
交際相手と別れた井原美鈴が、そのショックから子連れの中年男辻本隆と交際を始めた。お互い結婚をする気であったが、暫く経って美鈴の気持ちが落ち着いてくると、美鈴の気持ちはさえない中年男の辻本からはなれていった。
そして美鈴の前には理想的な男性尾花が現れ、美鈴の心を捉えた。これを美鈴から打ち明けられた辻本は激怒し、美鈴は引越しまでするはめになった。
美鈴が慌しく引っ越して少ししたころ、尾花が自室で殺されているのが見つかった。動機の面から殺したのは辻本と考えられたが、辻本はアリバイを主張してきた。

見えない時間    
山沢晴雄
女流推理作家高杉冴子の首を切られた死体が自宅の書斎で見つかった。そして隣の応接室には、冴子の友人大村早苗が恐怖に体を震わしており、さらに応接室には何者かわからぬ女の死体があった。
早苗によれば、冴子から呼び出しの電話があって来て見れば、冴子が殺され女の死体が応接室に転がっていたのだと言う。そして早苗は犯人に応接室に閉じ込められ、恐怖で身動きできなくなり、応接室の電話で警察に通報してきたと言うことだった…

ドルリー・レーンからのメール    
園田修一郎
ミステリーの書評を中心としたホームページ「みすてりー・ろぐいん」の管理者ドルリー・レーン。ある日のことホームページのチャットの登録者宛にレーンからメールが届く。
5月の連休にオフ会を開催し、そこで誰がドルリー・レーンかを参加者同士推理して当てるゲームをするというのだ。当日集まったのは老若男女8名で、いったいこの中の誰がドルリー・レーンなのか…

時間を売る男    
堀内胡悠
東北本線東仙台駅は仙台駅の1つ隣りだが、ひっそりとした小さな駅で改札も列車到着時に駅員が出て乗車券を回収するだけ。その駅前にコンビニがあって、そこに毎日のように同じ下り列車から降りて十数分雑誌を読み、再び切符を買ってさっき降りた次の下り列車に乗車するサングラスをかけた学生風の男がいた。
コンビニの店員はなぜその男が毎日そんな無駄な行為をするのか不思議に思い頭を捻るが…

最終バスの乗客    
坂本富三
K駅発O橋行きの最終バスの常連客藤沢公平。その夜も最終バスに乗ると顔見知りの常連客から話しかけられた。その男は片品と名乗り、3ヵ月半ほど前にこのバスの終点O橋のバス折返場で起きた女子高生殺人事件、1ヶ月前に同じ場所で起きた最終バスの運転手殺人事件の犯人を推理しようと話しかけてきた。
女子高生殺人事件は最終バスで帰ってきた女子高生が、淋しい折返場の脇の草叢で扼殺死体となって見つかったもので、バス運転手殺人事件は最終バス車内を掃除していた運転手が背後からナイフで刺し殺された事件で、どちらも未解決であった。
片品はこの2つの事件の犯人を推理しようというのだ。

問う男   
林泰広
クリスマスの日にマンションの自室で射殺された女。部屋ではその夫の大学教授も背中を同じ拳銃で撃たれて倒れていた。夫の教授のほうは病院に運ばれて手術を受け、幸い命の別条はなく体も回復した。
教授の証言によれば、部屋に入ったところいきなり背中に衝撃を受けてそのまま壁に叩きつけられ意識を失ったという。その瞬間、頬に大きな傷のある凶悪そうな犯人の顔を見たとも言った。
その証言をもとに逮捕されたのは猪田というヤクザ者。猪田はほかにも連続強盗殺人を犯しており、その後死刑が確定した。だが、猪田はほかの殺人は認めたものの教授の事件だけは頑強に否認。
やがて、事件の犯人は猪田ではなく教授ではなかったかという疑惑が浮上してきた。

溺れた人魚    
目羅晶男
バブル期に建てられた豪邸の2階は大きな温水プールになっていた。豪邸の主の女優はカナズチとの噂も合ったが、往診に来た医者の前でビキニに着替えて、医者をサンルームに待たせ境のサッシにプール側から鍵をかけて豪快にプールに飛び込んだ。
するとそれまでにこやかに泳ぎを見せるんだ張り切っていた女優が溺れ、サッシの鍵が邪魔をして医者も助けにいけず、ついには女優は溺れ死んでしまった。さて女優の死は事故か、自殺か、殺人か…

氷上の歩行者   
琴平荘介
冬の戸隠高原の別荘で年末年始を過ごす本格推理作家の大御所鴻崎秦三。今年の冬はいつもの年とは違い、秦三の娘の千尋の結婚相手を決めることになった。
候補は4人。ホラー作家、ミステリ作家、編集者、内弟子だったが、秦三は4人に短編本格ミステリを書かせて、そのコンペで最優秀だった者を千尋の結婚相手とすることにした。
作品を持って三々五々別荘にやってくる候補者達。最後のミステリ作家が作品を持って秦三の書斎のある離れに行くと、ミステリ作家はコーヒーを勧められそれを飲むと眠気を催し寝てしまう。
作家が気づいたのは翌朝、書斎の中では秦三がナイフで刺されて殺されていた。しかも離れの周囲の雪には足跡がなく、ナイフからはミステリ作家の指紋が出てきて…

あるピアニストの憂鬱   
霧承豊
ピアニスト井沢亮介は作曲を終えて缶コーヒーを買いに外に出た。そこで交通事故に合い、左手首を切断した。亮介は周りに集まった人に左手を捜すように頼み、その手を持って救急病院に向かい歩き始めたがすぐに道路の植え込みに倒れこみ意識を失った。
亮介は命は取り留めたが、左腕切断の重傷でピアニストは断念せざるを得なかったが、事故時の精神力は凄まじいものと言われた。その亮介には妻殺しの嫌疑が掛っていた。

我が友アンリ   
田辺正幸
1900年アメリカ、ペンシルベニアにあるハーヴァフォード大学の学寮で、ロシア人の学生イワンが密室になった自室で銃で撃たれ死んだ。
銃声が聞こえ寮生たちが30秒と間を置かずに駆けつけたが、閂をかけられたドアを破って入ってみると血まみれの状態で微かに息をしているイワンの姿があるばかり。
犯人の姿はどこにもなく、窓も内側から鍵が掛けられていた。イワンの手のひらにはローマ数字のTの文字がナイフで刻まれていた。
直後、教員棟でも銃声がして、学内に詰めていた警官が駆けつけるとオルロフ教授が殺されているのが見つかる。警官が駆けつけるまで、こちらも30秒とは経っていなかったが犯人の姿はなかった。
部屋は密室ではなく、オルロフ教授は背中から銃で撃たれていた。その銃はイワンを撃ったものだった。そしてオルロフ教授の手のひらにはローマ数字のUがやはりナイフで刻まれていた。

教授の色紙   
村瀬継弥
大学教授の話。あるとき大学教授の家に空き巣が入った。盗んだの現金とザル。犯人は後に逮捕されるが、ザルを盗んだのは犯人が無類のパスタ好きで、ちょうどザルが壊れたときで手近にあったザルをつい盗んだという。
実は犯人逮捕の決め手になったのは、教授の家のザルが犯人の部屋にあったからだった。しかし、そのザルはどこにでもある市販品で、大きな傷や特徴はなく、教授の家でも普通に使っていた品であった。
なぜ、そんなザルが教授の家のザルと特定できたのだろうか…


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