本格推理12・盤上の散歩者たち

第6回「本格推理」募集の当選作品集で、2巻に分けて編まれたうちの第1巻。
閉じ込められた男   
雨月行
土手の上に建つ違法建築のアパート。そこの2階に住む原沢あゆみは、部屋を若いカップルに貸して金を取る、闇レンタルームをやっていた。
そこに泊まった藤田という男。池山という女と待ち合わせたのはいいが、深夜にあった地震でドアが歪んで開かなくなり、部屋からでることができなくなった。
だが藤田が閉じ込められている間に、池山は殺されていたのだった。池山は藤田との関係は遊びと割り切っていて、真剣だった藤田には動機があるが、藤田には部屋から出れなかったという奇妙なアリバイが成立してしまった。

塩の道の証人    
黒戸太郎
山梨県大月市内で見つかったワゴン車の中から見つかった死体は中萱涼子のものだった。車は彼女と夫の潤也が経営する会社の社用車で、涼子の専用車だった。
死亡推定時刻は10月27日午後4時〜6時、車が現場に放置されたのは10月27日の夜10時から翌朝5時までの間だった。動機の点から夫の潤也が犯人と考えられた。だが、潤也には27日から28日にかけて友人と長野県の信濃大町近くの木崎湖のキャンプ場にいたというアリバイがあったのだった。

南の島の殺人    
東篤哉
南の島S島で優雅な夏休みを送る大学の同級生柏原則夫から手紙が来た。則夫はS島の島内を散策するうちに、ある家に招き入れられてお茶を振舞われた。
1時間ほどその家の住人達と雑談をして、午後6時ごろにその家を出る頃には雨が降っていた。そこで傘を借りた則夫は、翌朝傘を帰しに行く。すると、その家の庭にあるパラソルの下で死体が発見されたという。
死亡推定時刻は昨夜の8時ごろ。則夫が出てから2時間ほどしてからだ。死体の主はハゲ頭の中年男だったが、不思議なことにその死体は一糸まとわぬ全裸であった。

湯めぐり推理休暇 伊豆湯ヶ島温泉編    
飛児おくら
温泉旅館の露天風呂からは下を流れる川が見える。我々とその男は露天風呂に浸かっていたが、その男が川を流れてきた死体を見つけ声をあげた。それは我々も一緒だった。
我々はすぐ死体の後を追った。その男は我々の後をついてきたが途中で転んではぐれた。我々は死体を見つけて引き上げると、なんとその死体はその男、本人だった。
なぜ死体を見つけた男が、途中まで我々と一緒に追いかけた男が、なぜ死体となっているのか。そんなことがありえるのか…

僕の友人    
堀内胡悠
僕のところに転がり込んできた友人接木。接木はアルバイトをしては世界中を廻り、時々日本に帰ってきては数ヶ月居候する。その接木に僕の大学の友人田所の不思議な行動を解いて貰うことにした。
田所は自分は自分、他人は他人という考え方で他人に手は貸さないけれど自分も助けてもらわない、自分のやることが終わるとさっさと帰るが他人が帰っても文句は言わないという人間だった。
そして好きなのはギャンブル、中でも麻雀には目がない。その田所が麻雀は断り、昼の食事に誘ってもこなくなった。心配して後をつけたところコンビニに入ったまま消えてしまった。いったい田所に何があったのか…

消えた指輪    
光原百合
浪速大学ミステリ研の4人、男3人女1人は浪速大学のセミナーハウスで夏の合宿。セミナーハウスにはほかに生物研究部、こちらは女3人、男2人のクラブが同宿しているだけ。
ミステリ研の紅一点桜子が風呂に行くと、そこで生物研の女性たちと一緒になり、4人仲良く風呂に入ることに。風呂は温泉なので、生物研の1人の指輪を外したほうがいいということになり、ほかに1人が持っていたポウチに入れる。女湯の脱衣場には内側から鍵を掛け4人で入浴。
だが、風呂から上がってポウチを見ると指輪が消えてなくなっていた。そして脱衣場の鍵は内側からかかったままであった。

店内消失    
風見詩織
道路を挟んで向かい合う位置にある軽食喫茶ポンヌフと珈琲専門店手回し風琴。ポンヌフの窓際に3人の女子大生が座った。人とも手回し風琴の常連だが、今日は手回し風琴の定休日のためにポンヌフに来たのだ。
何気なく向かいの手回し風琴を見ていると、1人の女性が手回し風琴の中に入っていき、格子の嵌ったガラス張りの電話ボックスに入った。そしてその女性は中からドアにシートを貼り付け目隠しを始めた。
不思議な行動にポンヌフの3人が手回し風琴に向かうと、電話ボックスは内側からシートが接着され、強引にドアを開けてみると中には出れもいなかった。
顔を見合わせていると、その時手回し風琴の窓ガラスを外から叩く音がした。皆がそちらを見ると、先ほど電話ボックスに目隠しをしていた女性が外から窓を叩いていたのだ。彼女は密室になった電話ボックスから消え、さらに店の外にまで脱出したのだ。

壁の見たもの   
獏野行進
作家の坂崎一雄が賞を取り、一雄の家で親しい人や雑誌関係者を呼んでホームパーティが行われた。そのパーティの最中に、一雄の娘久美の主治医橋口が猟銃で射殺された。橋口が殺された部屋は一雄の家の2階にあって、廊下に面したドアと久美の部屋に通じるドアと窓があった。
廊下に面したドアと窓はいずれも中から施錠され、唯一の出入口は久美との部屋のドアだけだった。だが久美は事故で車椅子での生活をしていて、助けを借りなければ車椅子にも乗れない。
久美はベッドので震えていて、久美との間のドアからは誰も出入りしていないといい、久美自身もベッドにいたために車椅子に乗って橋口を殺しにいけなったのはあきらか。では誰がどうやって橋口を殺したのか…

ホームにて    
寺崎知之
夜中の駅を通過する回送電車がホームから飛び込んできた男をはね、男は体中に傷を負って死んだ。男は会社の部長で、その夜部下の2人と酒を飲み、酔っ払って部下2人に抱えられるようにホームに立っていた。
2人の部下によると部長は、回送電車が入って来る直前にいきなり元気になり、部下の腕を振りほどいてずんずんと前へ出てホームから落ち、そこを電車にはねられたのだという。いったいこの事件は、事故なのか自殺なのか殺人なのか…

DEATH OF A CROSS DRESSER 女装老人の死   
鈴木康之
大金持ちの老人ウィリアム・アルダーが密室で死んでいた。密室と言ってもドアの取っ手のボタンを押すとロックするものだから、密室自体の謎はほとんどない。ただ不思議なのは老人が室内で頭をハンマーで叩き割られたうえ、ガスの元栓が開かれ、さらに睡眠薬を飲んでいたことだった。
老人の体からはガスが微量に検出され、犯人はガスの元栓を開いてから老人を殴り殺したことがわかった。さらにもっと不可解だったのは、老人が下着から全て妻の服を着て女装し、化粧までしていたことだった。

地雷原突破   
石持浅海
ベルギーのブリュッセルで行われた地雷除去のNPO法人のパフォーマンス。イベント担当の出たがりやサイモンが、仮説の地雷原を歩いて、地雷を踏まずに歩くことの難しさを訴えるという企画だった。
イベントだから多くの地雷が埋められたが、その地雷はもちろん処理済のもので、踏むとブザーが大音量で鳴るように改造されていた。
サイモンは最初の5mほどは地雷を踏まずに歩いたが、次の一歩で地雷を踏んでしまった。しかも踏んだのがなぜか本物の地雷で、サイモンは吹き飛ばされて暫くして死去した。
ベルギー警察では捜査の結果事故と判断したが…

翼ある靴   
赤井一吾
官能サスペンスの巨匠といわれる作家徳塚水男が自宅で死んだ。床に落ちたものを拾おうとしたところに、不安定な状態で置かれていたブロンズ像が落下し、頭を打って死んだと考えられた。
だが一方で殺人ではないかとも考えられていた。しかし家の周囲には雪が降り積もっていて、その上には徳塚が昨夜帰って来て歩いた足跡と、死体発見者である担当編集者が門から自宅まで歩いた足跡しかついていなかった。

霧湖荘の殺人   
愛理修
S湖畔にある里村家の別荘霧湖荘に集まった人々は全部で6人。そこで起きた殺人事件、殺されたのは金融業を営む里村家の当主晃一だった。
晃一は夕食前に自室で殺されたが、その部屋に通じる廊下は死体が見つかるまで常に誰かの目に触れていて、人の出入りはできなかった。窓は開いていたが鉄格子がはまっていて、これも人間は出入りできなかった。
だが晃一はハンマーで数回殴られて殺されていて、とても人が直接部屋に入って殴りつけなければできない状態で死んでいた。


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