本格推理13・幻影の設計者たち

第6回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第2巻。ボーナスとして鮎川哲也のショートショート5編(「海彦山彦」「遺書」「殺し屋の悲劇」「ガーゼのハンカチ」「酒場にて」)を収録。
プロ達の夜会   
林泰広
中東の大物政治家が来日し観劇するために、その劇場は朝から水も洩らさぬ警戒態勢が布かれていた。開演2時間前に舞台上の照明用通路からアルバイトの証明係が転落死した。
事故か殺人か…警察は殺人とみた。しかし厳重な警備のために外部からは入れず、出演者やスタッフなど舞台関係者は舞台とその周辺で打合せをしていて、犯人の逃走経路は楽屋しかなかった。
その楽屋にいたのは主演女優一人だけ。物理的には犯人は主演女優ということになるのだが…

死霊の手招き    
飛鳥悟
郊外にポツンと建っている5階建てのマンション。深夜マンションの5階のベランダの外に空中浮遊している幽霊が目撃された。直後にベランダに人が現れて、空中浮遊している幽霊に引き寄せられるようにベランダから転落、死亡してしまう。
5階に住んでいたのはテレビ局のアナウンサーで、3日前に心霊特集の司会をやった直後から霊に取り付かれたようになり休んでいた。
この日は同僚のアナウンサーが見舞いに来たのだが、部屋は内側から鍵が掛り入れず、鍵を破って侵入してみると窓にも錠が掛って部屋は密室状態であった。アナウサーの死は幽霊によるものとしか思えなかった。

遺体崩壊    
城之内名津夫
もうすぐダムに沈むことになる村で起きた大臣殺人事件。村は1200人の全村民挙げてダム建設には反対で、殺された大臣はダム建設の視察にやって来た建設推進派。
大臣の死体は公民館の隣りの鍵の掛ったプレハブの建物の中にミンチ状になって刺殺されていた。だが、その日は村人総出で刃物供養という村祭りが行われており、村民全員にアリバイが成立してしまった。

猫の手就職事件    
南雲悠
警察庁科学警察研究所の採用試験の日の朝10時、時間指定の宅配便が試験官の一人大手のところに届いた。送付状はワープロ打ち、大手の名前もカタカナで、差出人は中野区役所福祉課の磯河となっていた。
不審に思いながらも大手が宅配便を開けると、中からは切断された猫の右の前足が出てきた。差出人の電話番号は本当に区役所のものだったが、磯河という職員はいなかった。悪質ないたずらと考えられたが…

黄昏の落とし物    
涼本壇児朗
K川と道路に挟まれてロウソクのように建っている10階建てのビル。1階には管理人室、2階以上は貸事務所だが、ぼろビルのために入居者は必ずしもまともな会社ばかりではないらしい。
管理人はビルの持ち主でもあり郊外に家があるが、単身で管理人室に寝起きをしている。相撲と酒が大好きだが仕事の方は適当で、屋上へのドアの鍵は開けっ放し、その屋上にはフェンスも何もない。
そのビルから、ある日の夕方ホームレスが飛び降り、下の道路を歩いていた女性の一人が巻き添えを食って死亡、もう一人の女性が怪我をした。飛び降りたホームレスも当然死んだ。事件はホームレスの飛び降り自殺ということで片付きそうになったが…

水の記憶    
八木健威
岡の上にある喫茶店の前には、丁度人が入れるくらいの大きさのイルカのオブジェがあった。それは三方から釣り竿のような支柱に支えられて空中にあり、鉄骨には3センチくらいのパンチングメタルがたくさん開いている。ほかに保守点検用の鍵つきの出入り口で、夜間は中に照明がともされて内側からライトアップされる。
ある年のクリスマスの日のイベントは、このイルカの中にプレゼントを入れ、サンタに扮した従業員が取り出して子供達に手渡すというものだった。
前日の夜にはイルカの中にプレゼントが運ばれ準備万端整ったが、翌朝鍵の掛ったイルカの中からはサンタの扮装をした従業員の死体が見つかった。しかもその従業員は溺死だったという。
また、その日の朝は雪が積もっていたが、イルカの周りの雪には被害者のものも犯人のものも、足跡は一つもなかった。

紫陽花物語    
砂能七行
沢山の紫陽花が前庭に植わっていることから、あじさい団地と呼ばれているマンションがあった。あじさい団地はもともとあじさい屋敷と言われていた旧家を取り壊して建てた物で、その3階にはあじさい屋敷に住んでいた老婆とその一家が住んでいる。
その一家のところは時々大きな荷物が運び込まれたり、運び出されたりしていた。そしてこの付近ではかなり前に頻繁に子供が行方不明になり、神隠しだと騒がれていたという。これらのことを繋げるとある想像が…

「青い部屋」に消える   
岡村流生
七色館というペンションに、真夏だというのに黒いコートに黒い帽子、サングラスとマスクという、いかにも怪しげな人物が客としてやってきた。怪人物は予約客で近藤博司と名乗った。
七色館は赤、黄、青など各部屋が七つに色分けされているためにそう呼ばれるが、近藤は青の部屋に案内される。近藤は夕食も断り、夕食後にペンションのオーナー幕田に部屋に来てくれるよう頼んで青の部屋に向かった。
幕田が夕食後青の部屋に向かうと、部屋は中から施錠されていて、合鍵で開くと中はもぬけの殻。しかも窓も内側から施錠されて密室状態だった。いったい近藤はどうやって部屋から出て、どこへいったのだろうか

信じる者は救われる    
谷口綾
キャベツ畑の中に建つ個人所有の祠。祀られているのは高さ三寸ほどの木像だが、鑑定してもらったところ数百万円の値打ち物。木像の持主が霊験あらたかな木像を祀って、近所の信仰の対象にしたのだ。
雪がうっすらと積もった早朝、持ち主が毎朝の習慣でお参りに来てみると木像がなくなっていた。しかも雪の周囲には足跡はなし。持ち主が昨晩通りかかった時に拝んだ際は無事だったという。そのころには雪が降り止んでいたので、泥棒は足跡を残さずに仏像を盗み去ったのだった。

クリスマスの密室   
葉月馨
英国でのクリスマスイブ。サンタの存在を信じない女性は屋敷中の出入口に内側から鍵を掛けた。この屋敷は窓には鉄格子が嵌っていて人の出入りはできない。さらにその女性は自室にも厳重に鍵を掛ける。
ところが翌朝目覚めると部屋の中にはプレゼントが置いてあり、屋根の上には煙突に向かって歩いたサンタの足跡が…

ある山荘の殺人   
湯川聖司
下界とは吊り橋1本で繋がっている山荘で行われたミステリ研の合宿。参加者はミステリ研全員の8名だが、1人は翌日からの参加。山荘に落ち着くとその夜から雨が降り出し、嵐の山荘になった。
夜10時少し前にメンバーの1人が見回ったところ吊り橋が落ちてしまったていたという。それから3時間ほどした午前1時、部屋で休んでいたメンバーの1人が殺されているのが見つかった。
殺されたメンバーは11時にはほかのメンバーとリビングで飲んでいて、少し休むといって自室に入り、1時までの間に殺されたものと考えられた。そして吊り橋は落ちていた。ということはメンバー6人の中に犯人が…

暖かな病室   
村瀬継弥
膵臓癌であと6ヶ月の命と宣告されて病床にある妻信子。信子は死の前に短大時代を支えてくれた恩人のAさんに会って、ぜひお礼を言いたいという。
信子は高校3年の秋に両親を交通事故で失い、親戚は冷たく、目指していた短大への進学を諦めなければならなくなった。そこに現れたのがAさんだった。Aさんは2年間に渡って毎月10万円づつの奨学金を出してくれた。しかもその奨学金は返済無用で、信子はそのお陰で成績優秀で短大を卒業できた。
今、死に直面した信子はずっと秘密にされてきたAさんい一目会いたいと夫の私に懇願した。信子はAさんの候補を担任だった宮崎先生、中学までピアノを習っていた近所に住む我孫子さん、それに大親友のクラスメート工藤夏子の父親の真澄氏の3人に絞っていた。いったいAさんは誰なのか。


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