本格推理6・悪意の天使たち

第3回「本格推理」募集の当選作品集
閉ざされた山荘にて   
紫希岬真緒
金持ちの令嬢のバースデーパーティーが山荘で開かれる。そこに招待されたのは男女合わせて6人。パーティーの最中に嵐になり、部屋に一人引き上げた令嬢が殺されているのが見つかる。
令嬢は着ているものは下着以外全て逆に着せられ、部屋の本や絵が逆さまにされ、テーブルに置かれたバースデーケーキも上下逆さにされて、テーブルをクリームで汚していた。

やさしい共犯    
吉野桜子
大学のミステリ研のメンバー4人が喫茶店で話をしている。少し離れた席に、やはり男女2人づつの4人が話をしていた。やがて、その4人が席を立ち喫茶店から出るが、そこでそのうちの1人が倒れてしまう。走って来た車をよけそこなったらしい。
ミステリ研のメンバーの1人黒田は、それを見て「シャロット姫がいたのや」と言い出し、救急車で運ばれる倒れた女性の後をバイクで追った。

雪かきパズル    
唄川昼仁
雪の積もった山荘でカルチャーセンターの合宿が行われる。そこで起きた講師の殺人事件。講師が殺された直後にリビングでビデオを見ていた男も、頭を殴られて気絶させられた。さらに暖炉では何かを燃やした跡が。
容疑者はカルチャーセンターの生徒4人。犯人は誰なのか…

殺しのからくり    
中野隆夫
東京の真ん中にある小料理屋つたやに何者かが侵入し、主人清一郎を殺して逃げた。事件は最初密室殺人かとも思われたが、つたやには歌舞伎通の初代清左衛門が座敷に作らせた、せりを模したからくり仕掛けがあり、犯人はそこから逃走したと考えられた。
だが、からくり仕掛けは中からしか操作できず、犯人はどうやって中に入ったのかがわからなかった。

不思議と出会った夏    
依早生加津朗
昭和30年の夏、田舎で過ごした喜敬君は祖父から村の近くにある天狗山には絶対に登ってはいけないと釘をさされる。天狗山には、時々天狗のかがり火と呼ばれる赤い光が燈り、その後で山に入ったものは行方がわからなくなった。
だが、喜敬君は一人で山に入ってしまった。そして頂上に着いたが、その時赤い光を見、その直後に大きな音がして気を失った。気がつくと頂上にあった大きな岩が半ば土に埋まっていたが、それよりもその近くに天狗が何者かを背負ったシルエットが浮かび上がり仰天した。
一目散に山を降りて、祖父の家に戻ると、村では若い娘が行方不明になったと大騒ぎ。その娘は離れに入ったが、出た足跡がないのに離れから煙のように消えていた。
村でも天狗のかがり火は確認されていて、天狗の仕業と皆が恐怖していた。喜敬君が山で見た天狗の背中に背負われていたのは行方不明の若い娘だったのか…

犬爺さんの事件    
霧承豊
焼き鳥屋で見ていた幽霊特集のテレビ番組で、犬爺さんと呼ばれる老人が死んだ話が放送されていた。犬爺さんは、ある日となりの家に鎌を借りに来て、その直後に夏だというのに白の長袖長ズボン姿で屋根に上がり、狂ったように踊っていた。
隣の家の住人は気味悪がってそれを見ていたが、やがて自分の家に入った。それから少しして犬爺さんが死んだのだった。犬爺さんは犬小屋の中で、鎌を腹に刺して死んでいた。だが、爺さんの死因は鎌によるものではなく窒息死。
犬爺さんの住む家は、江戸時代に舞踏の先生の屋敷があったところで、その先生が惨殺されて以来、祟りのある地所とされていた。その幽霊が犬爺さんにとりついたのだろうか…

よりによってこんな時に    
紫苑明日香
大沢家の三兄弟、卓、充、亨は全員が背が高く、その姿はよく目立っていた。卓は美容院のチェーンを経営して順風満帆であったが、経理担当の役員が金を横領して行方をくらまし、事業を清算するハメになった。
充は平凡なサラリーマンで、亨は貧乏劇団に属していた。卓の背負った負債は、卓の妻の泉が、かつてパリで買ったフジタ画伯の絵が本物とわかり、その絵を画商に売ることで、精算できる見込みであった。
そんな矢先に卓が行方不明となり、2ヶ月ほどして栃木県の山中で死体となって発見される。行方不明の直前に卓は怪我をしたらしく、松葉杖をついて歩いている姿を多くの人に目撃されていた。
さらに卓には多額の生命保険がかけられていることがわかり、動機の面から二人の弟と妻の泉に疑惑の目が向けられるが…

サンタクロースの密室   
羽月崇
孤児であった私は、ある教会の神父さんに育てられた。教会には私のほかに4人の孤児が一緒に暮らしていた。6歳の年のクリスマスの日、私は里美お姉ちゃんと一緒の寝室で寝た。
その寝室には内側から鍵をかけ、一つだけの鍵はお姉ちゃんがどこかに隠した。そして私とお姉ちゃんは手首を紐で縛って、一緒のベッドで寝た。こうしておけば、夜中にお姉ちゃんが鍵を開けようとしても、私に気づかれてしまう。
窓にも鍵をかけた結果、外部と通じているのは暖炉の煙突だけになった。ところが翌朝起きてみると、枕元には大きな兎のぬいぐるみが私へのプレゼントとして置かれていた。
そしてお姉ちゃんは暖炉の灰の中から隠していた鍵を取り出した。私はサンタクロースの存在を信じざるを得なくなった。

時間収集家    
佐藤篤史
時間収集家の作家片桐の山荘に集まったのは、作家仲間や編集者達。時間収集とは記念とする時間に時計を止めて、それをそのまま保存するという変った趣味だった。
置時計も腕時計も電池を抜いて針を止め、それをコレクションしたものはある意味壮観であった。やがて、夕刻を過ぎると山荘を嵐が襲う。
夜中に片桐は書斎で死体となって発見された。片桐のもとを訪ねた女性編集者が発見したのだ。書斎に置いてあったコレクションされた時計は壊されていた。
外は嵐が猛威を奮い、山荘を出入りした足跡はない。すると犯人は山荘にいた人間に限定されるが…

うちのカミさんの言うことには2   
行多未帆子
桝中氏の別荘に招待された同じジムに通うメンバー。夕食の支度を始めた桝中夫人の麗子を残して、ほかの皆は桝中の車で外出する。
桝中は湧き水を汲みに、ほかの皆は小さな滝や池など自然の中を散策に。そして別荘に戻るが、別荘の書斎では麗子が背中にナイフを突き立てられて危篤状態だった。
書斎のドアと窓は内側から鍵が掛けられていて、屋根にある天窓は飾りで開かない。ベランダから書斎の様子を見て惨事を知り、ドアを破って書斎に入ったのだった。
部屋の唯一の鍵は麗子のエプロンのポケットに入っていたが、誰も麗子に近づいたものはいなかったから、鍵を滑り込ませることはできなかった。そう現場は密室だったのだ。

午前零時の失踪   
鮎坂雨京
人気覆面推理作家花江空春人が雑誌編集者を自身の住居兼山荘に招待するという前代未聞のことが起きた。場合によってはインタビューも取れると編集者達は喜び勇んで山荘へ向かう。
そこで花江空春人が本名西河陽子という女性であったことを知る。山荘では陽子が妹の葉月と2人で暮らしていた。名前のとおり姿形も性格も行動も、姉の陽子は陽性、葉月は陰性であった。
その夜、陽子の部屋から突然悲鳴が聞こえ、皆が駆けつけるがドアは内側から鍵が掛けられていた。ドアを破って入ると、そこはもぬけの殻。
皆が戸惑っていると、いきなりクラシックが鳴り出した。リモコンがセットされていたのだった。ベッドには寝た形跡があるから、陽子がいたことは間違いない。
だが、2ヶ所あるドアは内側から鍵が掛けられ、窓も同様でった。陽子は密室から消えうせてしまったのだ。

青い城の密室   
小波涼
精神科医であった藤祭祐二が田舎のサナトリウムで死んだ。精神科のサナトリウムの敷地内には青い城と呼ばれる、城壁で囲まれた英国の城を模した建物が建てられていた。青い城は城壁に囲まれているので入り口は1箇所しかなく、そこは管理人によって夜間は鍵がかけられる。
祐二がいた部屋は1階の奥の部屋で、そこはもともと拘束が必要な患者のための部屋であり、覗き窓付きの鉄扉と鉄格子の入った窓があるだけであった。
祐二の死因は不明で最終的には心不全とされ病死とされた。部屋の中から鍵がかけられていたことも、病死と決定する一因であったが…

早春賦   
天城一
町外れの峠の展望台で腹をえぐられて殺されていたのは、蓮台寺陽子。この地方から出ている御領代議士の第二秘書だった。
秘書とはいえ情婦も兼ねているのは周知の事実で、この次の選挙を巡って地盤固めのために来ていて、殺されたようだったが…


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