本格推理8・悪夢の創造者たち

第4回「本格推理」募集の当選作品集で、3巻に分けて編まれたうちの第2巻。
長雨   
知念俊太
大学の推理小説研究会の男女4人が、山奥の屋敷を訪ねる。会員の一人留美の従妹和子が結婚して、夫大樹と山奥で生活を始め、留美の縁で研究会の4人が訪ねて行ったのだった。
大樹夫妻と4人の最初の夕食が終わり、大樹が書斎に引き上げて暫くすると、書斎から火が出て激しく燃え出した。しかし書斎のドアには内側からチェーン錠がかけられて開かない。
皆で蹴破って、その後消火器でなんとか火は消し止めたが、焼け跡からは大樹の焼死体が見つかった。大樹は椅子にかけて死んでいた。状況から自殺と考えられたが…

中途半端な密室    
東篤哉
黒覆面の暴行魔が跳梁する町。今夜も暴行魔の襲われかけた女性が保護された。この女性に対しては暴行未遂に終わったらしかったが、女性は襲われたショックで失語症になってしまっていた。
ちょうど同じ頃に町では有名な不動産業者の社長が公園のテニスコートで、ナイフで腹を刺されて死んでいた。テニスコートは4メートルの金網で四方を囲まれた長方形で、その中央に死体はあり、あたり一面を血が染めていた。
テニスコートの唯一の出入口には内側から鍵が掛けられていて、屋根はないものの一種の密室状態であった。テニスコートの殺人と暴行事件は果たして関連があるのだろうか…

誰にもできる密室    
愛理修
大御所の本格推理作家早瀬川匠は山村に居を移して、ここ数年新作も発表せずに後進の指導と評論活動など明け暮れていた。その山村の早瀬川の家に後進の推理作家や大学生が集まった。
中に一人招かれもしない棚橋が混じっていた。棚橋はかつて新進気鋭の若手推理作家として文壇にデビューしたが、今は落ちぶれ住所も不定で良くない連中との付き合いが噂されていた。
その日の棚橋は皆に憎まれるような口ばかりきき、最後には早瀬川の怒りを買って部屋に閉じこもった。翌朝、棚橋の死体は閂の掛った部屋の中で発見された。
いつまでも起きてこない棚橋を不審に思い、皆で部屋のドアを斧で壊して死体を発見したのだった。閂は針と糸で細工をして外から掛けたものとすぐにわかったが…

そして誰もいなくなった…のか?    
黒田研二
雪崩に遭ったスキーヤー達は何とか白銀山荘にたどり着いた。山荘は極端に不便な場所にあるために客はなく、その代り雪に埋もれてしまって外部との連絡は一切不能だった。
そこで連続殺人が起こる。最初に殺されたのは体中をナイフで刺された管理人で、以後次々とスキーヤー達が殺されていき、最後に残ったのは…

白の方程式    
大木智洋
数センチの新雪に覆われた推理作家の屋敷。前夜、この作家の誕生パーティが開かれ、夜半にお開きとなったときには雪がまだ降っていた。
パーティーが終わり作家は邸内の離れへ向かい、ほかの客たちは思い思いに時を過ごした。やがて雪がやんで翌朝のこと、客の一人が毛布に包まれた死体となって庭の雪の上に横たわっているのが見えた。
作家の娘と客の一人が駆けつけるが、そのとき新雪の上には被害者の足跡が一組残っているだけだった。

ベッドの下の死体    
進見達生
海岸のペンションで起きた怪事件。
ペンションの2階にあるのは5部屋。1号室から3号室には会社の慰安旅行の連中。1号室は2人の女性。2号室は2人の男性。3号室は1人の男。4号室は夜遅くに若いカップルがやってきた。5号室には学生風の男が一人…というのが当夜の泊り客。
3号室の男は、あまりに気持ちのいい夜なので海岸のデッキチェアで寝ようとするが雨が降り出し慌ててペンションへ。3号室に入ったものの寝付かれず、ふと二段ベッドの下を覗くとそこには1号室の女の一人が死体となって…

少年、あるいはD坂の密室    
小波涼
母子家庭の中学生の男の子が突然引きこもりになった。母親は子供の相談相手を探し、その相手に選ばれたのは万年探偵事務所の助手小波涼。
引きこもりの背景には仲の良かった友達孝幸の自殺と、その一週間くらい前に起きた孝幸の母親の自殺が関係しているらしいが…

金知恵の輪   
山沢晴雄
個人商店社長で詰め将棋の好きな葉山八郎が自宅で殺された。葉山の手にはこの日手に入れた将棋の駒の金将が握られていた。
この日の夕方6時50分に将棋の駒を預かった葉山の部下の女性は、7時5分に葉山の家に着き将棋の駒を渡した。その時間には葉山が生きていたことは間違いないと女性は証言。
その後、葉山は殺されたわけだが、7時5分以後関係者のほとんどにはアリバイがあった。唯一人アリバイがあやふやな男が、金村将夫。葉山の手に握られた駒は金村将夫を示すのだろうか…

南伊豆ミステリー館紀行    
友杉直人
南伊豆にあるという人を喰う別荘。かつて2度ほど滞在した人間が、どこかに消えてしまい、そのまま行方不明となったいわく付きの家であった。今度、その別荘を売りに出すことになった持ち主は、人を雇って迷信を否定しようとする。
アルバイトが雇われて、一週間その別荘で一人すごすことになった。毎日電話連絡を定時に行うことにして、6日目までは何事もなかったが、7日目は連絡なし。
持ち主とその従妹が2人で列車を乗り継いで別荘に来ると、出入りできるところは全て中から鍵のかかった状態であった。しかたなく裏口のガラス戸を破り入ってみると、別荘内はもぬけの殻。
アルバイトの荷物はそのままで、ダイニングはビールを飲みかけた状態のままだった。またまた別荘は人を喰ったのだろうか…

おしゃべりな死体   
剣持鷹士
傲慢不遜な不動産業者大徳寺豪蔵が自宅の瞑想室で殺された。瞑想室とは絨毯以外何もない部屋で、豪蔵は週に数回ここに籠って瞑想するのが習慣であった。
瞑想室は鍵はかからないが完全防音であり、豪蔵が瞑想中は何人も近づくことは許されなかった。豪蔵の死体は顔を正面からゴルフクラブでめちゃくちゃに殴られて原形をとどめないほどだった。
容疑者は3人。捨てられることが確実な愛人、娘婿で会社の常務、古くからの不動産業者で皆それぞれ豪蔵の死を願っていた。犯人を特定するにあたって最も大きな謎は、豪蔵の顔がなぜめちゃくちゃにされていたかだった。

殺意の館   
大石直紀
雪の積もった夜、屋敷で女が殺された。女は奥村やよいと言い、奥村物産前会長奥村雄造氏の後妻で、2年前に雄造が死んで未亡人になっていた。
動機を持つものは5人で、全員が家のどこかにいた。やよいの部屋のドアには内側から鍵がかけられ、庭からのガラス戸が唯一の出入口であった。
ところがガラス戸の外の雪の上には足跡が一つもついていなかったのだ。やよいが死んだのは雪がやんでからということは確認されていて、故に密室殺人となってしまった。

二隻の船   
林泰広
クリスマスの夜、あるビルで殺人事件が起こる。殺されたのは私立探偵だが、裏ではゆすりを行っていた。凶器は被害者の趣味であったボトルシップで、それで頭を強打されていた。
殺人があった時にビル内にいたのは被害者とそこを訪ねた一人の女性、それに別の階にあるコンサルティング会社の社長の3人。
女性はその後に自首し、被害者にゆすられていて、ボトルシップで被害者を殴り、さらに金庫から証拠物件を持ち出したことを認めている。しかし…


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