本格推理7・異端の建築家たち

第4回「本格推理」募集の当選作品集で、3巻に分けて編まれたうちの第1巻。
ウルヂの壺   
司十巳呂
漬物屋天屋の工場にあるウルヂ漬という漬物の壺から見つかった死体。たまたまテレビの取材が入り、漬物の壺を特別に開けたところ死体が出てきたのだ。
死体は2週間ほど前から行方不明になっていた従業員のものであったが、その従業員は百キロを越える体重の持ち主。どうやって壺の中に入ったのだろうか…

三度目は…    
黒戸太郎
かつてボランティア活動で知り合った5人が、そのうちの1人加奈の別荘に招待される。加奈は大企業の社長の娘で、その別荘も自由に使えたのだ。加奈には足の不自由な姉加代がいて、姉妹は仲良く、加代とほかの4人もすぐに打ち解けた。
そして加代が別荘の自室からの消失に挑戦すると言い出した。ビデオカメラを加代の部屋に向けてセットし、モニターを他の5人が一晩中監視する。モニターも3室に3台用意されていて、誤魔化しようがなかった。
加代が部屋に入ると同時に監視が始まり、翌朝まで続けられた。そして加代は見事に部屋から消失した。種明かしがあり、続いて2度目の挑戦。今度も消失に成功し、再び種明かし。そして3度目に挑戦するが…

骨の過ごした日々    
雅鶇二
列車の中で偶然に座り合わせた元刑事と青年。元刑事は現役時代に迷宮入りになった事件を青年に話す。女子高生が警察に来て、子供の頃に男の子が首を絞められている現場を目撃したが、それが最近夢に出てくると訴えたのだ。
そして女子高生の話した現場の土を掘り返してみると、そこからは成人男子の白骨が見つかった。15年近くの間に男の子の骨は土の中で成長したのか…

漱石とフーディニ    
砂山マモル
明治のころ、アメリカでフーディニと知り合い奇術を交換し、その後日本に帰って活躍を始めたハリー・久保田。だが人気が出始めた矢先に、ハリー・久保田の最愛の娘がわずか5歳で馬車に撥ねられて死んでしまう。
馬車は政府高官のもので、ほとんど轢き逃げに近かったが、時代が時代で処罰などはされなかった。ハリー・久保田はその事件後、精神に異常をきたし、暴力を振るうようになって、病院の拘束室に拘束着を着せられて入れられるが、そこで自殺をしてしまった。
ロンドンでショーをしていたフーディニは、客席にいた日本人夏目漱石を呼びとめ、ハリー・久保田の自殺を聞き、悲しげな素振りをして漱石に事件の顛末を調べてくれるように頼んだ。

展望亭の殺人    
加藤元昭
富豪の屋敷展望亭は、その名の通り8階建ての建物であった。エレベータが二基あり、各階のエレベーターホールには花の絵が架けられていて、階数のほかにすみれの階とか桜並木の階などと絵にちなんだ優雅な名称で呼ばれていた。
ある朝、7階の部屋で富豪の娘の絞殺死体が見つかる。7階は水蓮の階で、昨夜被害者は深酔いして部屋に送り届けられたのは間違いなかった。
しかも現場の部屋は密室で、部屋の鍵は1つだけ。その唯一の鍵は被害者の脇に落ちていた…

時計の家事件    
中野理香
時計の家と呼ばれる円形の建物は、中を12の部屋に区切られていて、それぞれ部屋のカラーが決まっていた。部屋のカーペットやカーテン、調度類などは全て部屋カラーで統一されていた。
その時計の家は毎年大学のミステリ研の合宿が行われ、今年もミステリ研の面々がやって来た。そして中の1人がオレンジの部屋で首を絞められて殺されていた。しかも現場は中から閂までかけられた密室であった…

孤島の殺人    
湯川聖司
大学のミステリ研究会の合宿が、個人所有の孤島で行われた。孤島に建つ唯一軒の建物でそれぞれ部屋割りが決められるが、最初の夜に殺人が起きる。
部屋の窓には内側から鍵が掛り、ドアにも鍵が掛っていた。部屋の鍵は2本あり、1本は被害者が持ち、もう1本はメンバーの一人がほかの部屋の合鍵とともに纏めて管理していた。
その合鍵の所有者は、夜中に被害者の部屋の外でなにかゴソゴソやっているのを目撃されていて、当然疑いがかかるが犯行を断固否認する。
さらにメンバーのうちの1人がそわそわしたそぶりを示しだす。何かを隠しているように。そのメンバーがやはり翌朝死体で発見されて…

妻は何でも知っている2   
大友瞬
3階建ての小さなマンションがある。1階の端の部屋は管理人室で、元刑事の管理人と警察官が3人30分ほど管理人室の外で立ち話をしている。
マンションは外廊下、外階段で管理人室の脇に階段の上り口がある。立ち話をしている間に階段を出入りしたものは誰もいない。その階段以外に2階以上に行く手段はない。
そして2階の部屋から男の大きな悲鳴。管理人と警官が駆けつけると開け放された部屋の中には、喉をカッターで切り裂かれた男の死体。死んだ直後であることは明らかだった。
犯人はどう考えてもその当時2階以上にいた人間であった。そして被害者は部屋のポスターの女性の顔に、自身の血で八の字髭を書いていたのだった。

しおかぜ17号 49分の壁    
我妻起成
四国の地図と思われる地図にAとB二つの点がある。Bは殺人事件の現場で、Aは事件の6時間ほど前に容疑者がいたところ。容疑者は免許は持たず、高所恐怖症だから車や飛行機で移動したのではない。
船では時間的に不可能。よって鉄道による移動しか考えられないが、それも不可能。容疑者にはアリバイが成立してしまったのだが…

密室のゆくえ   
九院理
テレビ局の郊外にあるサテライトスタジオ。そこの敷地の一角に守衛室と倉庫が一棟として建っている。倉庫はペンキを塗り替えたために、現在使用禁止になっていて、ドアも換気のために開放しておくことになっていた。
ところが守衛室にいた守衛の耳に倉庫から人の声が聞こえた。守衛が駆けつけると倉庫のドアが閉じられ鍵が掛っていた。
守衛は守衛室に鍵を取りに戻り、ドアを開けるとガランとした倉庫の中で、梁から首を吊った男がいた。守衛は驚いて連絡に戻ったが、その死体は自殺体ではなく、胸を刺されて死亡した男を吊ったものだった。
したがって殺人ということになるが、犯人はなぜそんなことを…

壁に消えた男   
利根祐介
同窓会の席上、川添君から壁を抜けられるかどうかの挑戦を受けた僕。壁を抜けられたら川添君の勝ち、抜けられなければ僕の勝ち。一週間後に川添君の家で壁抜けが行われることになった。
川添君の家に行くと、川添君は白のジャージの上下に身を固め、壁も天井も床も真っ白で、ほかには何もない部屋から抜けると言い、いきなり「挑戦を受けてみろ」と走り出した。
僕を始め同窓生達が後を追うと、白い部屋のドアは開け放たれ、その前に川添君が着ていた白のジャージが落ちていた。ジャージを拾った僕たちは、部屋に入り、僕はドアのところにたって川添君が抜け出すのを見張り、ほかの皆は川添君を探したが、川添君はどこにもいなかった。川添君はほかの部屋にいて、壁を抜けてきたと言うが…

真冬の夜の怪   
吉田元紀
山中に立つ古い洋館、そこに集まった若者達。時はクリスマスで、東京では雪が降りホワイトクリスマスとなったくらい寒気が厳しい。
夜中までパーティで騒ぎ、各々部屋に引き取ったその翌朝、庭の木の天辺にメンバーの一人が木に突き刺さって血を流しているのが洋館の窓から見えた。
絶命しているらしくピクリとも動かないが、不思議なことに木の周囲の地面には足跡が一つもなかった。被害者の足跡すらもだ。昨夜から雨になり、雨は夜半に止んだために、木の周囲は雨に濡れてぬかるんでいた。
事件は自殺や事故とは考えられず、どうやって犯人は被害者を木に突き刺したのだろうか。


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