本格推理11・奇跡を蒐める者たち

第5回「本格推理」募集の当選作品集。
イエス/NO   
有賀南
世間で話題になっている横浜のR家連続殺人事件を解決に導いた名探偵風魔京太郎。週刊誌でも大きく取り上げられている、今をときめく京太郎だが私は京太郎と学生時代に不思議な会話をしていた。
わたしが学生食堂で雑誌を見ているうちに転寝をし、目が覚めた時に近くにいたのが京太郎だった。京太郎はわたしの様子と持っていた雑誌から、昨日の私の行動を推理していったのだが…

屈折の殺意    
佐久島憲司
正月2日に中小企業の工場で起きた火災。工場の建物は全焼し、中から女性の死体が見つかった。女性は工場の従業員であったが、火事で死んだのではなく、火事の3日くらい前に扼殺されていたと推定された。
警察は殺人事件として捜査を始めるが、年末年始で工場は休業中、入口には鍵がかけられており、その鍵は社長が持っているだけだった。その社長は取引先の人間と一緒にハワイでバカンス中。
一方、火災保険金の支払請求を受けた保険会社は高額物件のために調査員を派遣。建物は5千万、特殊金属加工の機械2台が1億の請求であったが、調査員は機械の型が申し込み時と違うのに気づく…

黄金の指    
目羅晶男
医科大学教授、医局長、それに試験でできの悪かった学生の3人が新幹線グリーン車に乗車。医科大学教授は全国にファンがいるほどの人間で、各地に教授に命を助けられた患者の会があって、この日も名古屋での患者の会の忘年会に出るために新幹線に乗っていた。医局長はお供、学生は彼らのかばん持ちというわけ。
そのグリーン車の教授のもとに黄金の指を持つ男が現れ、教授を罵倒して前の車両に向かう。医局長と学生が後を追いかけるが前の車両の乗客たちは、誰もこなかったと口を揃える。
ではトイレだということになり、見てみると使用中。ドアをたたくが応答がなく、車掌を呼んで鍵を開けさせる。すると中には黄金の指の男の着ていた洋服があるばかり。黄金の指の男はトイレの中から消え失せていた。

JKI物語    
司直
ダイイングメッセージもの。大学教授が自宅の書斎で殺される。書斎にあった砂糖壺の中に青酸カリが混入されていて、その砂糖をコーヒーに入れて飲んだ教授が絶命したのだ。
その日は教授の娘の誕生日でパーティが行われる予定で、容疑者は教授の妻と娘の有璃、それに招待客の下田、垣野の有の友人の2人の女性と梨元、水田、橋本の3人の男子学生。教授は死に際にJKIとメモ紙にダイイングメッセージを残していた。

完全無穴の密室    
飛鳥悟
ぶら下がり健康器で首を吊って死亡した女性のマンションの部屋は、唯一のドアは中からも鍵がかけられ、窓もクレセント錠が閉まっていた。女性は自殺と考えられたが、笠井警部は遺書がワープロで打たれており、女性が死の直前に部屋の中で洗濯をしていたことから自殺に疑問を持つ。
しかし、部屋は密室で外部とは完全に遮断されていて、工作は不可能だった。例えばドアには郵便受けはなく、換気扇は建物内のダクトに繋がっていて、排水溝も鍵のかかった管理室に繋がっているという具合だった。
殺人とすると犯人は、どうやって外に出たのだろうか…

さわがしい兇器    
矢島麟太郎
冬季五輪を控えた長野のある研究所。実験室では日本選手が着るスキーの公認ウェアを選考する実験が行われた。メーカ各社のウェアを着た元スキーヤーの男が、午前中は氷点下30度の実験室内で、午後は雨を降らせたうえ摂氏30度の中で、いろいろな動きをして公認ウェアを選考することになっていた。
午前中の実験が終わり、昼を挟んで午後の実験に入ると、突然天井から吊り下げられていた100s以上ある降雨装置が落下して、実験中の男性を押しつぶしたのだ。
男性は即死。装置を調べると天井から吊り下げている4本のワイアのうち3本が切れていた。ワイアの経年劣化と考えられ事故として処理されたが…

キャンプでの出来事    
小松立人
キャンプに来た大学の同好会の4人の男。キャンプ場所は山奥でトイレ設備すらなく、電話や店などはおろか周囲には何もなく、ただただ緑が広がるばかり。
夕食後に中の一人がゲームを提案。ほかの3人がある言葉を決めて、それを外部の人間に伝えられるるかどうかというのがその内容。共犯者はなく言葉も好きに決め、伝える相手は誰でもいいということだった。
翌日キャンプが終わって4人で伝えたい人のところに直行し、その言葉が伝わっているかどうかを確かめる趣向。決めた言葉は、夕食時に起きた4人しかわからない内容で、伝える相手は同好会の先輩と決まった。
翌日、先輩のところに行くと決めた言葉は見事に伝わっていた。ほかの3人は悔しがると同時に不思議がる。ゲームをやることを決めてから以後、ゲームの提案者は3人の誰かに常時監視されていたのだった。

この世の鬼   
赤井一吾
ミステリー好きの叔父金太郎を殺すことに決めたミステリー好きの男桃太郎。金太郎はミステリー好きらしく窓が一つもなく、唯一の出入り口がドアだけという図書室を持っていた。図書室には鍵がついているが、桃太郎が知っている限りこの鍵が使われたことはない。
桃太郎は金太郎を図書室で刺し、金太郎の息のあるうちに図書室の外に出て、金太郎が内側から鍵をかけて絶命するという密室殺人事件を計画。ところが金太郎もさる者で…

暗い箱の中で    
石持浅海
コンピューターソフト製作会社の女子社員の送別会。参加者は送られる本人のほか、同僚の男性3人と女性1人。5人は会社前で待ち合わせて会場に向かうが、1人が忘れ物をしたことに気づいて会社に戻ることに。
5人でエレヴェーターに乗り会社に向かったが、地震が起きてエレヴェーターが自動停止。古いビルの旧式のエレヴェーターであったので、中は真っ暗でドアも開かなかった。どうやら階と階の間で停止したらしい。
何とかしようと暗闇で騒ぐ5人だったが、やがて女性の一人がうめくと床に崩れ落ちた。男子社員の一人が持っていたライターで照らしてみると、うめき声をあげた女子社員の胸にはナイフが深々と突き刺さり、絶命していた。

怨と偶然の戯れ   
鈴木康之
開館前の公立図書館でスプリンクラーが作動し、1階が水浸しになった。その中から館長の死体が見つかった。館長は毎朝、開館前に1階の片隅で新聞に目を通す習慣で、そばには新聞綴じ込み用の千枚通しがあった。
その朝も館長がいつものように新聞を読んでいる時に、スプリンクラーが作動しその水圧で館長が床に倒れ、千枚通しが落ちてきて首に突き刺さり絶命したのではないか、つまり事故であるというのが警察の結論だった。
しかし、そんな偶然が本当に起こりえるのだろうか。さらにスプリンクラーは、本当に誤作動なのだろうか…

魔術師の夜   
由比俊之介
上司2人と地方出張した平山君は居酒屋で酔いつぶれて寝てしまう。その間に、上司2人は平山君を置いて夜の町に繰り出していってしまった。やがて気づいた平山君は、初めての町を酔った足で歩く。
昼間も見たガラス張りのビルとホワイトのビルの近くまで来ると、野次馬がたくさんいて何かあったようだ。ここで平山君は猛烈な尿意を催し、たまらずホワイトのビルに入る。
そこの1階は扉もついていず、廃墟のような雰囲気で、床に食べ散らかした痕もあったがエレヴェーターは動いていた。トイレを探してエレヴェーターに乗り、5階で降りて用を済ませた平山君。
5階はどこかの会社らしく、興味を持って机の引出しを開けると拳銃があった。驚いていると5階の主達が帰ってきた音が。平山君は慌てて退散し、4階の片隅に隠れるが酔いも手伝って眠りこけてしまう。
翌朝ビルを出た平山君。ビルを出たところで町の人たちの轟々たる批難を浴びる。それに驚いて背後を振り返ると、ビルの色はホワイトではなくグレーになっていた。
さらにガラス張りのビルと反対側にあったはずのグリーンのビルが跡形もなく消えていた。昨日は確かにグリーンのビルはあったのに。平山君の摩訶不思議な一夜の物語。

つなひき   
魚川鉾夫
鎌倉のG学園に通う高橋保君の叔父がかつて書いた暗号小説を学校にもっていったところ、それがきっかけで生徒達の間でミステリー研究会が作られることになってしまった。
だが入会希望者が多く、入会試験をやることに。保君はきっかけ作ったということで、試験問題の作成をさせられることになったが、そこに救いの手を差し伸べてくれたのは西乃城良和君。
西乃城君の作った問題を解くと入会受付けの場所がわかるというもの。ところが西乃城君は、どこかに転校してしまい、試験の解答自体がわからなくなってしまった。
西乃城君の問題は鎌倉の中心部をあちこち歩き回るルートを詳細に記した文章で、地図が添付されていた。文章どおり地図に歩いた跡を書き込んでみると…


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